ニュースレター(2023年9月15日)中国の金価格が急騰する中で、円建ては史上最高値を更新し、ドル建ては週間の上げを記録
週間市場ウォッチ
今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1928ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午前3時)から0.02%高と週間の上げとなっています。この間銀価格は、本日12時のチャート上の価格は前週のLBMA価格(午後12時)から0.3%高のトロイオンスあたり23.07ドルと週間の上げで、前週の3週ぶりの低さから上昇しています。プラチナは本日午後2時の弊社チャート上では前週金曜日のLBMAのPM価格から3.3%高のトロイオンスあたり930ドルと週間の上げで、前週の8月半ば以来の低さから上昇しています。パラジウム価格は、前週のLBMAパラジウムPM価格と比較して、本日午後2時の弊社チャート上での価格は5.7%高のトロイオンスあたり1276ドルと3週ぶりの週間の上げで8月末以来の高さとなっています。
金・銀・プラチナ・パラジウム相場の動きの概要
今週貴金属価格は、水曜日に発表された卸売物価指数が予想を上回り、大きくFRBの政策を変えるものではないとは判断されているものの、政策金利は高く維持されるであろうという判断で、本日まで頭の重い動きとなっていましたが、本日発表された米インフレ予想が2年以上ぶりの低さであったことで上昇をして終える傾向となっています。
また、本日発表された中国の経済指標は全般良好であったことも、工業用途需要の高い、銀、プラチナ、パラジウムを筆頭に、貴金属全般の価格を押し上げている模様です。
そして、本日ロンドン時間夕方には、円が対ドル弱含み、グラムあたり9172円と9月5日につけた9165円の史上最高値を更新しています。
なお、今週の貴金属市場のニュースは、中国上海黄金交易所の人民元建て金価格が世界指標のロンドン価格と120ドルを超えて上回るという、かつてない現象が起きていたことからも、このニュースが大きく伝えられていました。
通常現地価格とロンドン世界指標との差は、現地の需要の高まりを示めすとされていますが、今回の動きは、中国政府が人民元安を防ぐ目的で金の輸入ライセンスを制限したことで、供給不足からもこのような規模となったと伝えられています。
本日、このプレミアムは96ドルまで下げていますが、今回の動きが見れるチャートを下記に添付します。ちなみに、2020年はパンデミックで中国が国内をロックダウンにしたことで、人々が金を購入することができず、需要が激減したことで中国価格は世界指標比マイナス80ドルまでつけていました。しかし、このような特殊な期間を除くと過去5年で9ドルのプレミアムが通常とみられていました。
ちなみに、上海黄金交易所の銀価格も今週に入り急騰し、世界指標を昨日は11%上回る(金は6.4%)など、同様な動きが見られています。
今週の金相場の動きと背景について
週明け月曜日金相場は、土曜日の日銀の植田総裁の金融引き締めの可能性に触れたコメントと中国中銀の為替への投機的動きをけん制する声明で日本円と中国人民元が対ドル強含み、相対的にドル安となったことがサポートをして、ドル建て金価格は上昇してトロイオンスあたり1921ドルで終えていました。
そのような中で、日本円建て金相場は円が強含んだことでグラムあたり9062円と、先週の史上最高値からは1.1%と大きく下げ、人民元建て金相場はプレミアムの上昇からもグラムあたり467.92元と史上最高値をつけていました。
火曜日金相場は、翌日の米消費者物価指数の発表を待つ中で、ドルが強含み、トロイオンスあたり1907ドルと8月25日以来の低値をつけて1912ドルへ戻して終えていました。
ドルインデックスが8営業日連続で上昇するのは2005年以来とのことですが、翌日の消費者物価指数は前年同月比で3.6%と前月の3.2%を上回ることが予想されており、それを見越した動きでもあったようです。
水曜日金相場は、市場注目の米消費者物価指数(CPI)の発表後に神経質な動きをした後に、前日の終値から下げてトロオンスあたり1909ドルで終えていました。
CPIは、ヘッドライン数値は前月の3.2%と予想の3.6%を上回る3.7%であったものの、変動の激しい食料品とエネルギーを除くコアにおいては、4.3%と前回の4.7%から下げて予想と一致していました。
そこで、発表後はこの数値をどのように解釈するかでドルインデックスと長期金利が神経質に動く中で、価格は上下トロイオンスあたり6ドルほど動いていました。
しかし、FRBの政策に大きく影響を与えるものではないという判断とはなった模様で、来週のFOMCでの政策金利据え置き予想は、発表後前日から5%増加して97%となり、11月の据え置きも5%増加して61%となっていました。
木曜日金相場は、市場注目の米経済指標発表後トロイオンスあたり1901ドルまで一時下げた後に、1910ドルへ戻して終えていました。
同日発表された米卸売物価指数は、前月比0.7%と予想の0.4%を上回り、8月の小売売上高も前月比0.6%増と予想0.1%増を超えていました。
