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【金投資家インデックス】価格の上昇で1月に利益確定が進み金と銀の投資需要が減少

価格高騰で売却が増加し、新規顧客数は過去5年間で最少となっていました。
 
金投資需要は、新規顧客数において2016年以来最も低い1月となりました。
 
それは、世界10万人以上の個人投資家が37億ドル(4250億円)相当の資産を預けている、現物地金のオンライン市場を提供する世界有数のブリオンボールトにおいて、新規顧客数が1月に12月より減少していたことは稀なことであることからも見ることができました。
 
これは、ハイテク株の暴落と世界金融危機の中で10年間上昇した後の金の弱気相場が終了した2016年にも見ることができました。
 
一方、2022年1月の金の取引価格は、年間平均価格としては史上最高値を付けた2021年の平均価格を上回り、この水準より高い平均価格を付けた1月は過去1回のみです。
 
しかし、インフレ率が3~4十年来の高水準にあり、世界の株式市場はコロナ危機以来最も大きな下げ幅を記録し、ウクライナでの北大西洋条約機構(NATO)とロシアの紛争の脅威が現実的であるにもかかわらず、金の高値は利益確定を誘うと同時に、新規顧客を遠ざけたのでした。
 
そのため、全体の顧客による購入量と売却量を比較したところ、先月売却量が購入量を上回り、昨年末の顧客による金の総保管量は0.4%減少していました。
 
銀価格の値動きは、より大きなもので、その投資家の動きも金と同様なものとなっていました。ブリオンボールトの顧客は、1月に全体で購入量を上回る23トンを超える銀を売却し、年末の史上最高値であった総銀保管量の1.8%を売却していました。
 
それではなぜ、2022年の初頭に現物地金の魅力が薄れてしまったのでしょうか。
 
その一因は価格高騰に加え、強いボラティリティにあります。金は先月、安値から高値まで4.0%変動し、月平均のドル建て価格では1.7%上昇した。銀は、安値から高値までこの3倍の速さで変動し、最大で12.4%の利益を提供しました。ブリオンボールトの取引コストは、0.05%と低く、このような機会を利用して利益を即座に確定することができるのです。
 
また、他の資産におけるFOMO(Fear of missing out:取り残されることの恐れ)は、米国株と暗号資産の急落からの突然の反転からも、パンデミック中の利益を逃した投資家の興味を引いたことも要因の一つかもしれません。
 
明らかであることは、インフレはまだ金融市場を大きく動かしておらず、中央銀行が金利をより早く、速いペースで上げると脅すことに怯えており、それが 金利を産まない金や銀を持つ機会コストを引き上げているのです。
 
しかし、FRBが2022年に4~5回の利上げを行ったとしても、FRBが目標とする年率2.0%のインフレ率を大きく下回ることになり、FRB自身も今年と来年のインフレ率が目標を上回り、ドルの実質購買力がさらに失われると予想しています。
 
さらに、金利に関する新たなコンセンサスによってハイテクや暗号資産が急落する一方で、貴金属は堅調であり、売りはごくわずとなっています。
 
これは、既存の金・銀投資家、特にコロナ危機時に金や銀を初めて購入した記録的な数の投資家が、ポートフォリオの保険としての金銀の役割に強い信頼を寄せていることを示唆しています。
 
金投資家インデックスと月間平均金価格の推移 出典元 ブリオンボールト
 
1月は、本来ブリオンボールトを利用して金地金の保有を開始または増加させた顧客数は12月と比較して3.2%増加しましたが、既存の金保有者が先月の安値から高値への4.0%の変動と月平均1.7%の上昇を利用し利益確定を進めたことで、売り手の数は33.6%急増していました。
 
その結果、個人投資家の金現物へのセンチメントを表す金投資家インデックスは、前月の54.2から53.8に押し下げられていました。
 
50.0を超える数値は、買い手が売り手よりも多いことを意味し、この指数は、2020年3月にコロナ危機が始まった際に、10年ぶりの高値となる65.9を記録していました。
 
銀投資家インデックスと月間平均銀価格の推移 出典元 ブリオンボールト
 
 
1月のドル建て銀価格は、安値から高値まで金の3倍の速さで急上昇し、12.4%の変動となり、月平均価格においては2.9%上昇したため、ブリオンボールトの顧客は大量の売却を行うことになりました。
 
このような中でも、月間で売却量が購入量を上回るネット購入者数は、依然として売却者数を上回っていますが、銀投資家インデックスは、1月の価格急騰でネット購入者数が12月の数値から21.7%減少した一方で、ネット売却者数が48.8%急増したことから、30ヶ月ぶりの低い数値となる51.7に落ち込み、2019年7月以来最も低い数値を記録していました。
 
しかし、重量で見ると、銀は、レディットなどのソーシャルメディアにおける「 銀のショートスクィーズ(#silversqueeze)」運動によって、2021年の初頭に投資需要がブリオンボールトが銀の提供を開始した2009年以来の記録的高さとなった一周年の1月に、保管総量を1228トンに減少させていました。
 
この利益確定の売却の中で、先月は新規顧客数が明らかに減少していました。1月は例年、新年に投資を見直した後にリスク分散を図るため、初めて貴金属を購入する人が急増します。しかし、これは株式市場の下落、1990年代あるいは80年代以降で最悪のインフレ、欧州での地政学リスクの高まりが明らかになったにもかかわらずです。2022年の1月は貴金属への新たな関心が2016年以来最も減少していたと言えるでしょう。そして、2012年以来初めて、新規顧客数が前月12月より少ない1月でもあったのです。
 
過去10年間で、ブリオンボールトにおける1月の貴金属の新規顧客数は、各年の月平均を8回上回り、年間の新規顧客総数の10.8%を占め、他のどの月よりも多くなっていました。
 
地政学リスクによる緊張の高まりはもとより、世界の株式市場のボラティリティの高まりと同様に、インフレの高騰は、売却者数を抑えて金と銀の価格を支え続けています。しかし、今後価格が上昇することによって状況は変わるかもしれません。しかし、金や銀への新たな興味を高めるには、経済上、地政学上にどのような変化が必要なのでしょうか。
 
2022年の現段階では、貴金属投資への興味は金融危機後の弱気相場が終わり貴金属価格が底値を付けて以来の低さであるということは明らかのようです。

エィドリアン・アッシュは、ブリオンボールトのリサーチ主任として、市場分析ページ「Gold News」を編集しています。また、Forbeなどの主要金融分析サイトへ定期的に寄稿すると共に、BBCに市場専門家として定期的に出演しています。その市場分析は、英国のファイナンシャル・タイムズ、エコノミスト、米国のCNBC、Bloomberg、ドイツのDer Stern、FT Deutshland、イタリアのIl Sole 24 Ore、日本では日経新聞などの主要メディアでも頻繁に引用されています。

弊社現職に至る前には、一般投資家へ金融投資アドバイスを提供するロンドンでも有数な出版会社「Fleet Street Publication」の編集者を務め、2003年から2008年までは、英国の主要経済雑誌「The Daily Reckoning]のシティ・コレスポンダントを務めていました。

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