金市場ニュース

ニュースレター(2022年9月2日)米雇用統計後に金相場は6週ぶりの低値から若干上昇

週間市場ウォッチ

今週水曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1713ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から2.2%安と、3週連続の週間の下落で引き続き7月27日以来の低さへ下げています。この間銀価格は、本日12時のチャート上の価格は前週のLBMA価格(午後12時)から6.7%安のトロイオンスあたり17.92ドルで3週連続の下げで2020年7月以来の低さとなっています。プラチナは本日午後2時の弊社チャート上では前週金曜日のLBMAのPM価格から4.2%安のトロイオンスあたり840ドルとやはり3週連続の下げで7月半ば以来の低さとなっています。パラジウム価格は、前週のLBMAパラジウムPM価格と比較して、本日午後2時の弊社チャート上での価格は6.5%安のトロイオンスあたり2013ドルと2週連続の下落となっています。

今週の金・銀・プラチナ・パラジウム相場の動きの概要

今週貴金属相場は前週末のジャクソンホール会議でのパウエルFRB議長のタカ派的コメント、そしてその後のFRB高官のそれを踏襲する、40年来のインフレを抑え込むための大幅な利上げとその金利水準を長期的に維持する必要があるというコメントが相次ぐ中で、ドルが20年来、2年物米国債利回りが15年ぶり、10年物国債利回りも2ヶ月ぶりの高さへ上昇することで、大きく下げることとなりました。

そこで、金利の上昇は金利を産まない金にとってネガティブであることからも、金ETFからの資金流出が前週末まで週間で10週連続で今週も金の最大規模と第2規模のETFは流出を続けるなど、金へのセンチメントが悪化することとなりました。

また、工業用途の割合が高い銀、プラチナ、パラジウムの最大消費国の一つである中国が四川州の大都市成都市をロックダウンし、また発表される同国の指標は経済停滞を示唆し、世界経済の停滞懸念も高まっていることも、これら貴金属相場をさらに押し下げていました。

そこで、銀は金を超えるペースで下げてトロイオンスあたり17.58ドルと2020年7月以来の低値となり、金銀比価が95を超えるなど2020年7月以来の金に対して割安水準となっていました。

なお、今週日本円は24年ぶりの対ドルで円安水準となっており、ポンド建ても対ドル大きく下げたことで、共に前週比多少ながらも0.6%上昇していました。

そこで、今週のチャートとして円建て金価格チャートを下記に添付します。

なお、円建て金価格と円安についてはその動きと背景をまとめていますので「円建て金が史上最高値水準を継続 - 20年ぶりの円安は金購入時期なのか」をご覧ください。円建て金価格チャート 出典元 ブリオンボールト

日々の金相場の動きと背景について

週末と英国祝日明け火曜日金相場は、ロンドン時間昼過ぎに発表された米国経済指標の米消費者信頼感指数や求人労働異動調査(JOLTS)が予想を上回っていたことで、トロイオンスあたり1721ドルまで一時押し下げられた後に1723ドルで終えていました。

これは、先の指標とその後のFRB高官のタカ派的コメントで、同日ロンドン午前中に多少落ち着いていたジャクソンホール会議でのパウエルFRB議長のスピーチがきっかけとなったより早いペースで長期的な金利引き上げ観測が再燃し、米2年物国債は15年ぶりの高さ、ドルが20年ぶりの高さへ再び強含んだことからでした。

水曜日金相場はロンドン時間午前中に1709ドルまで下げた後に、昼過ぎからその下げ幅をほぼ取り戻しトロイオンスあたり1723ドルをつけたものの、再び下げて1709ドルで終えていました。

この昼過ぎの上げは、同日の重要指標の米ADP全国雇用者数が予想の30万人を下回る13.2万人であったことで、ドルが弱含んだことが要因でした。

しかし、同日クリーブランド連銀のメスター総裁の「インフレ対処を巡る早急な勝利宣言は間違い。」また、「来年の早い時期までに政策金利を4%よりやや高い水準に引き上げ、維持する必要がある。来年の利下げは見込んでいない。」というタカ派的コメントが伝えられて、米長期金利とドルが強含んだことが金を更に押し下げることとなりました。

