ニュースレター(2026年8月14日)米インフレ鈍化と景気減速懸念で利上げ観測後退、金・銀は7週ぶり高値圏へ
週間市場ウォッチ
今週金曜日の弊社チャート上のLBMA価格が決まる時間の価格と前週のLBMA価格を比較した一週間の変動率は以下の通りです。
*金は午後3時の弊社チャート価格、銀は午後12時、プラチナとパラジウムは午後2時の価格。
**日本円価格はLBMA価格として発表されないために、弊社チャート上の金曜日午後3時の価格。
- 金:ドル建て価格は、2週連続の週間の上昇で、金曜日価格で6月12日以来の高値。
- 銀:2週連続の週間の上昇で、6月19日以来の高値。
- プラチナ:3週ぶりの週間の下げで、前週の6月5日以来の高値から下落。
- パラジウム:3週ぶりの週間の下げで、前週の5月29日以来の高値から下落。
貴金属市場の動向(週間)
今週の貴金属相場は、市場が注目していた米消費者物価指数(CPI)がインフレ鈍化を示したことで上昇しました。その後、米卸売物価指数(PPI)も同様にインフレ鈍化を示したものの、材料出尽くし感に加え、前週から大きく上昇していたことから、利益確定の売りが入りました。
本日は、発表された米小売売上高が消費の減速を示し、ミシガン大学消費者態度指数も市場予想を下回ったことで、米景気の減速が意識され、金、銀相場は反発しています。
この間、米連邦準備制度理事会(FRB)の年内利上げ観測は急速に後退しています。市場が予想する年末の政策金利は、下記チャートのように、現行の3.50%~3.75%から1回(0.25%)の利上げにも満たない3.84%まで低下し、ウォーシュFRB新議長の初の米連邦公開市場委員会(FOMC)直前となる6月16日以来の低水準となっています。こうした利上げ観測の後退が、貴金属相場を支える要因となっています。
しかし、中東情勢を巡る不透明感はエネルギー価格を押し上げており、インフレ圧力の再燃がFRBの金融政策をよりタカ派的な方向へ動かす可能性もあることから、引き続き上値は重い状況となっています。
今週の貴金属相場の動き(日次)
■ 月曜日
金、銀相場は前週末終値から上昇し、金曜日につけた7週ぶりの高値圏からさらに値を伸ばし、金はトロイオンスあたり4,402ドル、銀は66.06ドルまで一時上昇しました。
同日は、ホルムズ海峡の再開に向けた合意成立への不透明感を背景に原油価格が上昇し、前週の弱い米雇用統計を受けて後退していたFRBの利上げ観測も、インフレ懸念の高まりを受けて再び強まっていました。
このため、ドルは7週ぶりの安値圏からやや持ち直し、米長期金利も約1週間ぶりの高水準へと上昇していました。
そのような中でも、金、銀相場は金利上昇をものともせず、上げ幅を広げる底堅い動きとなっていました。
金は4,000ドル前後で底値を固めた後、先週後半には50日移動平均線を上抜けしており、テクニカル面からも上昇基調を裏付ける動きとなっています。
■ 火曜日
金、銀相場は、ロンドン時間早朝にそれぞれトロイオンスあたり4,434ドル、66.46ドルと、金は6月初旬、銀は6月下旬以来の高値をつけました。
その後は上げ幅を削ったものの、7週ぶりの高値圏で推移していました。
価格上昇の背景には、同日、ホルムズ海峡の航行を巡り、カタール外務省の報道官とパキスタンの国防相が、それぞれオマーンとイランの協議が最終段階に近づいていると述べたことがあります。これを受けて原油高に一服感が出たことで、FRBの利上げ観測が若干後退し、ドルと米長期金利が上げ幅を削ったことが、金、銀相場を支えました。
しかし、今週水曜日には米消費者物価指数(CPI)など重要なインフレ指標の発表を控えていたことから、市場予想を上回るインフレ指標への警戒感もあり、金、銀ともに上値は抑えられていました。
■ 水曜日
金、銀相場は、市場が注目していた米消費者物価指数(CPI)がインフレの鈍化を示したことを受け、FRBの早期利上げ観測が後退し、発表直後にドルと米長期金利が低下したことで上昇しました。
CPIは前年同月比3.4%と前月の3.5%から鈍化し、食品とエネルギーを除くコア指数も2.5%と前月の2.6%から低下しました。
これを受け、金は一時トロイオンスあたり4,439ドル、銀は66.78ドルまで上昇しました。その後は、中東情勢の先行き不透明感を背景にドルが買い戻されたことで、上げ幅を縮小していました。
市場が予想する年末の政策金利は3.88%と、年内の利上げがほぼ織り込まれていない水準まで低下し、ウォーシュFRB新議長の初FOMC直前となる6月中旬以来の低水準となっていました。
■ 木曜日
金、銀相場は、ロンドン時間早朝にそれぞれトロイオンスあたり4,449ドル、66.28ドルと同日の高値をつけた後、7週ぶりの高値圏にありながらも、上げ幅を削って下落しました。
市場が注目していた米卸売物価指数(PPI)は、前日の消費者物価指数(CPI)と同様にインフレ鈍化を示し、前年同月比4.7%と、前月の5.5%から伸びが鈍化していました。
これを受け、市場が予想する年末のFRB政策金利は3.85%と前日からさらに低下し、ドルと米長期金利も若干下げていました。一方、金、銀価格は前週から大きく上昇していたことから、材料出尽くし感もあり、利益確定の売りが入りました。
