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銀のフィキシングに代わり得る価格付けの条件とは

銀のフィキシング(値決め)に代わる価格付けを行うための競争は始まっています。しかし、現在までにメディアが取り上げた代替案は、ただ単に一つの価格をつくり上げるというものであるようです。これは、投資家や企業が保有する金を評価するために使うことができるものですが、高い流動性を提供することはなく、金目当ての人々や投機家が賭けをするターゲットともなりうるものです。

これは、世界市場にとっては損失であり、シティー(ロンドンの金融街)にとっては、恥ずべきことでしょう。現在のフィキシング価格は、取引が行われている中で存在しているのです。この世界指標でもある価格は、実際に取引されている価格であり、それをつくり上げるための取引がなければ、地金取引を根本から変える、より大きな動きが起こるリスクが高まることになるでしょう。

銀と金のフィキシングは、ロンドンの多くの取引で利用されてきました。そして、ロンドンは世界の専門市場の取引を大量に執り行ってきたのです。これは現在も継続しており、それがゆえに日々の世界指標とみなされているのです。しかし、このように利用されてきたのは、実際に取引されている中で値決めが行われるという事実があったためです。フィキシングは、まず取引価格であり、それが世界指標として利用されているのです。そのため、この価格を使って取引をする全ての人々の注文価格が、この値決め価格を決定しているのです。だからこそ、このフィキシング(値決め)は、とてもユニークな世界指標であったのです。

それに対しロンドン銀行間貸出金利(LIBOR)は、ロンドンの4時のFXフィックス同様に、仲値であり基準レートとして利用されています。2013年のLIBORスキャンダル以来、主要銀行は、金融行為監督機構(FCA)にどのような金利を他行へ支払っているかを届け出なければなりません。そして、すべての企業が利用できるようにその平均値が算出されています。

ロンドンの為替の基準値は、1994年に開始されて以来実際に取引されているように見られてきました。しかし、午後4時の前後30秒間に取引された為替レートの平均値は、必ずしも高い流動性の中で競りを行うようにして作り上げられた価格(値決め)ではなく、市場をつくり上げるものでもありません。これは、その時点の価格を単に告げているだけです。しかし、そのような基準値が必要なのであれば、問題では無いでしょう。しかし、銀のフィキシングは単なる価格ではないのです。だからこそ、この117年間続いてきた値決め価格を必要のないものという人はいないのです。

ロンドン貴金属市場協会は、この価格の重要性を踏まえ、銀フィキシングが終わると発表された5月半ばに、即座に関係企業にアンケート送付しコンサルテーションを始めました。その結果、この週にアンケートに答えた440人の内の72%が、既存の値決め方法が十分に機能していると答えています。更に、その「有効性」に関しては、10を最も有効とした場合、7.5という回答であり、88%が銀のフィキシングを日々、もしくは定期的に利用していると答えています。そして、「市場決済のための価格を見出すために貢献することが可能か?」という問いに関しては、25%が可能と答えたとのことです。

その時点では、この代替となる価格が取引できる価格であって、取引価格の平均やサンプルではないこと希望していました。ロンドン貴金属市場協会の執行幹部は、6月末にその推薦する代替案を会員に発表する予定です。現在までに、メディアが伝えるところによると、銀行以外の機関による代替案も議論されているようです。しかし、私達が見る限りでは、これらの代替案は、基準値を見つける方法であって、あらゆる規模の取引ができる価格を提供するものではないようです。昨今の傾向としては、主要ブリオンバンクの多くは、コモディティ市場から撤退、もしくは規模の縮小する方向へと舵をとっています。

フィキシングの代替案があろうがなかろうが、保有する地金の評価のために世界指標は必要とされています。人々は、取引されている全ての市場で、参考となる一つ、もしくは数種の価格を見つけます。それは、終値であったり、他の競りによる価格であるというように。

先月金融行為監督機構(FCA)がバークレイズ銀行へ制裁金を科したケースが明らかとしたように、この世界指標が、例え公的に同意された価格、もしくは古くから行われてきた慣習によるものであっても、ノックアウトオプションのような取引に利用されるのです。この「値決め価格がある一定の価格を超えると、ある一定の支払いを得られる」という取引は、収益を出すために行われる取引でもあるのでしょう。しかし、これは、地金の売買と決済とは全く異なる性質の取引です。しかし、このような取引が存在することによって、フィキシングもまた、他の異なる方法で決められる基準価格と同様なものへと押し流してしまったのです。

それでは、このような状況下でどのようなことをすべきなのでしょうか。まず最初に、不正操作が行われないように取り締まなければならないでしょう。(ブルームバーグの記事では、バークレイズ銀行のトレーダーが派生商品の取引において顧客の利益に反する行為を行ったにも拘らず、地金市場は金融行為監督機構(FCA)の規制下にはないという規制当局のコメントが掲載されています。しかし、金融サービス市場法下であろうとあるまいと、市場を不正操作することは違法であるはずです。)次に、取引の自由を制限することは、私達の意図するものではありませんが、ノックアウト・オプションを制限することは、有効な策でしょう。全ての文化において、金融危機の最中には、派生商品は時として禁止されています。そして最後に、市場は常に一個人、企業、規制当局、政府を含むすべての人々が取引できる場であるべきで、この基準価格は、ここでの取引を抜きにして存在すべきではないということでしょう。この市場のそれぞれの取引は異なる規模のもので、その規模は売買価格に影響を与えるべきものです。参考価格は必要かもしれませんが、基準価格は、形だけのものでなく、実際に売買でき、決済できるものでなければならないのです。

もし、ロンドンフィキシングが、平均価格や単なるアルゴリズムに代替されるのであれば、残念なことに単なる指標となり、現在のフィキシングとは異なるものとなることでしょう。

エィドリアン・アッシュは、ブリオンボールトのリサーチ主任として、市場分析ページ「Gold News」を編集しています。また、Forbeなどの主要金融分析サイトへ定期的に寄稿すると共に、BBCに市場専門家として定期的に出演しています。その市場分析は、英国のファイナンシャル・タイムズ、エコノミスト、米国のCNBC、Bloomberg、ドイツのDer Stern、FT Deutshland、イタリアのIl Sole 24 Ore、日本では日経新聞などの主要メディアでも頻繁に引用されています。

弊社現職に至る前には、一般投資家へ金融投資アドバイスを提供するロンドンでも有数な出版会社「Fleet Street Publication」の編集者を務め、2003年から2008年までは、英国の主要経済雑誌「The Daily Reckoning]のシティ・コレスポンダントを務めていました。

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