ニュースレター(2024年1月5日)重要指標を経て政策金利引き下げ観測後退の中で金価格は堅固に推移
明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。
さて、私は前週休暇をいただいていましたので、本日先週のニュースレターをお届けします。なお、1月の3週間は日本に入っていますので、ロンドン便りを除いた簡易的なニュースレターをお届けしますことをご了承ください。
週間市場ウォッチ
前週金曜日のLBMAのPM価格の金価格はトロイオンスあたり2063ドルと、前々週の金曜日のLBMA価格のAM価格(午前10時半)から0.06%高で4週連続の上昇で史上最高値をつけた12月4日以来の高さとなっていました。この間前週金曜日のLBMA銀価格は、前々週のLBMA価格(午後12時)から3.40%安のトロイオンスあたり22.98ドルと2週連続の週間の下げとなっていました。前週金曜日のLBMAのPMプラチナ価格は、前々週の金曜日のLBMAのAM価格から4.97%安のトロイオンスあたり956ドルと週間の下落となっていました。パラジウム価格は、前々週のLBMAパラジウムAM価格と比較して、前週金曜日のLBMAのPM価格では7.06%安のトロイオンスあたり1040ドルと2週連続の週間の下落となっていました。
年間の金・銀・プラチナ・パラジウム相場の動きの概要
前週貴金属相場は、前年12月のFOMC後に急激に広がったFRBによる今年の利下げ観測が行き過ぎたことへの調整もあり、金は上値を抑えられて前々週の水準を維持し、銀とプラチナとパラジウムは、中国の経済低迷に加えて、米経済のソフトランディングへの懸念もあり、全般下げて終えることとなりました。
そのために、一週間前には9割がた3月に利下げが行われるという観測が、7割へと下げていることが、CMEのFedWatchツールでも見えています。そこで、今週のチャートとして下記に添付します。
今週の金相場の動きと背景について
お正月の休暇明け2日の金相場は、前年末にFRBによる早期の利下げ観測が広がる中で上昇した12月4日の史上最高値のトロイオンスあたり2143ドルに次ぐ12月28日の2088ドルには至らなかったものの、2078ドルまでアジア時間に上昇していました。
しかしその後、ドルと長期金利が上昇する中で、上げ幅を削って2060ドルへ下げて終えていました。これは、前週FOMC議事録、米雇用統計などの重要指標を前に、進みすぎたFRB利下げ観測に調整が入っていた模様です。
3日金相場は前日に続き長期金利とドルが強含む中でトロイオンスあたり2030ドルまで一時下げた後に、2042ドルで終えていました。
同日は、米FOMCの議事要旨が発表され、今年の金利引き下げに慎重な内容で、データ次第では利上げもあるという、市場の予想以上のタカ派内容で、先の動きの背景となっていました。
また、同日発表の市場注目の米雇用動態調査(JOLTS)求人件数は前回修正値885.2万件と予想885万件を若干下回って2年ぶりの低さの879万件で、ISM製造業景況指数も予想を多少上回っていたことで、米経済の底強さを示していたことも、FRBが利下げを急がないとの解釈となったようです。
4日金相場は、トロイオンスあたり2050ドルまで上昇した後に、米国指標が良好であったことで、上げ幅を失って2039ドルまで下げた後に、2044ドルで終えていました。
この米指標は、金曜日の雇用統計の先行指標とも見られているADP全国雇用者数で、予想の11.5万人を上回る16.4万人で、前回修正値の10.1万人も上回っていました。
5日金相場は、同日の発表の米雇用統計とISM非製造業景況後にトロイオンスあたり40ドルほど上下する神経質な動きをした後に2045ドルと前週終値からは下げて終えていました。
米雇用統計においては、非農業部門雇用者数が共に前回修正値の17.3万人と予想の17万人を上回って21.6万人となっていました。また、同時に発表された失業率は3.7%と横ばいで、平均時給は予想を上回って前年同月比4.1%、前月比0.4%と米労働市場の底強さを示唆していました。
そこで、ドルと長期金利が上昇して、金は25ドルほど一時押し下げられたものの、その後発表されたISM非製造業景況指数が予想を下回っていたことで、米経済のソフトランディングへの懸念もあり、ドルと長期金利が下げに転じたことで、金は下げ幅を失うこととなりました。
その他の市場のニュ―ス
- コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、週末に1月2日のデータが発表され、正月休暇の後に金価格が引き続きFRBの翌年の金利引き下げ観測の広がりで上昇する中で、金を除く全ての貴金属で強気ポジションを2週ぶりに減少させていたこと。
- コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、1.5%増で428トンと11月末以来の高さとなっていたこと。価格は0.09%安でトロイオンスあたり2067.65ドルと、前週のLBMA価格では史上最高値の2069.40ドルから下げていたこと。
- コメックス銀の先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、6.3%減と2週ぶりに減少して2481トン。価格も0.37%安のトロイオンスあたり23.95ドル。
- コメックスのプラチナ先物・オプションのネットポジションは、72%減の7.3トン。価格は1.23%高でトロイオンスあたり988ドルと6月半ば以来の高さ。
- コメックスのパラジウム先物・オプションは引き続きネットショートで38%増の21.8トンと12月半ば以来の高さ。価格は6.2%安で1101ドル。
- 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、前週1週間で9.5トン(2.5%)減と8月半ば以来の大幅な週間の減少で869.60トンと11月初旬の引くさへと減少。
- 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、前週週間で3.7トン(0.9%)減と9月末以来の大きな減少量で394.87トンと2週連続の週間の減少で2020年4月初旬以来の低さ。
- 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週92.68トン(0.68%)減と13,510.43トンと前年12月初旬以来の低さ。
- 金銀比価は、前週86台半ばで始まり88半ばへ上昇して終える。これは、前年3月半ば以来の高さ。2023年年間の平均は83.27。5年平均は82.71。(数値が高いと銀の割安傾向で、低いと銀割安傾向が解消されたこととなる。)
- プラチナの金と差であるプラチナディスカウントは、前週1080ドルで始まり1087ドルと12月半ば以来の高さで終える。2023年の平均は975で、5年平均は787ドル。
- プラチナとパラジウムの差であるプラチナディスカウントは117ドルで始まり75ドルと12月半ば以来の低さで終える。2023年平均は371ドルで、2022年ウクライナ戦争でパラジウム価格が高騰していた前年1153ドルから急落。5年平均は924。
- 上海黄金交易所(SGE)は、週平均は29ドルと8月初旬以来の低さで、前々週の32ドルから下げていたこと。2023年平均は29ドルと2022年の平均の11ドルから大きく上昇していたこと。これは需要増もあるものの、中国中銀による輸入許可が制限されていることも要因。(ロンドン価格と上海価格の差:プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示すものの、中国中銀の金輸入制限で今年9月に急上昇している)コロナ禍を含む過去5年間の平均は5.6ドル。
- コメックスの先物・オプションの週間の平均取引量は、今週前週平均比で、金は62%増で前年12月初旬以来の高さ、銀は61%増と前年クリスマス休暇前以来の高さ、プラチナは12%減で10月末以来の低さ、パラジウムは37%増で前年12月半ば以来の高さ。
- 金と実質金利(米10年物物価連動債)の相関関係は11月27日に負の相関関係となり、前週金曜日に-0.76と強めていたこと。(負の相関関係は-1の場合二つが全く相反する動きをすることを示す。)ドルインデックスと金は11月21日から負の相関関係へ転換して、前週金曜日に-0.80と関係を強めていたこと。S&P500種と金の相関関係は正の相関関係に11月27日に転換し、0.60と関係を強めていたこと。
来週の主要イベント及び主要経済指標
前週は正月明けにFOMC議事録、米雇用統計などと重要指標が発表され市場は動いていました。今週は木曜日の米消費者物価指数へ市場注目は注目し、その他米新規失業保険申請件数や金曜日の米卸売物価指数なども、FOMC高官の発言と共に、FRBの近い将来の政策金利予想に絡み重要となります。
詳細は主要経済指標(2024年1月8日~12日)でご覧ください。
ブリオンボールトニュース
今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
- 主要経済指標(2024年1月1日~5日)今週の結果をまとめています。
- 主要経済指標(2024年1月8日~12日)来週の予定をまとめています。
なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。
ロンドン便り
前年末から日本に入っていますので、ロンドン便りはお休みさせていただきます。