ニュースレター(6月13日)1273ドル イラク情勢悪化が金価格を押し上げる
週間市場ウォッチ
今週金曜日のPM Fix金価格は、トロイオンスあたり1273ドルと、前週同価格から2%上げています。
週明け月曜日は、特に重要は経済指標もない中、金価格は狭いレンジの動きとなりました。
翌火曜日は、南アフリカの主要なプラチナ鉱山で行われているストライキの話し合いが、合意に至らず物別れしたことが前日に伝えられたことで、プラチナ価格が上げる中、金も上昇しました。
水曜日は、世界銀行が今年の世界経済の成長見通しを3.2%から2.8%に下方修正したことを受けて米株価が下げ、金価格は少ないながらも上げることとなりました。また、イラクで武装勢力がトルコ領事館を襲い、総領事を始め多くのトルコ人が拘束されたニュースが伝えられ、地政学リスクが高まり、金が買われることとなりました。
木曜日は、イラク情勢緊迫化が進み原油価格が上げる中、金価格も上昇することとなりました。イラク情勢の悪化とは、イスラム武装勢力が同国北部の2都市を制圧したこと、そしてオバマ米大統領が米軍による攻撃の可能性に触れたことなどです。この上げが、先週から先物市場で増加していたショートポジションの巻き戻しもおこし、価格を押し上げることとなりました。
また、今週の注目経済指標である米国5月小売売上高が、前回数値が上方修正されたことから前月比予想を下回り、週次新規失業保険申請件数も予想から多少悪化したことも、価格を押し上げた要因となったもようです。
金曜日は、前日同様にイラク情勢の悪化が伝えられる中、前日の高値の水準を保つこととなりました。
他の市場のニュース
- 三菱UFJ信託銀行が販売している金ETF残高が、今年に入って初めて増加に転じ7トンを越えたこと。
- 先週の欧州中央銀行がマイナス金利を導入したことなどから、スペイン国債の利回りが、米国債の利回りを下回ったこと。
- 中国への金輸入が、上海特区経由で始められたことが伝えられたこと。これにより、中国への金輸入量の把握が困難になり、既に4月に大幅に落ち込んだ香港からの中国への金の輸入は、上海経由の輸入増が一因との見方もあるとのこと。
- パラジウムが水曜日に2001年以来の高値を更新したこと。これは、南アフリカにおけるストライキとウクライナ情勢による西側のロシアへの経済制裁で供給不足となっていることから。しかし、木曜日に労使間で原則的な合意がみられたというニュースが入り、パラジウムと1ヶ月ぶりの高値をつけていたプラチナも急落したこと。
ブリオンボールトニュース
今週、市場が薄商いとなる夏が近づく中、過去12ヶ月のレンジ1200ドルから1400ドルが定着しつつあるなど、昨今の金市場の解説と先行きを、ブリオンボールトのリサーチ主任エィドリアン・アッシュがロイターのインタビューで答えています。
また、木曜日に金が過去3週間の高値をつけ、プラチナとパラジウムが急落したことを伝える、米主要経済サイトのMarketWatchの記事で、ブリオンボールトのリサーチ主任エィドリアン・アッシュのコメントが取り上げられました。
ここで、エィドリアンは「金と銀をショート(していた人々)は、イラクのイスラム武装勢力の脅威を、バクダッド(イラク政府)同様に無視していた。そのため、先週の偏ったポジションは、急激に巻き戻されている。そして、もし原油が引き続き上昇し、株が下げるのであれば、この状況は更に進む可能性がある。」としています。
今週のブリオンボールト市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
- ブリオンボールトのリサーチ主任エィドリアン・アッシュの「金と中国のGDP、そして減速する欧米」、「銀のフィキシングに代わり得る価格付けの条件とは」
今週の主要経済指標の結果と解説は、下記のリンクでご覧いただけます。
ロンドン便り
今週は、英国ではワールドカップ開催のニュースが多くの主要紙の紙面を飾っています。
いよいよイングランドチームも明日イタリアと初戦を戦うことになっているため、応援に力がはいることになりそうですが、本日BBCではイングランドを応援するために国旗を飾り立てたパブや個人の家の写真が掲載されていました。また、昨日のブラジル戦での西村審判のペナルティーを与えた判断を疑問視する記事も、残念ながら多く見られていました。
今日は、英国がワールドカップ一色に染まっている一つのエピソードとして、先月末に伝えられていたニュースをご紹介しましょう。それは、英国を代表する理論物理学者で、ケンブリッジ大学の名誉教授であるスティーブン・ホーキング氏が、ワールドカップでイングランドチームが成功する要素を計算して割り出したというニュースです。
これは、アイルランドのブックメーカーのマーケティングの一環として依頼されたためとのことですが、1966年以来の45の試合と、イギリスの弱点である204のペナルティーキックもまた分析された結果とのことです。
その成功する要素としては、環境、生理学上、心理学上、政治的、戦術の5つの分野で分析されたとのこと。その内容は、どのチームにも当てはまるものかもしれませんが、世界でも名だたる博士の分析ということからも主要メディアが取り上げていました。ご興味があれば、ガーディアンのサイトをご覧ください。
日曜日の日本とコートジボワールの試合は、英国時間では夜中の2時キックオフとなっているために、リアルタイムの応援はできそうにありませんが、健闘を祈りたいと思います。