ニュースレター(2025年1月10日)ドルと長期金利が上昇する中で金は上昇、ポンドとユーロ建てでは史上最高値へ
今週のニュースレターは先週も含めて2週分をお届けします。なお、現在は日本に滞在していますので、英国からのニュースはお休みさせていただきます。
週間市場ウォッチ
金曜日のLBMA PM金価格は、前週金曜日の同価格から1.54%高でトロイオンスあたり2687ドルと、LBMA価格ベースで昨年12月11日以来の高さへ上昇していました。この間金曜日のLBMA 銀価格は、前週の同価格から1.82%高のトロイオンスあたり30.36ドルと週間の上昇で、昨年12月18日以来の高さへ上昇していました。金曜日のLBMA価格のPMプラチナ価格は、前週同価格から3.00%高のトロイオンスあたり962ドルと昨年11月22日以来の高さへと上昇していました。また、金曜日のLBMA PMパラジウム価格は、前週金曜日の同価格から2.48%高でトロイオンスあたり952ドルと5週ぶりの週間の上昇で、12月16日以来の高さへ上昇していました。
先週と今週のの金・銀・プラチナ・パラジウム相場の動きの概要
貴金属価格は前週はお正月の祝日を挟んで薄商いの中で、正月前はポジション整理、正月後はトランプ次期政権のインフレ高につながる政策からも上昇となり、今週もその基調を受け継いで、米雇用関係データが堅固な労働市場を示唆し、ドルが26か月ぶり、長期金利も14か月ぶりに上昇する中でも、堅固に上昇を続けることとなりました。
また、ドルが強含むことで、英国ポンドとユーロが弱含み、それぞれの通貨建てでは金価格は史上最高値を更新することとなりました。
今週のチャートとしては、ドルインデックス(青)とドル建て金価格(深緑)のチャートをお届けしましょう。ここで、年初ドルが2年ぶり以上の高値へと上昇する中で、金価格が必ずしも下げずに堅固な動きをしていることを見ることができます。そこで、金とドルインデックスの相関関係はかろうじて負の関係でありながら、-0.11と下げています。
先週と今週の金相場について
昨年30日及び31日は薄商いの中でポジション整理の動きからも、金相場は多少下げながらも、その下げ幅を取り戻してトロイオンスあたり2624ドルで終えていました。
欧米は2日木曜日から市場が始まり、3日金曜日の金相場は日本が新年の3連休の中、約1.6%上昇しトロイオンスあたり2648ドルと11月22日の週以来の大幅な上昇傾向となっていました。
この間ドルは前日2年ぶりの高値、長期金利も同日若干下げてはいるものの、5月以来の高値の水準ではあることからも、堅固な動きをしていました。
これは、今月トランプ次期政権が発足することから、そのインフレを引き起こす政策への懸念が背景と分析されていました。
また、中国の需要が増加していることは、上海黄金交易所のプレミアムが上昇していることからも見られており、金のETFは12月に全体で3.6トン増と金へのセンチメントは改善を見せていました。
6日月曜日金相場はワシントンポストが伝えたトランプ新政権の関税への微調整の可能性でドルが下げて貴金属が上昇して金は一時トロイオンスあたり2649ドルをつけたものの、その後トランプ氏がそのニュースをSNSで否定して価格を下げる等と乱高下をして、2635ドルで終えていました。
7日火曜日金相場はドルが2年ぶりの高値から弱含む中で、金価格はトロイオンスあたり2664ドルへ上昇し、2651ドルへ戻して終えていました。
同日は中国の中央銀行が12月に10トン金準備を追加したことが明らかとなったこと、そしてトランプ次期大統領の20日の就任を前にインフレを引き起こす政策への懸念も、金をサポートしていました。
そして、同日は米雇用動態調査(JOLT)求人件数と米ISM非製造業景況指数が発表され、共に予想を上回るものであったことからも、金曜日の雇用統計を前にこれも好調なデータとなる可能性からも、金の頭を押さえた模様です。
8日水曜日金相場は米雇用関連データが弱いものであったことからも、ドルと長期金利は、それぞれ2年と14か月ぶりの高さへ上昇しているものの、発表後上げ幅を広げて、トロイオンスあたり2670ドルをほぼタッチしていました。
