金市場ニュース

ニュースレター(2026年9月4日)米利上げ観測に揺れた金・銀相場、強い雇用統計で反落

週間市場ウォッチ

今週金曜日の弊社チャート上のLBMA価格が決まる時間の価格と前週のLBMA価格比較した一週間の変動率は以下の通りです。

1週間の貴金属価格の変動率 出典元 ブリオンボールト

*金は午後3時の弊社チャート価格、銀は午後12時、プラチナとパラジウムは午後2時の価格。

**日本円価格はLBMA価格として発表されないために、弊社チャート上の金曜日午後3時の価格。

  • :ドル建て価格は、4週ぶりの週間の下落で、金曜日価格で814日以来の低値。
  • 4週ぶりの週間の下げで、814日以来の低値。
  • プラチナ2週連続の週間の下落で、814日以来の低値。
  • パラジウム2週ぶりの週間の下げで、821日以来の低値。

貴金属市場の動向(週間)

今週の貴金属相場は、前週金曜日のジャクソンホール会議におけるウォーシュ米連邦準備制度理事会(FRB)議長のタカ派的な発言に加え、中東紛争の激化に伴う原油高とインフレ圧力への懸念からFRBによる利上げ観測が強まり、週半ばにかけて下落して推移していました。

その後、今週発表された米雇用関連指標が労働市場の軟化を示したことで、物価の安定とともに最大雇用の達成もFRBの二重の使命(デュアル・マンデート)であることから、利上げ観測が後退し、貴金属相場は上昇に転じていました。

しかし、本日発表された8月の米非農業部門雇用者数は16.2万人増と、市場予想の5.6万人増を大幅に上回り、失業率も4.1%で横ばいとなりました。さらに、7月分が2.3万人減から2.1万人増へと大幅に上方修正されるなど、これまで懸念されていた米労働市場の軟化が予想ほど進んでいないことが示されました。

これを受けてFRBによる利上げ観測が再び強まり、ドルと米長期金利が上昇したことで、金、銀相場は金曜日に再び押し下げられています。

米非農業部門雇用者数の増減と金価格 出典元 ブリオンボールト

今週の貴金属相場の動き(日次)

 

火曜日

英国の祝日明けの火曜日、金、銀相場は先週金曜日からの下げ基調を引き継ぎ、それぞれトロイオンスあたり4,326ドル、64.23ドルと8月半ば以来の安値をつけていました。

この下げは、前週のウォーシュ米連邦準備制度理事会(FRB)議長によるインフレに強く対応する姿勢を示したタカ派的な発言に続き、週末に米国とイランが互いへの攻撃を開始し、同日にはサウジアラビア産原油を積んだ2隻の大型石油タンカーがホルムズ海峡を航行中に攻撃を受けたと伝えられ、原油価格が上昇したことが背景となっていました。

これによるさらなるインフレへの懸念から、FRB9月のFOMCで利上げを行うとの観測は、1週間前の40%弱から70%弱へと急速に高まっていました。

また、主要国の財政への懸念から世界的に国債売りが強まる中、主要国の10年物国債利回りは、米国が昨年1月以来、日本が19969月以来、英国が20086月以来、ドイツが2011年以来の高水準へと上昇しました。

世界の株式市場も下落し、金と銀についても投資家による現金化の動きが価格を押し下げる要因となりました。

 

水曜日

金、銀相場は前日の下げ基調を引き継ぎ、ロンドン午前中にはそれぞれ1カ月ぶり、2週間ぶりの安値となるトロイオンスあたり4,283ドル、63.33ドルまで下落していました。

その後、ロンドン時間昼過ぎに発表された米雇用関連指標が市場予想を下回ったことで、米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げ観測が若干後退し、金、銀ともに下げ幅を縮小しました。

同日発表されたADP全国雇用者数は、前日発表された米雇用動態調査(JOLTS)の求人件数と同様に、米国の雇用増加ペースが緩やかになっていることを示しました。

また原油価格は、ライト米エネルギー長官が、831日に1,700万バレル超の原油がホルムズ海峡を通過し、イランとの紛争で輸送量が減少して以降で最大となったと述べたことなどを受け、同日は下落していました。

雇用市場の軟化や原油価格の下落がインフレ懸念を和らげ、FRBによる利上げ観測を若干後退させたことで、金、銀相場を支えることとなりました。

しかし、金曜日には注目度の高い米雇用統計の発表を控えていたことから、金、銀ともに上値が抑えられる展開となっていました。

 

