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【金投資家インデックス】記録的な利益確定の売却の中、2024年に金と銀は急騰を続ける

投資需要は2年連続で売却が購入量をネットでは上回っていました。

欧米の投資家は、2024年に世界有数のオンライン地金投資サービスを提供するブリオンボールトを利用して、記録的な量の金及び銀地金を売却していました。

しかし、銀価格が12年ぶりの高値をつけ、金が年間では1979年以来の最高値更回数を記録していたことからも、その評価額ベースでは米ドル建てでほぼ2割増となっていました。

ブリオンボールトの顧客は全体で、昨年一年間で金地金の保有量を6.0%、銀地金においては4.7%減少させていました。しかし、価格が急騰していたことからも、ブリオンボールトの顧客が保有する地金の評価額は、金地金ではドル建てで19.0%増の37億ドル(日本円建てでは31.9%増の4400億円)、銀地金では18.0%増の11億ドル(日本円では30.8%増の1720億円)となっていました。

史上最高値の金価格は、利益確定の売却に拍車をかけることとなりました。しかし、個人投資家は、株式市場の上昇や、世界金融危機前以来の実質金利の高さにもかかわらず、金や銀を価格の上昇ほどは売却していませんでした。

これは、2025年を迎える中で、貴金属への確固としたコミットメントを示しています。そして、12月に行われた9割が欧米に居住しているブリオンボールトの顧客へのアンケート調査では、金は今年17.6%上昇して年末価格はトロイオンスあたり3070ドル、銀は27.6%上昇し36.90ドルと予想されています。

金投資家インデックスとドル建て金価格のチャート 出典元 ブリオンボールト12月に金価格がドル建てで1.5%(ポンド建てで0.3%、ユーロ建てで0.2%、日本円建てで3.0%)下落したことから6ヶ月ぶりの低水準となる中で、金の購入量を上回る売却をしたネット売却者数は減少し、11月の数値と比較すると28.2%減となっていました。しかし、月間の購入量が売却量を上回っていたネット購入者数も減少し、20.8%減と直近の3ヶ月間で最も少なくなっていました。

その結果、金地金現物に対する個人投資家のセンチメントを示す指標である、金投資家インデックスは、11月の17ヶ月ぶりの高水準から0.8ポイント低下していました。しかし、前年比同月比では2.9ポイント上昇の54.3で2024年を終えることとなりました。

この指数は、2020年3月にコロナ危機の世界的な広がりに伴い、65.9と10年来のピークを記録し、昨年3月には47.5と過去最低値を記録しています。50を下回る数値は月間のネット購入者数がネット売却者数よりも少なかったことを示しています。

過去12ヶ月平均では、金投資家インデックスは前年比0.4ポイント低下して52.6と、金価格が深い弱気相場に陥っていた2014年の52.2以来の低い年間水準となっていました。

実際に、2024年は欧米の投資家にとって価格のみが強気相場であったと言えるでしょう。世界の紛争は選挙にのみ影響を与え、株式市場は史上最高値を更新していたことからも、金需要は2年連続でマイナスに留まることとなりました。

しかし、昨年トランプ氏が勝利したことで、特に欧州全域では新たに金を購入する人が急増し、2025年を迎えて金融市場の落ち着きは失われつつあるようです。

ブリオンボールトの新規顧客数は、昨年年間では42.4%増加し、2021年以降で最も多くなっていました。そのうちの6割以上は、英国、ドイツ、フランスに居住しています。

銀投資家インデックスとドル建て月間平均銀価格 出典元 ブリオンボールト

 

銀投資家インデックスは12月も下落し、21ヶ月ぶりの高水準となった11月から1.3ポイント下落し、52.7となっていました。

この結果、同指数の2024年の平均値は50.8となり、年間ベースでは前年の最低値に並んでいました。

重量ベースでは、ブリオンボールトの顧客の銀地金保有量は、9月以来最も多い1,156トンとなり、0.2%増加していました。しかし、12月の銀価格は3.0%下落したことから、保有されている銀の評価額は、7月以来の低水準となり、史上最高値をつけた10月からは11.5%減の11億ドル(日本円建てにおいては9%減の1890億円)となっていました。

一方金地金は、11月に価格の急落で14ヶ月続いた利益確定の売却が減少して地金の流出が止まっていたものの、12月は再び顧客全体ではネットでは売却量が購入量を上回っていました。しかし、その量は45キログラムと低いものとなっていました。

そのため、顧客の金地金保有量は0.1%減の44.1トンと2020年7月以来の低い量で、評価額においては、史上最高を記録した10月からは4.5%減の39億ドル(日本円建てにおいては1.8%減の5920億ドル)へと減少していました。しかし、これは引き続き多くの中央銀行の金準備の量を上回っており、上場されている金ETF信託ファンドのトップ13銘柄を除く全ての信託ファンドを上回る量ではあります。

金価格はドル建てにおいて2024年に38回新高値を更新し、世界金融危機が起きていた2011年と同水準で、インフレと地政学リスクが高まっていた1979年以来の数値となっていました。

また、英国ポンド建てにおいては40回、ユーロ建てでは44回、日本円建てでは45回史上最高値を更新していました。

エィドリアン・アッシュは、ブリオンボールトのリサーチダイレクターとして、市場分析ページ「Gold News」を編集しています。また、Forbeなどの主要金融分析サイトへ定期的に寄稿すると共に、BBCに市場専門家として定期的に出演しています。その市場分析は、英国のファイナンシャル・タイムズ、エコノミスト、米国のCNBC、Bloomberg、ドイツのDer Stern、FT Deutshland、イタリアのIl Sole 24 Ore、日本では日経新聞などの主要メディアでも頻繁に引用されています。

弊社現職に至る前には、一般投資家へ金融投資アドバイスを提供するロンドンでも有数な出版会社「Fleet Street Publication」の編集者を務め、2003年から2008年までは、英国の主要経済雑誌「The Daily Reckoning]のシティ・コレスポンダントを務めていました。

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