同日発表されたADP全国雇用者数は予想の14.0万人を下回り12.2万人だったことから、新規失業保険申請件数は予想の21.8万件を下回り20.1万件であったものの、前日の米雇用動態調査(JOLTS)求人数が予想を上回り米FRBが利下げペースを遅らせる観測の広まりを後退させることとなりました。
さらに、ウォーラーFRB理事が、インフレが今後も下げ続けると予想し、そのために利下げを支持すると述べたことが伝えられたことも、金をサポートしていました。しかし、同日発表のFOMC議事録は、利下げに慎重なハト派的とはなっていました。
9日木曜日金相場は、米国がカーター元大統領の国葬が行われ祝日となる中で、トロイオンスあたり2678ドルとひと月ぶりの高値まで一時上昇後に2670で終えていました。
この間ドルインデックスは強含み、1月2日につけた2年ぶりの高値をつけ、米長期金利は前日の8か月ぶりの高さから若干下げていました。
この背景はトランプ新政権によるインフレが高止まりすることや主要国の公的債務の規模への懸念であったようです。
ちなみに、同日英国ポンドは年初来の最低値水準を推移しており、ポンド建て金価格は史上最高値のトロイオンスあたり2179ポンドをつけていました。
この背景は労働党新政権の政策がより多くの国債発行となる懸念で国債が売られていることからでした。
10日金曜日金相場は、市場注目の米雇用統計が予想を上回り、ドルが26か月ぶりの高さに上昇し、長期金利が14か月ぶりの高さへ上昇したことからも、一旦は下げたものの、株価が大きく下げる中で、その後上昇してトロイオンスあたり2697ドルと4週間ぶりの高さへと上昇して2689ドルへ戻して終えていました。
米雇用統計の結果は、非農業部門雇用者数が25.6万人と前回修正値21.2万人と予想の16万人を上回り昨年3月以来の高さへ上昇していました。また、失業率も4.1%と前回と予想の4.2%から下げていました。平均時給は前月比0.3%と予想と同水準で、前回の0.4%からは下げていました。また前年同月比も3.9%と前回と予想の4.0%を下回っていました。
そこで、FRBの利下げペースが遅れる観測でFEDWatchツールによると年末の金利は4.0%を超えて、12月のFOMCでの予想の3.9%を上回って推移していました。
しかし、株価がS&P 500種が今年年初からの上げ幅を全て失うなどと大きく下げていることからもリスクオフで金が上昇していた模様です。
なお、ポンド建て金価格とユーロ建て金価格は史上最高値をそれぞれトロイオンスあたり2206ポンド、2630ユーロをつけていました。
その他の市場のニュ―ス
- コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、今週月曜日に12月31日までのデータが発表されて、年末のポジション整理と思われる価格の上昇の中で、プラチナを除くすべての貴金属で強気ポジションを減少させていただこと。
- コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、1.0%減で567トンと3週連続で減少して7月初旬以来の低さとなっていたこと。価格は0.1%安でトロイオンスあたり2611ドルへ下げ、建玉は4.7%減と2月初旬の低さへ減少していたこと。
- コメックス銀の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、18.3%減で2616トンと3週連続で減少し、3月初旬以来の低さへ減少していたこと。価格は前週比2.4%安で、トロイオンスあたり28.91ドルと下げていたこと。
- コメックスのプラチナ先物・オプションのネットポジションは、12月24日からネットロングで、178%増で9.4トンと12月3日以来の高さへ増加していたこと。価格は前週比3.0%安でトロイオンスあたり914ドルへ下げていたこと。
- コメックスのパラジウム先物・オプションは2022年10月半ばからネットショートで、先週火曜日までに2.8%増で32.6トンと9月上旬の高さへ増加していたこと。価格は4.6%安でトロイオンスあたり909ドルと4月上旬以来の低さへ下げていたこと。
- 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週5.74トン(0.49%)増加して876.82トンと、12月20日以来の高さで週間の増加となっていたこと。
