ニュースレター(2023年1月27日)金相場は6週連続の週間の上昇と2022年8月の史上最高値以来の長さの上昇を記録
週間市場ウォッチ
今週金曜日午前10時半の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1924ドルと、前週金曜日のLBMA価格のAM価格(午前10時半)から0.02%安とほぼ前週と同水準ですが、5週ぶりの週間の下げとなっています。この間銀価格は、本日12時のチャート上の価格は前週のLBMA価格(午後12時)から0.5%安のトロイオンスあたり23.74ドルと2週ぶりの週間の下げとなっています。プラチナは本日午前10時半の弊社チャート上では前週金曜日のLBMAのAM価格から1.3%安のトロイオンスあたり1011ドルと3週連続の週間の下落となっています。パラジウム価格は、前週のLBMAパラジウムAM価格と比較して、本日午前10時半の弊社チャート上での価格は2.9%安のトロイオンスあたり1680ドルと3週連続の週間の下落となっています。
2022年の金・銀・プラチナ・パラジウム相場の動きの概要
今週貴金属相場は、LBMA価格ベースでは全て週間の下げとなっていますが、終値ベースでは金は6週連続の週間の上昇と、パンデミック下で史上最高値をつけた2020年8月以来の長さとなる中で、工業用途の需要の割合が6割の銀とプラチナ、8割を占めるパラジウムは週間での下げをつける傾向となっています。
この背景は、主要中央銀行の速いペースの利上げペースが減速する観測はある中で、リセッション懸念は高まっており、資産保全目的の金の需要が高まる中で、工業用需要減少の観測で、銀、プラチナ、パラジウム価格が下げている模様です。
なお、ドル建て金相場は9ヶ月ぶりの高さの水準を推移していますが、他の主要通貨建てでは、ぽんど建てでトロイオンスあたり1559ポンドは、昨年9月のトラス前政権の財源なき減税でポンド、英国債、英株式のトリプル安の際の史上最高値の1580ポンドから1.3%低い水準のみで、円建てにおいては、今週gあたり8122円と、昨年4月につけた史上最高値の8174円に迫っていました。そこで、今週のチャートは過去1年の日本円建て金価格をお届けしましょう。
ドル建て金相場が、FRBの早い利上げペースのドル高と長期金利上昇によって抑えられてきたのに対し、円建て金相場は日銀のマイナス金利継続スタンスによる日米金利差の拡大、ウクライナ戦争によるエネルギー価格高騰等によって、昨年10月には32年来の円安もあり、全般上昇して高い水準を維持しています。
今週の金相場の動きと背景について
週明け月曜日金相場は、FRB高官がFOMC前のコメントを発しないブラックアウト期間に入り、主要経済指標の発表もない中で、ドルが年初来の低さへ弱含み、長期金利は上昇に転じる中で、前週終値から更に上昇して9ヶ月ぶりの高さのトロイオンスあたり1930ドルで終えていました。
火曜日金相場は、ドルが再び7ヶ月ぶりの低さへ下げ、長期金利も若干下げる中で、トロイオンスあたり1942ドルへ一時上げた後に1937ドルへと上昇して終えていました。
ドルと長期金利が下げた背景は、同日発表された米製造業PMIとサービス業PMIはともに予想を上回っていたことでリセッション懸念が後退したこととされていました。
また、FRBが利上げ幅を0.25%へと減速するとの観測が広がる中で、ECBは0.5%の利上げが予想されていたことで、ユーロが対ドル強含んでいたことも要因であった模様です。
水曜日金相場はドルインデックスが7ヶ月ぶりの低値、米長期金利が前週達した4ヶ月ぶりの低い水準に近づく中で、トロイオンスあたり1945ドルとロンドン昼過ぎの1920ドルの低値から大きく上昇して終えていました。
同日は主要経済指標やイベントが無い中で、前日の米製造業とサービス部門PMIが欧州の指標に比べて低いものであったこと、翌日発表の米GDP、金曜日発表のFRBが注目するインフレデータの個人消費支出PCEコア・デフレータを前に警戒感でドルと長期金利が下げていました。
また、米債務上限問題で、共和党上院トップのマコネル院内総務が、史上初の米国債デフォルトを回避するためにはバイデン大統領と共和党のマッカーシー下院議長の合意が必要と、前日に今後の先行きの厳しさを示唆するコメントを出していたことからも、この懸念も背景にあるとも一部アナリストはコメントしていました。
