金市場ニュース

ニュースレター(2023年2月17日)金価格はインフレの根強さでFRBの長期引き締め観測が広がり4週連続の下げへ

週間市場ウォッチ

今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1829ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午前3時)から1.67%安で4週連続の下げで1月初旬以来の低さとなっています。この間銀価格は、本日12時のチャート上の価格は前週のLBMA価格(午後12時)から4.00%安のトロイオンスあたり21.23ドルと4週連続の週間の下げで昨年11月末以来の低さとなっています。プラチナは本日午後2時の弊社チャート上では前週金曜日のLBMAのPM価格から5.39%安のトロイオンスあたり966ドルと6週連続の週間の下落で11月初旬以来の低さとなっています。パラジウム価格は、前週のLBMAパラジウムPM価格と比較して、本日午後2時の弊社チャート上での価格は4.89%安のトロイオンスあたり1477ドルと2019年8月以来の低さとなっています。

金・銀・プラチナ・パラジウム相場の動きの概要

今週貴金属相場は、今月初めの予想を超えて好調であった米雇用統計でFRBによるより長い金利引き上げ観測が、今週の米消費者物価指数や卸売物価指数が予想を上回る高さを維持していることで更に広がり、全般押し下げられることとなりました。

このような中、金利を産まない貴金属の弱さに加えて、長期にわたる利上げによるリセッション懸念からも、工業用途の多い銀、プラチナ、パラジウムは金を上回る下げ幅を記録することとなりました。

ちなみに、近い将来のリセッションを意味するとされているイールドカーブの逆転は今週一時1981年以来の大きさとなっていましたので、今週のチャートとして、米国10年物と2年物の金利差を表すチャートをお届けしましょう。下記のチャートの影の部分はリセッションが起きた時期を示し、イールドの逆転が起きた後にリセッションが起きていることを見ることができます。

米2年物と10年物国債の利回りの差の推移 出典元 セントルイス連銀

今週の金相場の動きと背景について

週明け月曜日は、翌日の米消費者物価指数を待つ中で、ドルと長期金利が5週ぶりの高さを維持する中で、金相場は頭の重い動きでトロイオンスあたり1856ドルへと下げて終えていました。

そのような中で、日本円建て金相場は日銀総裁人事をめぐり日本円が為替市場で動いたことで、ロンドン時間昼過ぎには上昇後に上げ幅を失って前日終値比変わらずgあたり7886円で終えていました。

この動きは、次期総裁に植田和男しが推薦されると伝えられ、当初は前回伝えられていた現雨宮副総裁よりもタカ派的という判断で円高となりましたが、その後上田氏が現行の金融政策を周到するべきと述べたと伝えられたことで、円が上げ幅を戻したことに反応したからでした。

火曜日金相場は、市場注目の米消費者物価指数が予想を上回ったことを受けて、FRBの利上げが続く観測が広がり、米長期金利が上昇し、トロイオンスあたり1843ドルと1月初旬以来の低さへ下げた後に1856ドルまで戻して終えていました。

米消費者物価指数は予想の6.2%を上回る6.4%で前月の6.5%を若干下回るものとなっていました。そこで、米10年物国債利回りは1月上旬以来の高さ、また政策金利の動きに敏感な2年物国債利回りは10ベーシスポイント近く一時上昇し、再び昨年11月以来の高さへと上昇することとなりました。

先の指標に加え、FRB高官のタカ派的コメントは同日も続き、3月と5月の利上げに続き、6月のFOMCでの利上げの観測もほぼ5割以上の確率とひと月前の6.5%、一週間前の40%を割る水準から増加していました。

水曜日金相場は、ドルと米長期金利が上昇する中でトロイオンスあたり1835ドルと前日終値から更に下げて、今年の上げ幅をほぼ失う水準へ下げていました。

これは、同日発表された米小売売上高とニューヨーク連銀製造業景気指数がともに予想を上回って米経済の強さを示したことで、FRBの長期の利上げ観測が広がったことからでした。

この間、米株価はゴルディロックス経済(熱くもなく冷たくもない適温相場)観測もあるようで、上昇をしていました。

木曜日金相場は、トロイオンスあたり1819ドルへと前日の下げ幅をさらに一時広げていましたが、多少下げ幅を取り戻して1832ドルで終えていました。

同日は市場注目の米卸売物価指数が前月比0.7%と予想の0.4%を上回り、2年ぶりのペースの上昇率で、新規失業保険申請件数もまた予想を下回る労働市場の需給引き締まりを示すもので、FRBの利上げ継続の観測が広がっていました。

そこで、2年、10年物国債利回りは前日から上昇していたものの、米株価は下げ、ドルインデックスも多少弱含んでいたことが金をサポートしていた模様です。

なお、同日もFRB高官のハト派的コメントは伝えられており、共に今年のFOMCの投票権はもっていないものの、メスター・クリーブランド連銀総裁とブラード・セントルイス連銀総裁はより大きな(0.5%)の利上げ幅の可能性が示唆されていました。

本日金曜日金相場は、ロンドン時間昼過ぎまで前日比下げてトロイオンスあたり1819ドルを一時つけたものの、その後上昇に転じて前日終値を多少上回る1837ドル前後を推移しています。

この間ドルインデックスは前日終値比上昇しているものの、午前中の上げ幅を削っており、米長期金利もほぼ前日終値の水準まで上げ幅を削っているのが金をサポートした背景の模様です。これは、米国が明日から3連休でポジション調整も行われている模様です。