また、同日発表されたPPIがインフレ鈍化を示した後も、FOMCで投票権を持つクリーブランド連銀のハマック総裁が、利上げが必要との見方を維持したことも、金、銀価格の上値を抑える要因の一つとなっていました。
■ 金曜日
本日、金、銀相場は、ロンドン時間早朝にそれぞれトロイオンスあたり4,311ドル、63.52ドルと今週の安値近くまで一時下げたものの、その後反発し、4,393ドル、65.07ドルへと上昇して推移しています。
午前中の下げは、前日の利益確定売却の流れを引き継いだものでした。しかし、本日午後2時に発表された米小売売上高が前月比0.6%減と、前月の0.2%増、市場予想の0.1%増を大きく下回り、1年以上で最大の下げ幅となったことで、米消費の減速が意識されました。
さらに、ミシガン大学消費者態度指数も市場予想を下回り、米景気の減速を示唆しました。これを受け、FRBによる早期利上げ観測が後退し、ドルが下落したことが、金、銀価格の反発要因となりました。
この間、米長期金利は上昇していました。前日に行われた30年物米国債入札がやや低調だったことなどから、米国債の需給への警戒感が長期金利を押し上げる一因となっていたとみられます。

その他の市場のニュ―ス
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前週中国金協会(CGA)が発表した金の需給のレポートによると、2026年上半期、中国の地金・金貨需要は前年同期比28.4%増の339.3トンとなる一方、宝飾品需要は33.9%減の132.1トンまで落ち込み、投資用の地金・金貨需要は宝飾品需要の2.5倍に達していたこと。詳しくは「中国の金投資需要、宝飾品需要の2.5倍に」をご覧ください。
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コメックス(COMEX)のデータによれば、前週火曜日、ホルムズ海峡再開の期待から貴金属価格が上昇していた際に、全ての貴金属でネットロングを増加させていました。
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金のネットロングは前週比10.0%増の411.80トンと、昨年12月23日の週以来の高水準へ増加していたこと。2025年の平均は465.8トン、2024年は555.8トン。
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銀の先物・オプションのネットロングは32.0%増の1,721トンと、7月7日の週以来の高い水準へ増加していました。2025年の平均は5,132.4トン、2024年は4,231.0トン。
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プラチナのネットロングは70.6%増の16.9トンと6月2日の週以来の高さへ上昇していました。2025年の平均は16.2トン、2024年は9.4トン。
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パラジウムは、2月3日の週以来のネットロングから3月17日の週にネットショートへ転じた後、ネットショートは9.5%減の16.9トンと、6月23日の週以来の低さへ減少していました。2025年の平均は19.3トンのネットショート、2024年は32.6トンのネットショート。
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金ETF最大銘柄のSPDR Gold Sharesの残高は、今週木曜日までに5.71トン(0.56%)増の1,023.243トンと、6月3日以来の高い水準でへ上昇し、2週連続の週間の増加傾向となっています。2025年は累計で198.04トン(20.81%)増と4年ぶりの年間増加ペースとなっていました。2024年は6.59トン(0.75%)減、2023年は38.53トン(4.4%)減、2022年は57.2トン(5.9%)減、2021年は195トン(6.8%)減。
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金ETF第2位のiShares Gold Trustの残高は、今週木曜日までに1.57トン(0.34%)減の456.32トンと、昨年8月28日以来の低さで、3週連続の週間の減少傾向となっています。2025年は累計で101.09トン(23.35%)増と4年ぶりの年間増加ペースとなっていました。2024年は5.91トン(1.29%)減、2023年は50トン(11.6%)減、2022年は42トン(8.9%)減、2021年は36トン(7.0%)減。
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銀ETF最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までに163.04トン(1.07%)増の15,336.03トンと4月1日以来の高い水準で、週間では3週連続の増加傾向となっています。2025年累計では2,120.59トン(14.45%)増と2年連続の年間増加ペースとなっています。2024年は720.44トン(5.3%)増、2023年は936.56トン(6.4%)減、2022年は1,937トン(12.2%)減、2021年は867トン(4.2%)減。
