ニュースレター(6月23日)1255.70ドル:ドル高が一服し長期金利が低水準の中金は前週比2週間ぶりに上昇
週間市場ウォッチ
今週金曜日のLBMA金価格のPM価格はトロイオンスあたり1255.70ドルと前週同価格から0.02%と若干ながら上昇しています。
月曜日の金相場は、トロイオンスあたり1247ドルと一月ぶりの低い水準へと下落することとなりました。
これは、先週のFOMCでのタカ派的コメントとともに、同日のダドリーNY連銀総裁の「金融引締め政策は適切である」というタカ派的コメントが伝えられる中、ドルインデックスが上昇し金が押し下げられていたことからです。
また、同日はアップル株などのIT株に牽引されナスダックが反発して11月以来の上げ幅となり、フランスの総選挙でマクロン大統領が圧勝したことでフランスの株も上げるなどリスクオンの傾向となっていました。
火曜日金相場は、ロンドン時間午前中に上昇したものの、午後にその上げ幅を失って下落することとなりました。
これは、前日のダドリーNY連銀総裁に続き、エバンス・シカゴ連銀総裁が「現在の経済状況は緩やかな利上げとバランスシート縮小をサポートする」というタカ派的コメントでドルインデックスが上昇していることが要因となりました。
この間原油と天然ガス価格が1%以上下げ、前日上昇した米国株価も下落していました。
なお同日英国ポンドは、イングランド銀行のカーニー総裁のBrexit懸念のコメントからも対主要通貨下げたことから、ポンド建て金相場は上昇していました。
水曜日金相場は、ナスダックを除く株式市場と原油価格が下げる中、ドル建てにおいてはトロイオンスあたり1245ドル前後の狭いレンジでの取引となりました。
なお、前日ポンドが下げることで上昇していたポンド建て金相場は、同日イングランド銀行のチーフエコノミストのタカ派的コメントが伝えられる中ポンドが上昇したことで下落することとなりました。
木曜日金相場は、ドルが多少弱含み、長期金利が昨年トランプ大統領が選出された水準まで下げる中、5日ぶりに前日比上昇しトロイオンスあたり1249ドルを推移することとなりました。
これは調整の上げと思われますが、その他同日発表の新規失業保険申請件数が多少予想を上回ったことに加え今週弱気市場に入った原油市場がインフレ率を押し下げることによる中央銀行の金融引き締めのペースダウン観測の広がりなども要因の一つであるとされていました。
金曜日金相場はドルが若干弱含む中、トロイオンスあたり1255ドルと3営業日連続で上昇することとなりました。
同日24日は英国がEU離脱を選択して1年目となりましたが、金相場は昨年6月23日からの1年間でドル建てにおいては0.7%下げ、ユーロ建てでは1.1%上げ、ポンド建てではポンドが下落したことから16%上げていました。
なお、今週始まった英国のEUとの離脱交渉は、まず離脱時の英国の未払い分担金の支払い額と貿易協定を同時に交渉するという英国側の希望は、EU側の希望する未払い分担金の支払額の同意後に貿易交渉を行うとなったということが伝えられて、同日既に英国で暮らすEU市民の権利について話し合いがされていましたが、英国からの提案であるEU離脱時に5年滞在しているEU市民に英国市民同様の権利を与えるというものは、5年という条件を付けたことからもEU側が十分ではないとコメントしていることが伝えられていました。
その他の市場のニュース
- 先週末発表の先週火曜日のコメックス金先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションが、先週まで3週連続で増加した後に11%減となったものの、過去10年間の平均より33%上回っていたこと。
- コメックス銀の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションもまた、先週まで3週連続で増加した後11%減となったものの、過去10年間の平均より金より更に大きく53%上回っていたこと。
- 金ETFの最大銘柄SPDRゴールドシェアの残高は金曜日3トン減少し、週間で2.7トン減となっていたこと。
ブリオンボールトニュース
欧米のお客様へは今年3月から提供を始めさせていただいていましたプラチナ投資サービスを今週水曜日から日本のお客様へも提供を開始いたしました。 なおプラチナ購入は、ドル、ポンド、ユーロ資金で行えますが、日本円での購入はもうしばらくお待ちいただくことになります。日本円資金を送金いただく場合は、弊社で為替変換を行うFX会社をご紹介することもできますので、お気軽にご連絡ください。 |