- 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週週間で全く変化なく、393.19トンと12月13日以来の高さとなっていたこと。
- 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週68.00トン(0.47%)減で14,307.32トンで1月2日以来の低さで週間の減少。
- 金銀比価は、今週88台半ばで始まり、週半ばに88台を割ったものの、再び88台半ばに上昇して終えていたこと。2024年の年間平均は84.75、2023年の年間の平均は83.27。5年平均は82.44。(数値が高いと銀の割安傾向で、低いと銀割安傾向が解消されたこととなる。)
- プラチナの金と差であるプラチナディスカウントは、先週1692~1711ドルを推移し、2024年間の平均は1431ドル。2023年の平均は975で、5年平均は968ドル。
- プラチナとパラジウムの差は8月27日からディスカウントで、12月18日からプレミアムに転換し、12月24日に一日ディスカウントになったものの、それ以降はプレミアムで、19ドルで始まり、31ドルまで木曜日に広がったものの、金曜日に21ドルで終えていたこと。2024年の平均は28ドルのディスカウント。2023年平均ディスカウントは371ドルで、2022年ウクライナ戦争でパラジウム価格が高騰して1153ドル。5年平均は835ドルのディスカウント。
- 上海黄金交易所(SGE)は、週間のロンドン価格は8月19日からディスカウントであったものの12月20日からプレミアムに転換し、今週の平均は14.70ドルのプレミアムと7月半ば以来の大きさで、前週の10.85ドルから増加。2024年の平均は15.15ドルのプレミアム。2023年平均は29ドルのプリミアムと2022年の平均の11ドルから大きく上昇。これは需要増もあるものの、中国中銀による輸入許可が制限されていることも要因。(ロンドン価格と上海価格の差:プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)コロナ禍を含む過去5年間の平均は6.9ドル。
- コメックスの先物・オプションの週間の平均取引量は、先週前週比、金は48.5%増で12月半ば以来の高さ、銀は41.4%増で金同様に12月半ば以来の高さ、プラチナは1.3%減で12月初旬以来の低さ、パラジウムは32.1%減で12月下旬以来の低さとなっていたこと。
- 金と実質金利(米10年物物価連動債)の相関関係は11月13日から負の相関関係で-0.56と週間ではその関係を弱めていたこと。(負の相関関係は-1の場合二つが全く相反する動きをすることを示す。)ドルインデックスと金は12月19日から負の関係で、-0.11と前週から関係を弱めていたこと。S&P500種と金の相関関係は12月9日から正の関係で、0.35と前週から関係を弱めていたこと。
来週の主要イベント及び主要経済指標。
今週は米雇用関連データやFRB高官の金融政策関連に市場は注目する中、トランプ次期大統領の政策への観測などからも市場は動くこととなりました。
来週は米卸売物価指数が火曜日、米消費者物価指数が水曜日に発表され、重要指標となりますが、その他ユーロ圏の消費者物価指数は金曜日、同日に中国のGDPや小売売上高、鉱工業生産等も発表され、市場は注目することとなります。
詳細は主要経済指標(2024年1月13日~17日)ご覧ください。
ブリオンボールトニュース
先週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
- 主要経済指標(2024年1月6日~10日)今週の結果をまとめています。
- 主要経済指標(2024年1月13日~17日)来週の予定をまとめています。
- 金価格ディリーレポート(2025年1月6日)トランプ大統領の貿易関税「微調整」で金・銀相場は乱高下
- 【金投資家インデックス】記録的な利益確定の売却の中、2024年に金と銀は急騰を続ける
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ロンドン便り
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