そこで、FRBのさらなる利上げと長期の高い金利維持観測からも、ドルが一月ぶりの高さで、長期金利が3週間ぶりの高さへ上昇したことで、金は押し下げられてた後、ドルと長期金利がその上げ幅を維持する中でも、緩やかに金は戻していました。
なお、同日発表された欧州中央銀行の政策金利は10会合連続で引き上げられ、0.25%の利上げで主要政策金利は4.5%としていました。
なお、今週史上最高値の更新を続け、世界指標との価格差が拡大している上海黄金交易所の金価格は、同日も史上最高値のグラムあたり474元をつけドル建てに換算するとトロイオンスあたり2029ドルとなり、ロンドンとの価格差は121ドルと史上最大と、多くの市場関係者もかつてない現象と注目していました。
本日金曜日金相場は、6か月ぶりの高さへ前日上昇していたドルインデックスが弱含む中で長期金利はほぼひと月ぶりの高さを維持してるものの、トロイオンスあたり1930ドルへと一時上昇して、その後1927ドル前後を推移しています。
本日発表された米経済指標のニューヨーク連銀製造業景況指数はマイナス10予想が多少ながらもプラス1.9の結果で、鉱工業生産も0.4%と予想の01%を上回っていましたが、ミシガン大学消費者態度指数は67.7と予想の69.1を下回っていました。
そのような中で、ミシガン大学の消費者態度指数の中のインフレ予想数値は2年以上ぶりの低さに下げていたことは、ドルを弱めて金を押し上げてはいる模様です。
なお、本日発表の中国の鉱工業生産と小売売上高はともに予想を上回っていたことは、中国の経済停滞懸念が高まっていたことからも、貴金属価格のサポートとなっている模様です。
なお、本日日本円が対ドル下げて1ドル147.50円を超えていることからもいることからも、円建て金相場はグラムあたり9172円と9月5日の9165円を超えて史上最高値を更新しています。
その他の市場のニュ―ス
- コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、前週末に最新データの9月5日分が発表され、原油価格上昇等でインフレ懸念からも米長期金利が上昇していた際に、金を除きすべての貴金属で強気ポジションを減少させていたこと。
- コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、前週から14%増で206トンと2週連続で増加していたこと。この間建玉は、1.7%減と2週連続で減少し、価格は前週比0.2%安でトロイオンスあたり1926.10ドルと下げていたこと。
- コメックス銀の先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、3週連続でネットロングであったものの、20%減の2174トンと、前週の7月25日以来の高さから下げていたこと。価格は2.77%安でトロイオンスあたり23.55ドルと前週の8月1日以来の高さから下げていたこと。
- コメックスのプラチナ先物・オプションのネットロングは、2週連続でネットロングで、2.9%減の11.2トンと、前週の6月20日以来の高さから下げていたこと。価格は前週比3.47%安でトロイオンスあたり945ドルと2週ぶりの下げで、前週の7月18日以来の高さから下げていたこと。
- コメックスのパラジウム先物・オプションはネットショートで、12.5%増の32.92トンと増加していたこと。価格は前週比1.55%安でトロイオンスあたり1205ドルと2週連続で下げて昨年11月末以来の低い水準。
- 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までの1週間で6.9トン(0.8%)減で879.70トンと2020年1月16日以来の低さで、2週連続で週間の減少の傾向。
- 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までに週間で0.42トン(0.1%)減で427.89トンと、2020年5月6日以来の低さへ下げて、8週連続の週間の減少傾向。
- 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までに週間で1.43トン(0.01%)減で13,675.63トンで、9月7日以来の低さで、前週3週ぶりに週間の増加後、再び週間の減少傾向。
- 金銀比価は、今週83台半ばで始まり、本日83前半と7営業日ぶりの低さへ下げて終える方向。5年平均は82.24。(数値が高いと銀の割安傾向で、低いと銀割安傾向が解消されたこととなる。)
- プラチナの金と差であるプラチナディスカウントは、1023ドルで始まり、本日999ドルと8営業日ぶりの低さへ下げて終える傾向。2022年平均は839.64ドル。2021年平均は708.82ドルで5年平均は564.76ドル。
- プラチナとパラジウムの差であるプラチナディスカウントは306ドルで始まり、昨日358ドルへとひと月ぶりの高さへ上昇後に、本日347ドルと下げて終える終える傾向。2022年の平均は1153ドル。ロシアが世界の4割を供給することからもロシアのウクライナ侵攻で2000ドルを超えてディスカウントが上昇。2021年の平均は1305ドル。5年平均は918.27。