木曜日金相場は、心理的節目のトロイオンスあたり1700ドルを割り1688ドルと7月21日以来の低さへと下げて1697ドルで終えていました。

この間米主要株価指標は5営業日連続で下げており、ドルインデックスと長期金利が上昇していることから金は押し下げられ、1700ドルを割ることでさらなる下げが起きていました。

同日の経済指標では新規失業保険申請件数が予想を下回り、ISM製造業景況指数が予想を多少ながら上回るなど、経済の底強さが見られたことも、FRBによる早い利上げペース観測を広げていました。

本日金相場は市場注目の米雇用統計後に上昇に転じ、ロンドン時間午後4時過ぎにトロイオンスあたり1717ドルと前日のほぼ6週ぶりの低値から30ドルほど上昇していました。

これは、米雇用統計の非農業部門雇用者数が31.5万人と予想の30万人を上回ったものの、失業率が前回と予想の3.5%から3.7%へと増加し、平均時給も前月比0.3%と予想の0.4%を下回ったことで強弱含む内容でドルと長期金利が弱含んだことが背景となりました。

そこで、FRBによる早い利上げペースと高い金利で維持されるという観測が多少後退した模様で、FEDWatchツールによる9月のFRBによる利上げ幅予想は75ベーシスポイントが前日の75%の確率から58%まで下げています。

過去1週間のドル建て金相場のチャート 出典元 ブリオンボールト

その他の市場のニュ―ス


  • コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、先週23日火曜日に週末のジャクソンホール会議でのパウエル議長のスピーチを待つ中で、すべての貴金属で強気ポジションが減少していたこと。

  • コメックス金の先物・オプションのネットポジションは前週に引き続き4週連続でネットロングであったものの、34%減の94トンと前週までの2週連続の減少であったこと。この間LBMA PM金価格は前々週比1.3%安で、建玉は前週比0.05%減。

  • コメックス銀の先物・オプションのネットポジションは、8週連続でネットショートで171%減の2,431トンと、3週ぶりの高さとなっていたこと。この間LBMA銀価格は5.9%安と2週連続の下げで2020年7月以来の低さ。

  • コメックスのプラチナ先物・オプションは、11週連続のネットショートで、そのポジションは160%増の14.6トンと2週ぶりの高さ。LBMA PMプラチナ価格は5.9%安と5週ぶりの低さ。

  • コメックスのパラジウム先物・オプションのネットポジションは3月29日の週以来ネットショートで、39%増の1.1トンと3月22日以来の低さから増加していたこと。この間LBMA PM価格は5.9%安。

  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに11トン(1.1%)減で973トンと2020年4月20日以来の低さで、5週連続の週間の減少の傾向であること。週間の増加は6月17日の週以来無し。

  • 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までに1.1トン(0.23%)減で496トンと、前週に週間で12週ぶりの残高増加した後、再び減少傾向であること。

  • 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までに93トン(0.64%)減の14,530トンと、4週連続の減少傾向となっていること。

  • 金銀比価は、今週92台後半で始まり、昨日96と2020年7月以来の高さへ上昇し、本日も95台とその水準を推移していること。2021年平均は71.83で、5年平均は80.35。(数値が高いと銀の割安傾向で、低いと銀割安傾向が解消されたこととなる。)

  • プラチナの金とのディスカウント(金との差)は、今週860台と前週の7月半ば以来の高さの870台からは下げていること。2021年平均は708.82ドルで5年平均は564.76ドル。

  • プラチナとパラジウムの差であるディスカウントは、今週1200ドル後半で始まり、本日1200台前半で終える傾向。ロシアが世界の4割を供給することからもロシアのウクライナ侵攻で2000ドルを超えてディスカウントが上昇。年初は1000ドルほど。

  • 上海黄金交易所(SGE)の週平均は、前週の15.30ドルから更に上昇して21.12ドルと2016年以来の高さ。これは、今週人民元が対ドル2020年8月以来の低さへ下げている中で堅固な動き。(ロンドン価格と上海価格の差 - プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)昨年平均は4.94ドル。コロナ禍で特殊な動きをした2020年を除く5年平均は9ドル。

