金価格ディリーレポート(2026年9月3日)中央銀行の金準備を巡る政治的動きが注目される中、金相場は3.8%の下げを取り戻す
金相場は木曜日、前夜からの上昇基調を引き継ぎ、ロンドンのスポット市場で今週それまでに記録していた3.8%の下げを取り戻しました。米連邦準備制度理事会(FRB)が年末までに政策金利を1回、あるいは2回引き上げるかを巡る見方に不透明感が強まる中、中央銀行の金準備を巡る政治的な動きも大きく報じられていました。
米国債の利回り上昇について、ニューヨーク連銀のジョン・ウィリアムズ総裁は、「金融環境が経済に影響を及ぼしているということではない」と述べ、世界的に長期金利が上昇している動きには触れず、「その大部分を動かしているのは、力強い米国経済と堅調な経済見通しである」と主張しています。
一方、欧州中央銀行(ECB)が火曜日に公表した、ECBのエコノミスト及び政策アドバイザーによるブログでは、「しかし、これまでのインフレ上昇は、ほぼ全面的にエネルギーコストの上昇によってもたらされている」と指摘しています。
そして、2026年の状況はパンデミック後の2021~2022年のインフレ局面とは異なるとして、性急に政策金利を引き上げるのではなく、「異なる」政策対応が必要だとしています。
そのような中、世界第11位の金準備保有国であり、北大西洋条約機構(NATO)の主要加盟国でもあるオランダは今週、「オランダは金準備の流動性と取引のしやすさを向上させた」と発表しました。
オランダ中央銀行(DNB)は、保有する金の一部をニューヨークとオタワからロンドンへ移すことで、「地政学的な不安が高まる中、深刻な危機への備えを強化した」と説明しています。
近年のメディア報道では、「本国への還流(repatriation)」と呼ばれる動きの中で、中央銀行が「ロンドンから金を引き揚げている」ことに注目が集まっていました。
しかし、イングランド銀行の金保管量は現在、2021年末の水準まで回復しています。これは、ロシアによるウクライナへの全面侵攻を受けて西側諸国が対ロシア制裁を発動する以前の水準となります。
こうした制裁は、新興国や非西側諸国の中央銀行による記録的な金購入において、購入した金を自国内で保管する動きを促した要因と広く考えられています。
こうした金準備の移送は以前から見られ、2011年にはベネズエラが欧米などで保管していた約160トンを本国へ移したほか、ドイツ連邦銀行は2013年からニューヨークとパリで保管していた金を段階的にフランクフルトへ移し、ニューヨークから300トン、パリから374トンの計674トンの移送を2017年に完了していました。
オランダ中央銀行も2014年にニューヨークで保管していた金準備の一部である122.5トンを本国へ移しました。オーストリア中央銀行も2015年から海外保管分の一部を国内へ移す計画を進めました。そしてフランス銀行は2025年、ニューヨークに残されていた129トンの金を売却し、欧州で同量を買い戻すことで、米国での金保管を終了しました。フランスの金準備総量2,437トンに変更はありませんでした。
ロンドンの金スポット価格が本日、トロイオンスあたり4,490ドルまで上昇する中、香港のサウスチャイナ・モーニング・ポストは、金融格付け・データ会社S&Pグローバルの報告書を引用し、「中国は国際貿易における人民元の役割を高める取り組みの一環として、世界的な金保管施設のネットワークを構築し、中央銀行による金準備の積み増しを加速させている」と伝えています。
金鉱業界団体ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)は、「入手可能なデータによると、中央銀行は7月に世界の公的金準備を23トン積み増した。これは前月を下回ったものの、購入の勢いは引き続き堅調とみられ、中国とポーランドが引き続き主導している」としています。
国内で保管する金を全体の3分の1程度まで増やすことを目指すポーランドは、今年オランダを抜き、世界第10位の金準備保有国となりました。また、中国については、公表している以上の金を購入しているとの見方が広く存在しています。
一方、米FRBの政策金利を巡る市場予想は木曜日にやや後退し、9月の利上げ確率は5分の3程度まで低下。また、その後年末まで追加利上げを行わない確率は55%となっています。
火曜日に発表されたISM購買担当者景気指数(PMI)は、8月の米製造業活動の拡大ペースが7月の4年ぶりの高水準から鈍化したことを示していました。また、昨日発表されたADP全国雇用者数では、米国の8月の雇用者数が3万8,000人増にとどまり、1月以来最も低い伸びとなっています。
金曜日には、市場がより注目する米労働省労働統計局(BLS)による8月の雇用統計(非農業部門雇用者数)が発表されます。
金相場と同様に、銀相場も本日、今週のロンドン・スポット市場での下げを取り戻し、トロイオンスあたり66.40ドルまで上昇しています。




