ニュースレター(6月16日)1255.40ドル:FOMCとイエレンFRB議長のタカ派的スタンスで金は下落
週間市場ウォッチ
今週金曜日のLBMA金価格のPM価格はトロイオンスあたり1255.40ドルと前週同価格から0.9%下落しています。これで週間で2週連続の下げとなります。
月曜日金相場は、火曜日と水曜日に行われるFOMCを前に様子見ということからもドル建てではトロイオンスあたり1266ドルを挟んで狭いレンジでの取引となりました。
しかし、ポンド建てにおいてはポンドが弱含んでいたことからトロイオンスあたり1000ポンドを超えて上昇することとなりました。これは、先週の総選挙の結果を受けて、ハングパーラメントの舵取りをせざるを得なくなったメイ政権への懸念が高まっていることからでした。
なお、他の市場においては、株式市場はテクノロジー関連株価の下げとともに全般下げ、先週金曜日に一時急騰したパラジウムの価格が同日も2.5%上昇していました。これは、現物の品薄状態からとのこと。
火曜日金相場は、株価が過去2日間の下げから戻す中多少下げていましたが、トロイオンスあたり1261ドルから1267ドルの狭いレンジとなっていました。これは、前日同様に翌日のFOMCの声明とイエレンFRB議長の記者会見を待つ中で市場が様子見の状態であることからでした。ちなみに同日のFOMCの金融政策発表での0.25ポイントの利上げ予想はFEDWatchでは99.6%と確実とされていました。
また、同日はロシアゲートに絡みセッションズ米司法長官の上院での証言が行われましたが、市場への影響は限定的でした。
水曜日はロンドン時間午後7時のFOMCの政策金利発表を待つ中、その前に発表された市場注目の米消費者物価指数と小売売上高が共に前月比マイナス数値となったことから、金相場が大きく上昇することとなりました。なお、小売売上高がマイナスとなったのは3ヶ月ぶりで、消費者物価指数はマイナス数値は2ヶ月ぶりでした。
また、同日は米国バージニア州で共和党の下院議員数人が銃撃されたことが伝えられていました。
同日夜発表されたFOMC政策金利は予想通り1.00%-1.25%と0.25ポイント引き上げられ、金利引き上げ予想は年内もう一回と2018年に3回を予想していました。また声明ではバランスシートの縮小は今年中に始めるとも明記されていました。また利上げは8対1で決定され、利上げへの反対票を投じたのはNeel Kashkari(ミネアポリス連銀総裁)のみでした。
この発表を受けて金相場は1273ドルへと下落していましたが、その後行われたイエレンFRB議長の記者会見で、バランスシート正常化が「比較的早く」と述べたこと等がタカ派的と取られたことで、更に下げ幅を広げることとなりました。
木曜日のイングランド銀行の政策金利は0.25%で据え置かれました。しかし、5対3で決定と引き上げ意見も強まっていました。この発表を受けてポンドが強含みにポンド建て金相場はトロイオンスあたり1000ポンドを割り下落していました。
同日の金相場は、前日のFOMCで金利が引き上げとイエレンFRB議長のインタビューがタカ派的と受け止められたことから、ドルが強含みトロイオンスあたり1252ドルまで下落することとなりました。
そして先の結果を受けて、米長期金利が上げる中、米株価、原油等コモディティ相場も全般下げることとなりました。
ちなみに、同日発表された米経済指標では、鉱工業生産を除き、ニューヨーク連銀製造業景気指数、新規失業保険申請件数、フィラデルフィア連銀製造業景気指数は全て経済活動の良好さを裏付けるものとなっていました。
本日金曜日の金相場は、米株価が6日連続で下落する中、今週の下げも一服し、狭いレンジでの取引となっています。
米株価の下げは、今週のFOMCでのバランスシート縮小等の量的緩和縮小が発表される中で、本日発表の米住宅着工件数とロイター・ミシガン大学消費者信頼感指数は予想と前回を下回っていたことなどで米国経済への懸念が高まったことが要因となった模様です。
その他の市場のニュース
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先週末発表の先週火曜日のコメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、前週比32%増と3週連続で増加していたこと。この水準は昨年11月8日以来の高さで、トランプ大統領就任直前で安全資産への需要が高まっていた際と同レベル。 -
コメックスの銀先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションも19%増と3週連続で増加していたこと。 -
金ETFの最大銘柄SPDRゴールドシェアの残高は今週14日に12.1トン減、昨日1.2トン減と、計13.3トン減少していたこと。
ブリオンボールトニュース
モーニングスターの「金の価値が過小評価されているのか」という記事で、ブリオンボールトの金投資家インデックスが取り上げられました。
ここでは、NN Investment Partnersの主任ポートフォリオマネージャーのStan Verhoeven氏が金のアロケーションを10%増加させた理由は価値が過小評価されているからというコメントを紹介しています。
そして、弊社の金投資家インデックスが5月に年初来の高水準に過去2年間で最も早いペースで上昇したと伝え、弊社リサーチ主任のエィドリアン・アッシュの「金は他の資産が収益を上げていない時に上昇する。株価や国債、そして特にポンドの先行きがハング・パーラメントの現実からも不透明である中、金は保険としても【持たなければならない資産】だ。」というコメントでレポートを終えています。
今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
ロンドン便り
今週英国では、日本でも大きく伝えられていると聞いていますが、西ロンドンの高層公営住宅の火災についてがほぼ毎日トップニュースで伝えられています。
ご存知のようにこの火災は14日未明に発生し、本日の段階で30名の死者が出ていますが、12名が現在重体で入院しており、また76人が行方不明となっているとのこと。
24階建ての高層公営住宅は、127戸からなり、この地区の区議員によると400人から600人が居住していたとのことですが、本日までに109世帯はホテルなどの仮の住まいへと移されるとのこと。
この高層公営住宅は、1974年に建てられた後、昨年8600万ポンドの改装工事が終わったばかり。しかしこの改築で行われた外壁の「クラウディング(Cladding)」やスプリンクラーが設置されていなかったことが問題であったのではないかと、正式な調査は終わっていませんが、専門家のコメントが伝えられています。
それは、現場からのレポートでは、「炎が数階分を覆って、たちまち広がっていた」と、その火の回りの速さが特異であったことから。
この高層公営住宅の住民は数年前から火災発生の懸念を訴えていたということも伝えられており、地元住民のフラストレーションも高まっており、この地を訪れたロンドン市長のサディク・カーン氏が住民の一部の人々に不満をぶつけられている模様がニュースで伝えられていました。
メイ首相もこの地を火災発生後訪れていましたが、消防団の人々と話したのみで住民が避難していたこの地区のセンターに立ち寄らなかったことから、住民や与党保守党の重鎮などが批判したコメントも伝えられており、今後この対応を誤ると、総選挙で過半数割れとなり党内の求心力を失っていることからも、メイ首相の今後にも影響が出る可能性がありそうです。
本日は、エリザベス女王陛下とウィリアム王子がこの地を訪れ、住民と対話しているところがニュースで伝えられて落ち着きを少し取り戻したようにも見えますが、テレビで延々と伝えれていた炎に包まれるこの高層公営住宅の映像を見た英国の人々の心へ残したショックは大きかったと言わざるを得ないでしょう。