木曜日金相場は、ドルインデックスと米長期金利が多少ながら上昇する中で、トロイオンスあたり1919ドルへと一時下げた後に1934ドルで終えていました。
この下げの背景は同日発表された市場注目の米第4四半期GDPが予想を上回り、米景気の減速懸念が和らぎ、FRBの利上げ減速観測が多少後退したことからでした。
なお、米第4四半期GDPは2.9%と予想の2.8%を上回り、米耐久材受注も予想を上回り、新規失業保険申請件数は予想を下回り、米リセッション入り観測を後退させるものとなっていました。
本日金曜日金相場は、市場注目のFRBが重視するインフレデータのPCEコアデフレーターの発表で予想通りインフレ鈍化が確認された後に一時1916ドルまで下げたものの、その後下げ幅を削って前週終値を0.3%上回る1930ドルへと上昇しています。
本日発表のPCEコアデフレーターは前年同月比4.4%と予想と同水準で、前月の4.7%から鈍化していました。
その他の市場のニュ―ス
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コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、前週火曜日1月17 日に欧州中銀の高官のタカ派的コメントや英国の良好な経済指標で、両通貨が強含み相対的にドルインデックスと米長期金利が数カ月ぶりの低さへ下げて貴金属価格が上昇する中で、プラチナを除く全ての貴金属でネットで強気ポジションを増加させていたこと。 -
コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、13%増の290トンと7週連続で増加して昨年4月末以来の高さとなっていたこと。ロングは6.5%増で昨年4月末の高さで、ショートは3.4%減で昨年4月半ば以来の低さ。建玉は前週から6.3%増で、昨年5月末以来の高さ。 -
コメックス銀の先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、前週比14%増減の4361トンと2週ぶりの増加。 -
コメックスのプラチナ先物・オプションは、ネットロングで30.6%減の26.3トンと昨年3月上旬以来の高さから3週ぶりの減少。 -
コメックスのパラジウム先物・オプションのネットショートであったものの、2.5%減で2.5トンと5週ぶりの低さ。 -
金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに週間で2.3トン(0.25%)増で919トンと、2週連続の週間の増加傾向。 -
金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までに週間で0.35トン(0.08%)増で452.4トンと、4週連続で週間の上昇。 -
銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までに週間で664ン(4.7%)増で14,936トンで、2週ぶりの週間の増加で、週間の増加量は2021年2月のSNSを通じて銀購入の波が起きたシルバースクイーズ以来の大きさ。 -
金銀比価は、今週81で始まり水曜日に82台へと昨年11月末以来の高さへ上昇して81台へ戻して終える傾向。2022年平均は83.39と前年の71.83からは増加。5年平均は82.24。(数値が高いと銀の割安傾向で、低いと銀割安傾向が解消されたこととなる。) -
プラチナの金と差であるプラチナディスカウントは、875と893の間で推移。2022年平均は839.64ドル。2021年平均は708.82ドルで5年平均は564.76ドル。 -
プラチナとパラジウムの差であるプラチナディスカウントは、685ドルで始まり633と2019年9月以来の低さへと木曜日に下げたものの本日656ドルへと上昇して終える傾向。2022年の平均は1153ドル。ロシアが世界の4割を供給することからもロシアのウクライナ侵攻で2000ドルを超えてディスカウントが上昇。2021年の平均は1305ドル。5年平均は918.27。 -
