金市場ニュース

金と中国のGDP、そして減速する欧米

中国は、世界の経済と金市場にどれだけの影響力を持っているのでしょうか。

目に入る全ての情報を信じるのであれば、豊かな欧米が、第1次世界大戦が始まった100年以上前に、既にアジアに対し力を失っていたという説すらも信じることになるのでしょうか。ブリオンボールトのリサーチ主任エィドリアン・アッシュが、世界銀行の経済見通し発表を機に、中国の経済と金市場への影響力について解説をしています。

昨年、金を保有する傾向が欧米から東洋へ動いたことは、21世紀に欧米が力を失いつつあることを印象づけました。そして、金市場に関わる私達を含む多くの人が注目した点でした。

物事の全てには流れがあります。しかし、中国の経済成長は、多く語られているように世界を叩きのめすほどのものではありません。インターネット上では、このようなことが書かれた記事をしばしば目にすることでしょう。

「中国は、世界市場の為替レートを使うと、日に日に大きな経済りつつあることが明らかですが、未だに米国やユーロ圏に比べると小さいものです。もちろんこの2つの経済圏を合わせた規模と比較すると明らかに小さいといえるでしょう。」と世界銀行のエコノミストが述べています。

そのため、本日発表された世界銀行の2014年経済見通しの一部をまとめると、欧米の経済成長は、中国の経済減速を十分に上回るものであるとのことです。(世界銀行2014年経済見通しの31ページを参照)

金においても同様に、「必ずしも中国のみの市場ではない」と、ニューヨークのCPM Group Consultancyの金属エコノミストのJeffrey Christian氏がコメントしています。

「過去6年間に中国が購入し中国に保管した金よりも、より多くの(欧米の)投資家が金を購入しスイスに保管しています。」

金は、世界経済のように、中国のみで語れるものではありません。それは、株式市場でも同様で、本日MSCIのアジア・パシフィックのインデックスが過去6年間の史上最高値を更新する中、MSCIは中国株をMSCI新興市場指数に組み入れないことを明らかにしています。それは、中国政府が引き続き市場を厳格に管理する中、現地通貨との限定的な兌換(だかん)性や市場アクセスといった面で、「大幅な改善」が見られないことが理由であるとしています。

しかし、中国の為替管理は徐々に改善されています。金においては、2つの中国外の銀行が輸入許可を得ました。また、上海自由貿易試験区(FTZ)で金取引所の開設が見込まれる中、中国の銀行はFTZ経由で金を輸入する試みを始めました

更に、スイスにおける金投資保管のネット増加量は、先のCPMのチャートが示すように、下落の傾向があります。それに加え、スイスの金の輸入は、通常不純物の混ざる金の原石であり、スイスからの金の輸出は精錬後の高品質の地金です。そのため、2013年の純金の重量にすると、スイスの金の輸出量が明らかに(輸入量)を上回っているおり、より高いキロあたりの価格で輸出されています。

中国の金の需要の高さは、2013年の価格の急落を止めることはありませんでした。しかし、時間の経過とともに、世界最大の金の消費国で生産国である中国は、価格への影響を高めることとなるでしょう。もしくは、

購買力の低下を憂う欧米の消費者は、今後の経済や金市場における中国の役割を無視することはできません。しかし、欧米の衰退は、まだ更に先があるということです。

エィドリアン・アッシュは、ブリオンボールトのリサーチ主任として、市場分析ページ「Gold News」を編集しています。また、Forbeなどの主要金融分析サイトへ定期的に寄稿すると共に、BBCに市場専門家として定期的に出演しています。その市場分析は、英国のファイナンシャル・タイムズ、エコノミスト、米国のCNBC、Bloomberg、ドイツのDer Stern、FT Deutshland、イタリアのIl Sole 24 Ore、日本では日経新聞などの主要メディアでも頻繁に引用されています。

弊社現職に至る前には、一般投資家へ金融投資アドバイスを提供するロンドンでも有数な出版会社「Fleet Street Publication」の編集者を務め、2003年から2008年までは、英国の主要経済雑誌「The Daily Reckoning]のシティ・コレスポンダントを務めていました。

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