英国主要経済紙のCityAMの「金を買うべきか売るべきか」という記事で、ブリオンボールトにおける取引量が英国総選挙の出口調査結果が発表された後に通常の4倍へと増加したことが紹介されていました。
この記事は金が他の資産と異なる動きをするからも、金融システムの保険、インフレのヘッジとして働くことから、地政学的リスクが落ち着く気配がない中、金は購入すべきとまとめています。
今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
ロンドン便り
今週は昨日から日本へ入っています。そして、本日は年に一度金業界が一堂に会するゴールドフェスティバルに参加してきましたので、その様子をお伝えします。
今年も昨年、一昨年に続き大手町よみうりホールで行われ、500名を超える個人投資家の方々が参加されていました。
フェスティバルは4部構成で、第1部は日本で人気のタレントのパックン・マックンと共に金投資を学び考えるというもので、貴金属ディリーングの第一人者のICBCスタンダードバンク東京支店長の池水雄一氏が質問に答えていました。
お二人は共に投資経験や実績は異なりますが、共に株式投資はされていて、パックンはそれに加えて不動産と金ファンドへの投資もされているとのこと。
そこで、金をイメージする国という質問で、南アフリカを上げたお二人に、金最大産出国がかつては南アフリカだったものの近年は中国となっていることを説明し、世界で中国と共に最大の消費国はインドでは、世界の産出済みの金17.5トンのうちの2万トンから2.5万トンをインド国民が保有している事も伝え、この1年はブレグジットやEU崩壊の懸念からヨーロッパでも金が売れていることにも触れていました。
そして最近の金関連ニュースとしては、日本への金密輸が急増していること。これは、消費税分が売却時に支払われるために、消費税を払わなくて良い国で購入した金を密輸入して収益を上げようとする目的からとし、金価格と比較されるビットコインの価格が昨年は中国、そして今年は日本人からの資金が流入していることで急騰していること等、そのボラティリティの高さにも言及していました。
そして、このコーナーで金について学んだお二人は金投資がより身近に感じられたということで、Q&Aで買い時はいくらかと池水氏に質問し、池水氏は、それはあくまでも人それぞれだろうが、ご自身はグラムあたり4100円を割ると買っていると答えていらっしゃいまいた。
その後、第2部では「リサイクルで金メダルを」と提案した物財機構の原田幸明氏が、携帯に含まれている0.03グラムの金など都市鉱山と呼ばれているIT機器から貴金属をリサイクルし、2020年の東京オリンピックで使用するメダルの全てを作ること可能性を説明されました。
第3部は恵比寿ビール記念館館長の端田晶が「ビールはなぜ金色になったか」を解説してくださいました。
そして第4部では「変貌する世界、どうなる金価格」として、 貴金属アナリストの亀井幸一郎氏とワールド・ゴールド・カウンシル顧問の森田隆大氏が金相場の現状を語り、10年後の金価格を予想しました。それは、下記の通り。
トロイオンスあたり | グラムあたり | |
亀井幸一郎氏 | 1800ドル | 8000円 |
森田隆大氏 | 2400ドル | 11000円 |
この理由として、亀井氏と森田氏はそれぞれ下記を上げていました。
- 政治的リスク予測は難しく政治リスクのヘッジとしての金のニーズが高まる
- 消費者物価指数が2%に至らない現状で金融引締めは困難で、長年長期金利が低く留まっていることは金の追い風
- 膨大化する日銀の資産など、主要中央銀行の量的緩和政策による市場に溢れた資金の行き所
- 2016年11月イスラム金融に適合する金投資の基準を設定したこと、中国ではWeChat Gold等SNSで金が売買され始めていること、金で決済するデビットカードサービスが今年夏に始まる予定ということから新たな需要が生まれている点
- 需要は今後増加することはあっても減少はしないと予想するが、供給は新たな金鉱が発見されていないことやコスト高などから減少を予想していることから。
このような理由からも、かなり強気の市場予想となっていました。
来年もゴールドフェスティバルは予定されていますので、日程が決まりましたら皆様にも早めにお伝え致します。