- 上海黄金交易所(SGE)のプレミアムは、人民元建て金価格が史上最高値を5営業日連続で更新する中で、週平均で93ドルとSGEでFix価格を公表を始めた2016年以来の最高値へ上昇していること。木曜日の121ドルは一日あたりのプレミアムとしては史上最高。2022年の平均は11.03ドルと、前年の4.94ドルを大きく上回る。(ロンドン価格と上海価格の差:プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)コロナ禍で特殊な動きをした2020年を除く5年平均は9ドル。
- コメックスの先物・オプションの週間の平均取引量は、木曜日までで前週平均比で、金は9%増、銀は16%減で、プラチナは8%増と10週ぶりの高さ、パラジウムは20%減。
- 金と実質金利(米10年物物価連動債)の相関関係は今週-0.467へと上げて、負の相関関係を前週の7月14日以来の低さから強めていたこと。(負の相関関係は-1の場合二つが全く相反する動きをすることを示す。)ドルインデックスと金は今週正の相関関係(二つの数値が同じ方向へ動く)であるものの、0.07と弱め、S&P500種と金の相関関係も正でありながら、0.69へと8月初旬以来の弱さとなっていたこと。
来週の主要イベント及び主要経済指標
今週は水曜日の米国消費者物価指数と木曜日の欧州中央銀行の政策金利発表に市場は注目しながらも、内容的には大きく市場を動かすものとはなりませんでした。
来週は水曜日にFOMC後の政策金利発表が行われ、最も重要なイベントとなりますが、その他、木曜日のイングランド銀行と金曜日の日本銀行の政策金利発表も為替市場を動かす内容の場合は金市場へも影響が出る可能性があります。
その他、火曜日のユーロ圏消費者物価指数、水曜日の英国の消費者物価指数、木曜日の米新規失業保険申請件数、金曜日の主要国の製造業とサービス部門のPMIなども市場を動かす可能性があります。
詳細は主要経済指標(2023年9月18日~22日)でご覧ください。
ブリオンボールトニュース
今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
- 主要経済指標(2023年9月11日~15日)今週の結果をまとめています。
- 主要経済指標(2023年9月18日~22日)来週の予定をまとめています。
- 金価格ディリーレポート(2023年9月11日)日本と中国の中央銀行が通貨安けん制に入る中、金価格は通貨建てで異なる動きとなる
なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。
ロンドン便り
今週英国では、モロッコの地震やレバノンの洪水の被害について、国民保健サービス(NHS)のウェイティングリストが記録的高さになっていること、そしてフランスで行われているラグビーワールドカップやサッカーのユーロ2024年の予選等について大きく伝えられています。
そのような中で、2001年のアメリカ同時多発テロ事件以来、毎年9月11日前後にチャリティーイベントで寄付を集めているBGCチャリティーデーについて伝えられていましたので、ご紹介しましょう。
BGCは、ロンドンとニューヨークを本社を持つ、大手金融仲介会社で、2001年のアメリカ同時多発テロ事件で亡くなった658人の同僚と61人の関連会社の従業員のために、2005年から毎年9月11日前後の平日をチャリティーデーとして、このチャリティーに賛同する多くの有名人と共に寄付を募る活動をしています。
同日は、BGCの顧客からの注文を電話で受けつつ寄付を求めますが、過去にはヘンリー王子や映画俳優のマーゴット・ロビーやデミアン・ルイスや、イングランドサッカーチームのキャプテンのハリー・ケイン選手等多くの有名人がこの活動に参加しています。
今年はロンドン市長のサディク・カーン氏やBBCのプレゼンテーターの多くが参加していました。
昨年までで総計1億9200万ドル(約284億円弱)を集め、アメリカ同時多発テロ事件で亡くなった同僚の遺族やその地域の小さなチャリティー団体へ寄付をしているとのこと。
そして、BGCの最高執行責任者は「チャリティーデーというのは、2つの目的があります。」と述べ、「それはまず朝起きて、この日に何が起こったかを思い出すこと。そして、オフィスに入ったら、チャリティーにできるだけ多くのお金を寄付しようとみんなが力を合わせるということです。」と述べていました。
英国は古くからチャリティー団体の活動が活発で、日本の東日本大震災の時も多くの人々が英国赤十字などを通して寄付をしていました。
今週モロッコの地震やレバノンの洪水の被害が伝えられる中、早くも英国では寄付金を募る活動が始まっています。
このように弱者を想い、それぞれができる範囲で手を差し伸べる文化は、子供のころから学校や地域での活動に参加することで培われており、これからも、英国で長く続いていくことでしょう。