木曜日

金、銀相場はともに反発し、今週の下落分を取り戻す動きとなり、それぞれトロイオンスあたり4,506ドル、67.33ドルへと上昇していました。

これは、同日発表された米新規失業保険申請件数が市場予想を上回り、今週発表された雇用関連指標が総じて労働市場の軟化を示したことで、米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げ観測が後退したことが背景となっています。

また、米連邦公開市場委員会(FOMC)の投票権を持つウォーラーFRB理事が、「インフレ鈍化が続けば9月は据え置きを支持するが、インフレが強ければ利上げを検討する」との考えを示したことも、FRBによる利上げ観測を後退させました。これを受け、ドルと米長期金利が前日に続いてともに下落したことも、貴金属相場を押し上げる要因となっていました。

 

金曜日

金相場は、本日発表された米雇用統計が市場予想を上回ったことで、米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げ観測が強まり、発表直後にはトロイオンスあたり100ドル近く急落しました。その後は下げ幅の半分近くを取り戻し、4,442ドル前後で推移しています。

銀相場も雇用統計発表後にトロイオンスあたり2ドルほど急落し、その後は66.23ドルと、やはり下げ幅の半分近くを取り戻して推移しています。

発表された8月の米非農業部門雇用者数は16.2万人増と、市場予想の5.6万人増、前月の修正値である2.1万人増を大幅に上回りました。また、7月分は2.3万人減から2.1万人増へと大幅に上方修正されました。

これを受け、FRBの年末の政策金利予想は前日から3ベーシスポイント上昇。また、ドルと米長期金利が2営業日ぶりに上昇に転じたことも、金、銀相場を押し下げています。

しかし、地政学的リスクや主要国の債務問題など、8月に貴金属相場を押し上げた要因は引き続き存在しており、価格下落を受けた押し目買いも入っているようです。

 

1週間のドル建て金価格チャート 出典元 ブリオンボールト1週間のドル建て銀価格チャート 出典元 ブリオンボールト

その他の市場のニュ―ス

 

  • オランダ中央銀行(DNB)が、地政学的リスクの高まりを背景に、米国とカナダで保管していた金準備の一部をロンドンへ移したことを発表。

  • コメックス(COMEX)のデータによれば、ベッセント米財務長官が長期国債のバイバックを発表後、米国のインフレ指標の個人消費支出(PCE)コア・デフレーターとウォーシュFRB議長がジャクソンホールでタカ派的発言をする前の25日までの週に、金・銀相場が上昇する中、パラジウム以外の貴金属のネットロングポジションは増加していたこと。

  • 金のネットロングは前週比3.7%増の470.64トンと、4週連続で増加して昨年923日の週以来の高水準となっていました。2025年の平均は465.8トン、2024年は555.8トン。

  • 銀の先物・オプションのネットロングは22.9%増の2,058トンと、2週連続で増加して512日の週以来の高い水準となっていました。2025年の平均は5,132.4トン、2024年は4,231.0トン。

  • プラチナのネットロングは51.0%増の16.3トンと、2週ぶりに増加していました。2025年の平均は16.2トン、2024年は9.4トン。

  • パラジウムは、23日の週以来のネットロングから317日の週にネットショートへ転じた後、ネットショートが0.7%増の16.8トンへと増加していました。2025年の平均は19.3トンのネットショート、2024年は32.6トンのネットショート。

  • ETF最大銘柄のSPDR Gold Sharesの残高は、今週木曜日までに11.13トン(1.07%)増の1,053.482トンと週間で増加する傾向です。2025年は累計で198.04トン(20.81%)増と4年ぶりの年間増加ペースとなっていました。2024年は6.59トン(0.75%)減、2023年は38.53トン(4.4%)減、2022年は57.2トン(5.9%)減、2021年は195トン(6.8%)減。

  • ETF2位のiShares Gold Trustの残高は、今週木曜日までに0.28トン(0.06%)減の460.57トンと、2週ぶりの週間の減少傾向となっています。2025年は累計で101.09トン(23.35%)増と4年ぶりの年間増加ペースとなっていました。2024年は5.91トン(1.29%)減、2023年は50トン(11.6%)減、2022年は42トン(8.9%)減、2021年は36トン(7.0%)減。

  • ETF最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までに40.23トン(0.26%)減の15,319.69トンと821日以来の低い水準となり、週間で減少傾向となっています。2025年累計では2,120.59トン(14.45%)増と2年連続の年間増加ペースとなっています。2024年は720.44トン(5.3%)増、2023年は936.56トン(6.4%)減、2022年は1,937トン(12.2%)減、2021年は867トン(4.2%)減。

