金市場ニュース

ニュースレター(2025年5月2日)中国が祝日中に、金価格はトランプ大統領就任100日の上げ幅を削って週間の下落へ

週間市場ウォッチ

今週金曜日の午後3時の弊社チャートの金価格は、前週のLBMA PM金価格と比較すると、0.8でトロイオンスあたり3250ドルと2週連続で下落しています。この間金曜日午後12時の弊社チャートの銀価格は、前週のLBMA 銀価格と比較して2.9%安のトロイオンスあたり32.36ドルと3週ぶりに下げています。また、今週金曜日午後2時の弊社チャートのプラチナ価格は、前週金曜日のこの価格から0.3%高でトロイオンスあたり972ドルとなっています。そして、本日金曜日午後2時のパラジウム価格は、前週金曜日のこの価格から1.3%安でトロイオンスあたり954ドルと週間で上昇しています。

の金・銀・プラチナ・パラジウム相場の動きの概要

今週貴金属相場は、トランプ大統領の関税政策への懸念が、本日中国との協議が近い将来開始される観測も入り後退し、株価が4月の急落分を取り戻す上昇を見せる中で、金は2週連続で下げ、銀とパラジウムも下げ、プラチナは若干上昇しています。

金は4月にトロイオンスあたり3500ドルと一時12.4%高まで急騰し、一月の上げ幅としては欧州債務危機時の2012年1月以来の幅であったことからも、調整が入っていましたが、4月の最終の上げ幅は6.0%と引き続き強いものとなっていました。

なお、4月の金の急騰の背景にあった中国は木曜日から来週月曜日まで長期の祝日となっていることからも、この間低値の買いが4月の急騰時のように入らない状況とはなっている模様です。

ところで、今週火曜日はトランプ大統領の2期目の100日目であったことから、21世紀のそれぞれの米大統領の100日目の金のパフォーマンスをリサーチ部門でまとめましたので、そのチャートを下記に添付します。ここで、トランプ大統領2期目(赤)が22.2%高と圧倒的に上回っていることが見られます。ちなみに、この上げ幅は、ニクソンショックと呼ばれる、1971年8月に金と米ドルの交換停止を発表したニクソン元大統領の39.1%に次ぐものとなります。

21世紀の米大統領の就任100日のドル建て金価格のチャート 出典元 ブリオンボールト

今週の金相場について

月曜日金相場はトロイオンスあたり3300ドルを一時割って下げたものの、ロンドン時間午後には下げ幅を取り戻して、NY時間終わりには3352ドルへと一時上昇していました。

この上昇は、3300ドルという心理的節目を割ると、購入されるという前週のパターンを繰り返していた模様です。

火曜日金相場は、トランプ大統領就任100日目を迎える中、同氏の関税政策が軟化しているという市場の見方からも株価が上昇し、前日の上げ幅をほぼ半分ほど失ってトロイオンスあたり3317ドルへと下げて終えていました。

この背景はトランプ大統領が自動車関税の負担軽減策を検討していると伝わったことがリスクオン基調をサポートしていた模様です。

そのような中で、同日発表の経済指標の米雇用動態調査(JOLTS)求人件数と米消費者信頼感指数は前回と予想を下回っていましたが、この懸念はFRBの利上げ観測を広げている模様で、結果的にリスクオン基調となっていました。

水曜日金相場は、前日の下げ基調を受け継いで、トロイオンスあたり3267ドルまで下げたものの、ロンドン時間午後に発表された米経済指標が悪化していたことで株価が下げて、上昇に転じたものの、NY時間終了後のマイクロソフトとメタプラットフォームの決算結果が良かったことでリスクオン基調となり、3272ドルで終えていました。

同日発表された米指標は、まず第1四半期GDPで前期比年率でマイナス0.3%と3年ぶりのマイナス成長となり、個人消費支出のコア指数が3.5%と前四半期の2.6%から上昇してインフレの高止まりを示唆し、ADP全国雇用者数は予想の12万人増を下回り6.2万人と、全般、トランプ大統領の関税政策による景気の停滞とインフレ高を示していました。

また、金価格の上昇を牽引していた中国は、翌日から来週月曜日まで長期の祝日となり、同日すでに上海黄金交易所(SGE)と上海先物取引所(SHFE)の取引量が年末年始の低い水準へと大きく下げるなど、ディップでの買いが入りにくい状況となっていた模様です。

木曜日金相場は、米株価が上昇する中で、ドルと長期金利も上昇し、4月半ば以来の低さのトロイオンスあたり3203ドルへと一時下げた後に、3277ドルまで戻して終えていました。

