ニュースレター(8月14日)1118.25ドル 中国の人民元切り下げで金相場が上昇
週間市場ウォッチ
先週金曜日のLBMA金価格のPM価格は、トロイオンスあたり1118.25ドルと前週同価格から2.2%上昇しています。
週明け月曜日金相場は、トロイオンス1107ドルへと一時10ドルほど上昇することとなりました。
これは、先週金曜日の米国雇用統計で、非農業部門雇用者数が予想を下回ったものの堅調な数値であったにもかかわらず、買戻しが出たことから、その基調を受け継ぎ、ショートカバーが起きたことからです。
なお、同日先週そのハト派的コメントが話題となり注目されていたロックハート・アトランタ連銀総裁の講演では「初回利上げのタイミングは近い」と述 べたことが伝えられましたが、先週同様のコメントで市場は注目しなかったものの、同日行われたフィッシャーFRB副議長の記者会見の「問題なのはインフレ の方だ」、「インフレ重視(インフレターゲット)だったなら、追加緩和が必要だったかもしれない」という発言がハト派的と取られ、多少注目されたようで す。
翌火曜日金相場は、20年ぶりの中国人民元切り下げのニュースでトロイオンスあたり15ドル程急上昇し、その後調整で緩やかに戻しながらも、前日の終値比 では5ドルほど上げ、株式市場は、中国経済減速懸念から全般下落することとなりました。
水曜日金相場は、前日に続き人民元が切り下げられる中、7月20日以来の高い水準の1123ドルへと上昇しました。これは、前日に続き、中国経済への懸念 が更に広がる中、世界的に株価が下げたこと、そしてFRBによる金利引き上げ観測が後退したことが要因であった模様です。
ちなみに、銀価格はドル建て金価格よりも速いペースで上昇し、過去1ヶ月の最高値の15.58ドルを記録していました。
木曜日金相場は、人民元が3日連続で切り下げられたものの、人民銀行が「乖離の是正は基本的に終えた」と述べたことが伝えられ、それまでの反発もあ り、同日発表された米小売売上高が予想を上回るものであったことからも、欧米株式が上昇する中、緩やかに下げることとなりました。
本日金曜日は、中国の人民元切り下げも行われず、米国株式が上昇する中今週の上げの調整もあり、金相場はロンドン午後に午前中の上げを失いつつあります。
なお、ロンドン午前中に、中国が7月末の金準備高を先月に続き発表したことは、金相場を引き上げる要因になった模様です。これによると、7月末にそ の量は1677トンと、先月6年ぶりに発表した6月末までの1658トンから、19トン増(1%増)となったことが明らかとなっています。
なお、この発表は中国の金準備高の透明性を高める意図を示し、今回の人民元切り下げに見られる「人民元レートの市場メカニズム導入」同様に、IMFが人民 元を公式準備通貨とすべきかの判断をする際に助けとなるだろうとファイナンシャルタイムズはコメントしています。
その他の市場のニュース
- 最新のCFTCのデータによると、先週火曜日にNon-reportableのネットショートポジションが、20年前に記録を初めて以来最大となったこと が明らかとなり、Non-reportableが45トンで、ヘッジファンドなどのManaged Moneyのカテゴリーで、32トンとショートポジションが積み上がっていたこと。
- 6月の中国の香港からの金の輸入が、過去1年間で最も低い水準の21.1トンとなり、スイスから中国への輸出も前月比23%減となったこと。
- 2度めの人民元の切り下げを行った水曜日にも、金取引量は火曜日を超えた記録的水準となり、中国の金プレミアムは6ドルと上昇したこと。
- 金の需要が2015年第2四半期に、前年度比12%減の914.9トンとなったことが、金市場開発団体のワールド・ゴールド・カウンシルの最新レポート「Gold Demand Trends」で明らかとなったこと。この日本語の要約版は「金需要が過去6年で最低水準へ」でご覧いただけます。
ブリオンボールトニュース
今週のブリオンボールト市場分析ページには下記の分析記事が掲載されました。
- ブリオンボールトリサーチ部門の「中国人民元の大幅切り下げの背景とその影響とは」と「金需要が過去6年で最低水準へ」。
ロンドン便り
今週は、本日投票用紙が送付された英国労働党党首選挙についてお届けしましょう。
ご存知のように、今年5月の英国総選挙では、保守党が事前予想を上回る票を獲得し政権につきました。そのため、労働党は、当時の影の財務大臣エド・ ボール氏を含む26議席を失い大敗したことから、当時の労働党ミリバン党首は責任を取り辞任し、新たな党首選出の動きが始まりました。
通常は野党党首選が、ここまでメディアで取り上げられることは無いと思われますが、今回は、その候補者の1人の、当初は勝利の見込みゼロと思われて いた「強硬な左派」であるジャレミー・コービン氏が、主要労組を見方につけて、本命候補に躍り出たことから、近年中道路線を 取ってきた労働党が大きく変わる可能性があることから、英国メディアが競って報道しています。
コービン氏は、66歳で1983年から国会議員であるものの、その強硬左派的ポジションから、長年労働党の平議員でした。
今回も党首となった場合は電力会社や鉄道会社の再国有化や核兵器廃止などを行うと、古くからの労働党党員の支持を受ける施策を唱えています。
そのため、労働党党首選の投票権を得るために、労働党党員として新たに登録する人々も急増し、昨日登録を閉めた段階で約10万人増の30万人となったとのことです。
しかし、他の政党をサポートする人々が、コービン氏に投票することで、労働党が将来総選挙に勝てなくすることを目的に労働党党員として登録しているケース もあるとのことで、それを確認できた1200人の登録が既に抹消され、800人分が調査中とのことです。
トニー・ブレア元首相等の労働党の重鎮や幹部達も、コービン氏が党首となることで労働党が選挙に勝てない「左派」になることを憂い、労働党党員や労働組合員へコービン氏を選ばないことを呼びかけています。
前回の総選挙で大敗し、新しく蘇らなければならない労働党が、緊縮財政で痛みを感じている党員や組合員によって、反ビジネスとも見られるコービン氏を選出するのか、その行方を興味深く見守りたいと思います。