  • コメックスの先物・オプションの週間の平均取引量は前週から金は24%増加でトロイオンスあたり1700ドルを割った昨日は5週ぶりの高さ、銀は7%減、プラチナは27%増、パラジウムは前週6ヶ月ぶりの高さであったことから52%減。

来週の主要イベント及び主要経済指標

今週市場は、本日の米雇用統計及びFRB高官のコメントに注目し、反応していますが、来週は木曜日に欧州中央銀行の政策金利発表が行われ、同日パウエル議長の発言も予定されており、重要イベントとなります。

また、その他欧州主要国のサービス部門PMIが月曜日と米国の同指標とISM非製造業景況指数が火曜日、水曜日にはユーロ圏GDPと米地区連銀経済報告、金曜日の中国消費者物価指数なども市場は注目することとなります。

詳細は主要経済指標(2022年9月5日~9日)をご覧ください。

ブリオンボールトニュース

ブリオンボールトは5月20日から大英図書館で行われている「金(Gold)」のエキジビションのスポンサーをさせていただいています。ご興味があれば下記のリンクでご覧ください。

http://bl.uk/events/gold

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。

ロンドン便り

今週英国では、引く続きウクライナ戦争、ゴルバチョフ元大統領死去について、そして来週月曜日に決まる次期首相の最終候補者による選挙戦、またその主要な争点ともなっているエネルギー価格高騰などが大きく伝えられています。

そこで、本日が党首選投票の締め切りとなっていますので、現段階までの状況をお伝えしましょう。

この決戦投票は、リズ・トラス外相とリシ・スナク前財務相の一騎打ちで、16万人の保守党員による投票で党首が決まります。

決選投票の二人の候補に絞る保守党議員の最終票数は、トラス外相113票に対し、スナク前財務相が137票とリードしていました。

しかし、大手調査会社Politicoの最新の保守党員への調査では、トラス氏が59%で、スナク氏が32%、10%はいまだ決めかねているとのこと。

これは、同様に大手調査会社であるユーガブが17日までに行った調査のトラス氏が66%、スナク氏が34%の結果より差は縮まっているものの、ほぼ近いものとなっています。

エネルギー価格は10月から現在の水準から80%増となることから、新たな政権は準備ができ次第発表すると現政権は述べています。

そこで、最終候補者のエネルギー価格高騰に対する政策の違いを見ると、小さな政府を目指すトラス氏が減税を主として、サポートは全国民ではなく年金受給者や低所得者層などにターゲットを絞ること示唆しています。そして、エネルギー企業が価格高騰で得た利益に対する税金(Windfall tax)の可能性は否定し、エネルギー消費量の制限も否定しています。

それに対しスナク氏は、当初減税ではなくより弱者への直接的なサポートを中心とすべきとしていましたが、トラス氏のリードが広がる中で軌道修正をして光熱費の日本の消費税に当たる付加価値税(VAT)を一定期間廃止することと所得税の減税に前向きであることも発表しています。そして、Windfall taxやエネルギー消費量の制限も含めてあらゆる可能性を検討すべきとしています。

保守党議員の支持はスナク氏に劣っていたトラス氏が保守党員の中で優勢になった背景は、スナク氏が米投資銀行に勤務し、インドのIT大手の共同創業者の娘さんと結婚して、国会議員の中でも「最も裕福な一人」で一般国民の生活を知らないと見られていること、そして今だ保守党員の中で人気があるボリス・ジョンソン首相の退陣を辞任によって後押しした「裏切り者」と見られていることがあるようです。

トラス氏が首相となった場合、サッチャー氏、メイ氏に続く3人目の女性首相となります。

サッチャー元首相を尊敬しているというトラス氏が、サッチャー氏が疲弊していた70年代の英国を立て直したように、現在の英国が抱えるエネルギー危機、40年来のインフレ、ロシアや中国外交に「鉄の女」として手腕を振るうことができるのか興味深いものです。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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