同日米株価が上昇しているのは、前夜発表されたマイクロソフトとメタプラットフォームの決算が予想を上回るものであったことで、ハイテク株を中心に株価を引き上げていたことからでした。

そこで、市場のFRBの早期の利下げ観測が後退し、ドルと米長期金利が上昇することで、金は押し下げられることとなりました。

なお、同日日本銀行は政策金利を据え置きましたが、結果は予想通りで、近い将来の利上げ観測は後退し、日本円が対ドル弱含んで円建て金価格がgあたり15137円へと上昇して終えていた以外は、市場への影響は限定的となっていました。

本日金相場は、前日のApple社とアマゾンの決算結果と将来の予想が懸念材料となり、上昇で始まっていましたが、市場注目の米雇用統計が予想を上回るものであったことで、トロイオンスあたり3239ドルまで一時下げたものの、その後下げ幅を取り戻して3260ドル前後を推移しています。

米非農業部門雇用者数は17.7万人と前回修正値の18.5万人を若干下回ったものの、予想の13.0万人を上回っていました。失業率は前回と予想同水準の4.2%で、平均時給は前月比0.2%と前回と予想の0.3%を下回り、前年同月比も3.8%と前回と同水準で予想の3.9%を下回っていました。

また、本日中国商務省が米国から交渉を求めての複数の打診があったことを認めたことで、米中間の関税に関する協議の進展への期待もあり、米株価が上昇していることからも、金は頭を抑えられていますが堅固な動きとなっています。

一週間のドル建て金価格のチャート 出典元 ブリオンボールト

その他の市場のニュ―ス

  • コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、先週末に4月22日までのデータが発表され、トランプ大統領がFRBに利下げを要求し、それに従わない場合パウエル議長を解任すると警告をしていた際に、金とパラジウムで強気ポジションが削られ、銀とプラチナでは強気ポジションが積み増されていたこと。
  • コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、8.2%減で391.04トンと5週連続で減少し、2024年2月下旬以来の低さへ下げていたこと。価格は6.7%高でトロイオンスあたり3433ドルと史上最高値をつけ、建玉は10.6%増で2024年9月末以来の高さであったこと。
  • コメックス銀の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、12.2%増で4071トンと2週連続で増加していたこと。価格は前週比0.9%高で、トロイオンスあたり32.61ドルと2週ぶりの高さとなっていたこと。
  • コメックスのプラチナ先物・オプションのネットポジションは、12月24日からネットロングであったものの、4月8日からネットショートへ転換し、先週は11.2%減少させて14.3トンと、2週連続で前前週の昨年の3月初旬以来の大きさからは減少していたこと。価格は前週比0.3%高でトロイオンスあたり963ドルと2週連続で上昇して、前前週の昨年末以来の低さから上昇していたこと。
  • コメックスのパラジウム先物・オプションは2022年10月半ばからネットショートで、先週火曜日までに3.5%増で41.80トンと昨年8月末以来の高さへと再び増加していたこと。価格は2.8%安でトロイオンスあたり937ドルと2週ぶりの低さとなっていたこと。
  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに0.9トン(0.10%)減少して945.41トンと3週連続の週間の下落の傾向であること。
  • 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までに2.08トン(0.48%)増で437.32トンと2023年8月23日以来の高さで、5週連続の週間の上昇傾向であること。
  • 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までに53.76トン(0.40%)増で14,009.77トンと先週金曜日以来の高さで週間の減少の傾向であること。
  • 金銀比価はLBMA価格ベースで、今週99台前半で始まり、水曜日に101台後半と金が急騰した際につけた4月23日以来の高さまで上昇後一旦下げたものの、その後徐々に上げて本日100台半ばとで終わる傾向。2024年の年間平均は84.75、2023年の年間の平均は83.27。5年平均は82.44。(数値が高いと銀の割安傾向で、低いと銀割安傾向が解消されたこととなる。)
  • プラチナの金と差であるプラチナディスカウントは、今週2299ドルで始まり、火曜日に2323ドルへ上昇後に本日2294ドルと若干下げて終える傾向。2024年間の平均は1431ドル。2023年の平均は975で、5年平均は968ドル。
  • プラチナとパラジウムの差は2月6日からプレミアムで、今週30ドルのプレミアムで始まり、その後木曜日に19ドルへと下げた後に27ドルへ戻して終える傾向。2024年の平均は28ドルのディスカウント。2023年平均ディスカウントは371ドルで、2022年ウクライナ戦争でパラジウム価格が高騰して1153ドル。5年平均は835ドルのディスカウント。
  • 上海黄金交易所(SGE)は今週木曜日から来週火曜日まで長期の祝日で、水曜日までの週間平均は29.39ドルと前週の47.11ドルと中国主導で金価格が上昇していた2024年4月以来の高さから下げていたこと。2024年の平均は15.15ドルのプレミアム。2023年平均は29ドルのプレミアムと2022年の平均の11ドルから大きく上昇。これは需要増もあるものの、中国中銀による輸入許可が制限されていることも要因。(ロンドン価格と上海価格の差:プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)コロナ禍を含む過去5年間の平均は6.9ドル。
  • 金と実質金利(米10年物物価連動債)の相関関係は4月11日から正の相関関係へ転換し、0.32と関係を弱めていたこと。(負の相関関係は-1の場合二つが全く相反する動きをすることを示す。)ドルインデックスと金は4月3日から負の相関関係へ転換し、-0.96と関係を強めていたこと。S&P500種と金の相関関係は3月13日から負の相関関係で、木曜日までで-0.32と関係を若干週間で強めていたこと。