  • 金銀比価(LBMA価格ベース)は、今週67台半ばで始まり、本日は66台後半と3営業日で最も低い水準へ下げて推移しています。2025年の平均は87.852024年は84.752023年は83.27、過去5年平均は82.44です。比価が高いほど銀が相対的に割安であり、低下するほどその割安感が薄れていることを示します。

  • 上海黄金交易所(SGE)とロンドン金価格の価格差は、前週227日の週以来のディスカウントで平均0.50ドルから、0.38ドルのプレミアムへと転じていました。2025年の平均プレミアムは2.85ドル、2024年は15.15ドル、2023年は29ドル、2022年は11ドル、過去5年平均は6.9ドルです。

来週の主要イベント及び主要経済指標

 

今週の貴金属市場は、インフレ圧力との関連から中東情勢に注目が集まるとともに、主要国の長期金利の上昇にも影響を受けて推移していました。そのような中、米連邦準備制度理事会(FRB)の今後の政策金利を見通す上で米国の雇用関連データも重要視されており、市場は本日金曜日に発表される米雇用統計に注目していました。

 

来週は、木曜日に欧州中央銀行(ECB)の政策金利発表と米国の生産者物価指数(PPI)、翌金曜日には消費者物価指数(CPI)の発表が予定されており、インフレと金融政策の先行きを見極める上で市場の注目を集めることとなります。

 

その他、主要経済指標の発表スケジュールの詳細は、主要経済指標(202697日~11日)をご覧ください。

 

ブリオンボールトニュース

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でも配信中です。ぜひご視聴、ご登録ください。

ロンドン便り

今週英国では、中東の紛争及びウクライナ戦争が引き続き伝えられていますが、英国内のニュースとしては、今年の夏の平均気温が観測史上最高となったこと、また、今月10日から大英博物館で一般公開される「バイユーのタペストリー」特別展を前に、今週マクロン仏大統領夫妻が英国を訪問し、水曜日にはチャールズ3世国王とカミラ王妃らとともに非公開の鑑賞会に出席したことも大きく報じられています。

バイユーのタペストリーは、1066年のノルマン・コンクエスト(ノルマン人によるイングランド征服)とヘイスティングズの戦いに至る出来事を描いた、全長約70メートルの刺繍作品です。11世紀に制作されて以来、英国で展示されるのは今回が初めてとされており、約1000年を経て、作品に描かれた歴史の舞台である英国へ戻ってきたことになります。

タペストリーに描かれているノルマンディー公ウィリアムは、ヘイスティングズの戦いでイングランド王ハロルド2世を破り、ウィリアム1世(征服王)としてイングランド王に即位しました。現在のチャールズ3世国王もウィリアム1世の子孫にあたり、今回、国王自身が約1000年前の祖先によるイングランド征服を描いたタペストリーを鑑賞したことも注目されています。

今回の貸し出しは英仏間の文化交流の一環でもあり、英国からはサットン・フーの財宝やルイス島のチェス駒など、大英博物館が所蔵する重要な文化財がフランスへ貸し出される予定です。

マクロン大統領は、この歴史的な貸し出しの実現には「少し忍耐が必要だった」と冗談交じりに語っています。今回の計画について自身が初めて言及した2018年から8年を要しましたが、英国からバイユーのタペストリーの貸し出しを求める最初の正式な要請は1931年にまでさかのぼることから、「8年ならスピード記録だと思うことにする」と述べ、会場の笑いを誘いました。

水曜日の鑑賞会では、国王夫妻とマクロン大統領夫妻らがタペストリーを鑑賞した後、チャールズ国王とマクロン大統領がそれぞれスピーチを行いました。国王は今回の貸し出しを歓迎し、タペストリーとフランスへ貸し出される英国の文化財が、両国の「共有する過去」だけでなく「共有する未来」の象徴となることへの期待を述べました。

特別展は910日から来年7月まで開催されますが、すでに非常に高い関心を集めており、最初に発売されたチケットは完売し、売上は約250万ポンドに達して、大英博物館史上最も売れた特別展となっています。

個人的には10年ほど前にノルマンディーを訪れた際に、このタペストリーを鑑賞しましたが、約1000年の時を経て英国で初めて展示されるという今回の機会が、いかに貴重なものであるかを改めて感じています。

 

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者であると共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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