また、1800ドル近くでは買い需要もあるようで、実際今週中国においては需要の高さを表す、ロンドンの世界指標と現地価格の差が、昨年11月以来の大幅なプレミアムをつけています。

ドル建て金相場のチャート 出典元 ブリオンボールト

その他の市場のニュ―ス

  • コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、前週同様に派生商品の取引の管理、決済、取引などを行っているION社がサイバー攻撃を受けたことで前前週末発表のデータとともに前週分も未だ公開されていないこと。
  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに週間で0.3トン(0.03%)増で921.08トンと、5週連続の週間の増加傾向。
  • 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までに週間で2.57トン(0.57%)減で447.92トンと、2020年6月半ば以来の低さで、2週連続の週間の下落傾向。
  • 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までに週間で32.89ン(0.22%)増で15,080トンで、昨年10月末以来の高さで、2週連続の週間の増加の傾向。
  • 金銀比価は、今週火曜日に84台で始まり、本日ほぼ86と上昇。5年平均は82.24。(数値が高いと銀の割安傾向で、低いと銀割安傾向が解消されたこととなる。)
  • プラチナの金と差であるプラチナディスカウントは、881と921の間を推移。2022年平均は839.64ドル。2021年平均は708.82ドルで5年平均は564.76ドル。
  • プラチナとパラジウムの差であるプラチナディスカウントは、水曜日に600を割り、3年半ぶりの低さ。2022年の平均は1153ドル。ロシアが世界の4割を供給することからもロシアのウクライナ侵攻で2000ドルを超えてディスカウントが上昇。2021年の平均は1305ドル。5年平均は918.27。
  • 上海黄金交易所(SGE)は、人民建て金価格が1月初旬以来の低さへ下げる中で、週間の平均が31ドルと、前週の18ドルから上昇して、昨年11月初旬以来の高さ。2022年の平均は11.03ドルと、前年の4.94ドルを大きく上回る。(ロンドン価格と上海価格の差:プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)コロナ禍で特殊な動きをした2020年を除く5年平均は9ドル。
  • コメックスの先物・オプションの週間の平均取引量は前週から金は13%増、銀は12%減、プラチナが20%増、パラジウムは7%増で昨年2月末にロシアがウクライナに侵攻した週以来の高さの水準。

来週の主要イベント及び主要経済指標

来週は、FRBがインフレデータとして注目する米個人消費支出PCEコアデフレーターが金曜日に発表され、FRBの今後の政策金利を予想する上でも、市場は注目することとなります。

その他、木曜日にはユーロ圏の消費者物価指数と米国のGDPも発表され、これらも今後の中央銀行の金融政策に影響を与えるために重要となります。

その他詳細は、主要経済指標(2023年2月20日~24日)でご覧ください。

ブリオンボールトニュース

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。

ロンドン便り

今週英国では、継続しているストライキについて、ブレグジット後の英国領北アイルランドとEU内であるアイルランド間の関税を巡る問題の動き、そして今月始まったラグビーの6カ国対抗試合についても大きく伝えられています。

そのような中で、スコットランド自治政府のスタージョン首相が水曜日に突然辞任し、この件についても大きく伝えられていますので、ご紹介しましょう。

ニコラ・スタージョン首相は、英国からスコットランドの独立を目標に掲げる地域政党のスコットランド民族党(SNP)の党首で、スコットランド自治政府と議会が設置された時から議員を務め、その後16年間は自治政府の副首相と首相を歴任してきた、スコットランドを代表する政治家でもあります。

今回の辞任は突然のことで、メディアは全般「予想外」と伝えていました。

水曜日に行われた記者会見で話された理由をまとめると、パンデミックを経て、精神的にも体力的にも、自分が望む常に全力で首相の職を続けていくことが難しいと考えたことからとのことで、直近の政治的プレッシャーが理由ではないとのこと。

スタージョン首相はスコットランドでは女性初の首相で、その任期も8年を超えて最長でもあり、パンデミックの間は、ほぼ毎日昼過ぎに記者会見などで政府対応等の状況説明を行っていました。

首相就任がスコットランドの独立が否決された住民投票後で、それ以来独立を目指して運動を継続し、今秋2度目の住民投票を実施する計画であったものの、英国中央政府の同意が本来必要である住民投票を同意なく実施することを自治政府が求めた訴えを最高裁が昨年却下し、独立運動は行き詰まっていました。

そして、直近では英国中央政府同様に、パンデミックによる国民保健サービスの人手と資金不足のための診療遅れの問題、教職員ストライキ等の問題が山積みになっていました。

また、トランスジェンダーの受刑者が入る刑務所の管理問題と性別変更手続きをスコットランド自治政府が簡素化しようとした際に英国中央政府が法制化を阻止するなど、これらに関するスタージョン首相の批判はスコットランド内でも高まっていたようです。

ボリス・ジョンソン元首相を含む多くの著名な政治家とディベートでも譲ること無い論客で、パンデミック中の日々の記者会見での冷静で落ち着いた対応は、スコットランドの独立を望まない人々以外の信望も集めていたようで、直近の彼女の支持率はYouGovの調査では、未だに50%を超えていました。

次期自治政府首相は、第一党のスコットランド国民党の党首となり、この交代は6~8週間必要であることから、その間スタージェン首相は留任するとのこと。

突然の辞任であること、そして長年彼女がスコットランドの要職を務めてきたことからも、後任の目処は立っていないようですが、スタージョン首相を好む好まないに限らず、一つの時代が終わることになるのは間違いないようです。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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