今週の主要イベント及び主要経済指標

今週トランプ大統領の就任100日を迎え、市場は引き続きトランプ氏の関税政策関連ニュースを注目する中で、米GDP、FRBがインフレデータとして重要視する個人消費支出コアデフレーターや雇用関連データの結果でも反応していました。

来週は、米中央銀行のFRBの金融政策発表が水曜日、イングランド銀行の発表が木曜日に行われ重要となりますが、引き続きトランプ政権の動きにも注目が入ることとなります。

詳細は主要経済指標(2025年5月5日~9日)をご覧ください。

ブリオンボールトニュース

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。

ロンドン便り

今週英国では、前週末はローマ教皇の葬儀、カナダの総選挙結果、ウクライナ戦争の停戦に関わる協議、スペインとポルトガルの大半の地域で発生した停電、そしてトランプ大統領就任後100日目を記念した米ミシガンでのイベントなどが大きく伝えられていました。

この間、英国のニュースとしては、前週末に行われたロンドンマラソン、前週から続いている記録的な晴天、そしてブレア元首相による現政権の化石燃料を制限するネットゼロ政策への批判と、それに対する政府の反応、また昨日行われた地方選挙で右派ポピュリスト政党「リフォームUK」が躍進した結果についてが大きく取り上げられています。

そこで、今週は英国のエネルギー政策について簡単にまとめ、ブレア元首相と労働党政権の見解についても紹介しましょう。

英国のエネルギー政策は、2019年のボリス・ジョンソン保守党政権時に、2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにするという法的義務を導入し、世界で初めて法制化されたネットゼロ目標を掲げました。

その中で、2024年10月までに石炭火力を段階的に廃止するとし、その代替エネルギーとして、長期的には風力、太陽光、原子力、天然ガスなどへ転換する計画であり、短・中期的なエネルギー供給の安定を確保するために、天然ガスや北海油田を活用するとしています。

今週、ブレア元首相が現政権のエネルギー政策を批判した要点は以下の通りです。

  • 現在の政策が実用性よりも政治的動機に基づいていると批判し、英国民がこの政策によって多大な経済的・生活的負担を強いられている一方で、世界的な排出削減への影響は限定的であるとしています。
  • 技術革新を重視すべきとし、化石燃料の即時廃止ではなく、炭素回収・貯留や原子力などの技術的解決策への投資を優先すべきだと述べています。
  • 国際的視点の欠如を指摘し、今後の排出の多くは中国やインドなどの新興国から発生するとして、英国単独の努力には限界があるとしています。

これに対しスターマー首相は、炭素回収やAIへの投資も政策に含まれており、ブレア元首相の提案と一致する部分もあると反論しています。また、環境活動家や労働党支持者からは、ブレア氏の発言が気候変動対策の進展を妨げるとの懸念も表明されています。

野党・保守党内では現段階で意見の相違も見られ、公式な声明は出ていないものの、スナク前首相はネットゼロ目標に向けた政策を見直し、2030年から2035年へとガソリン車販売禁止を延期し、ガスボイラーの段階的廃止計画の緩和も発表しており、ブレア元首相の現実的なアプローチに近い部分もあるようです。

英国でも毎年、気候変動の影響と思われる異常気象が続いており、このトピックへの関心は高まっている一方、近年のエネルギー価格高騰による高インフレの影響からも、エネルギーの安定供給の重要性が再認識されているようです。

気候変動対策としてのエネルギー政策は、現実性を高めながらも、世界的な協力のもとに進めていかなければならない課題だと言えるでしょう。

 

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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