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金銀比価(LBMA価格ベース)は、今週67台後半で始まり、水曜日に66台後半と6月中旬以来の低値へ下げてた後、本日67台前半へと上昇して推移しています。2025年の平均は87.85、2024年は84.75、2023年は83.27、過去5年平均は82.44です。比価が高いほど銀が相対的に割安であり、低下するほどその割安感が薄れていることを示します。
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上海黄金交易所(SGE)とロンドン金価格の価格差は、2月27日の週からプレミアムへ転じており、今週の平均プレミアムは4.35ドルと前週の7.63ドルから下げて、7月10日の週以来の低さとなっていたこと。2025年の平均プレミアムは2.85ドル、2024年は15.15ドル、2023年は29ドル、2022年は11ドル、過去5年平均は6.9ドルです。
来週の主要イベント及び主要経済指標
今週市場は、ホルムズ海峡再開への見通しに注目しながらも、米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策に影響を与えると見られている、米消費者物価指数(CPI)と卸売物価指数(PPI)に注目し、反応して推移していました。
来週は、水曜日に前回米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録が発表され、重要イベントとなりますが、その他、同日に発表される英国とユーロ圏の消費者物価指数、金曜日に発表される主要国の製造業、サービス部門のPMIへも市場は注目することとなります。
その他、主要経済指標の発表スケジュールの詳細は、主要経済指標(2026年8月17日~23日)をご覧ください。
ブリオンボールトニュース
今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
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主要経済指標(2026年8月10日~14日)今週のの結果をまとめています。
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主要経済指標(2026年8月17日~23日)来週の予定をまとめています。
なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でも配信中です。ぜひご視聴、ご登録ください。
ロンドン便り
今週英国では、ホルムズ海峡の再開を巡る不透明さ、トランプ大統領が提案したガザ和平計画をイスラエルが拒否したこと、ウクライナ戦争の激化、プーチン大統領が北方領土を訪問したことなど、地政学リスクの高まりに関するニュースが多く報道されていました。
一方、国内のニュースでは、記録的な猛暑がイングランド全般を襲い、その大部分が干ばつと宣言されたこと、木曜日にはロンドンで今年最高となる38.1度を記録したこと、そして水曜日には、英国で1999年以来最も深い日食が観測され、大きな話題となっていました。
そこで、今週はこの日食についてお伝えしましょう。
英国では皆既日食とはならなかったものの、太陽の90%以上が月に隠れる非常に深い部分日食となり、ロンドンでは午後7時13分頃に最大となって、太陽の約91%が隠れました。英国でこれほど大規模な日食が観測されたのは1999年以来27年ぶりのことでした。
1999年の日食では、英国南西部の一部が皆既日食となったものの、あいにくの曇り空で、多くの場所では十分に観測することができませんでした。それだけに今回は、記録的な猛暑をもたらした晴天の下で日食を観測できるとあって、英国各地で大きな盛り上がりを見せました。
特に話題となったのが、日食を安全に観察するための専用メガネです。直前になって需要が急増し、英国各地の販売店で相次いで売り切れとなりました。ロンドンのあるコンビニでは、スペインから午前2時半に入荷した6,000個が午前9時半までに完売。遠くバーミンガムやサウサンプトンから買いに来た人もいたとのことで、ロンドンでは長い行列もできました。
そして、メガネを手に入れられなかった人たちの間で意外な人気商品となったのが、台所で使う穴の開いた「ザル(colander)」でした。ザルの穴を通った太陽光を地面などに投影すると、欠けた太陽の形を安全に観察できるためです。その結果、John Lewisではザルの売上が前年に比べ約40%増加し、Tescoではステンレス製のザルの売上が前週比130%以上も増加したとのこと。シリアルの箱を使った手作りの観察装置なども登場しました。
ちなみに、英国で今回と同程度以上に太陽が隠れる日食が次に見られるのは2081年。そして、英国本土で次に皆既日食を観測できるのは2090年9月23日と、実に64年後となります。
1999年は天候に恵まれず、次の皆既日食は64年後。それだけに、晴天に恵まれた今回の日食は、多くの人にとって一生に一度ともいえる機会となり、英国中がちょっとした「日食フィーバー」に包まれました。