上海黄金交易所(SGE)は、今週中国が春節の休暇であるため休場中。前週は人民元建て価格が2020年9月以来の高さへ上昇する中で13.70ドルと昨年12月初旬以来の低さへ下げ、前前週の23.14ドルから減少。2022年の平均は11.03ドルと、前年の4.94ドルを大きく上回る。(ロンドン価格と上海価格の差:プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)コロナ禍で特殊な動きをした2020年を除く5年平均は9ドル。 -
コメックスの先物・オプションの週間の平均取引量は前週から金は12%増、銀は2%増で8週ぶりの高さ、プラチナが33%減で22週ぶりの低さ、パラジウムは2%減。
来週の主要イベント及び主要経済指標
今週は、本日のFRBがインフレデータとして注視する、ほぼ予想通りとなったインフレ減速が確認できた個人消費支出PCEコアデフレーターの数値を市場は注目していましたが、来週はFRBの金融政策発表が水曜日、欧州中央銀行とイングランド銀行が木曜日に行われ、これらが重要イベントとなります。
また、水曜日には米雇用統計の先行指標のADP全国雇用者数、金曜日には雇用統計が発表され、これらへも市場は注目することとなります。
その他詳細は、主要経済指標(2023年1月30日~2月3日でご覧ください。
ブリオンボールトニュース
今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
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主要経済指標(2023年1月23日~27日) 今週の結果をまとめています。 -
主要経済指標(2023年1月30日~2月3日 来週の予定をまとめています。 -
金価格ディリーリポート(2023年1月23日)金価格はタカ派的FRBのコメントと春節で中国が休場にも関わらず、ETFの流入がコメックスの強気に加わり9ヶ月ぶりの高さを維持 -
なぜ中国が2023年の金価格をサポートするのか
なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。
ロンドン便り
今週からロンドンに戻りましたが、英国で伝えられているニュースは、引き続き高インフレ、継続続いているストの数々について、そしてウクライナ戦争においては、ドイツ製の最新鋭の戦車の供給をドイツが承認するか、そしてしたことについて大きく伝えられていました。
そのような中で、本日は私が日本を訪問時に参加した日本貴金属マーケット協会(JBMA)主催のイベントについてお伝えしましょう。
このイベントは、JBMAが英貴金属コンサルタント会社のMetals Focus発行のウィークリーレポートの日本語版をローンチしたことを祝うものでしたが、パンデミック中に日本の貴金属業界の方々が集う機会がなかったために、企画されたものでした。
このイベントはMetals Focusとプラチナ業界の団体であるワールド・プラチナム・インベストメント・カウンシル(WPIC)がスポンサーで、日本取引所グループ、三井物産、住友商事、三菱マテリアル等の貴金属業界を代表する企業に加え、日経新聞、時事通信などのプレスの方々を含めて41団体の80名近い人々が参加していました。
3年ぶりに会う方々も多かったようで、皆さん和気あいあいと近況報告をされていましたが、私も日本の貴金属業界の方々にご挨拶をするよい機会をいただきました。
なお、このMetals FocusのウィークリーリポートやWPICが発信している数々のプラチナ関連レポートは下記のJBMAのサイトでご覧いただけます。
また、私も数回欧米の貴金属市場についてお話をさせていただいた、JBMAのYouTubeのチャンネルは下記のリンクでご覧いただけます。
貴金属専門市場の中心であるロンドンにおいては、5月に世界のプラチナ業界の方々が集うプラチナウィーク、年末には世界の金の業界の方々が集うLBMA(ロンドン貴金属市場協会)ディナー、そして、LBMA年次会議は毎年10月に昨年はリスボン、今年はバルセロナと場所を変えて開催されています。
しかし、日本で貴金属業界の方々が集うイベントが無かったことからも、今後も年に一度から二度このような機会を設けて、日本の貴金属市場の活性化に協力することができればとJBMAの方々は考えていらっしゃるようです。
そこで、私は次回以降も参加させていただくことになるかと思いますので、別途ご報告させていただきます。