ニュースレター(2021年7月23日)リスクオン基調で金は4週ぶりの週間の下げへ
週間市場ウォッチ
今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1802ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から1.2%安と4週ぶりの週間の下げでとなっています。また銀価格は、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり25.16ドルと、前週のLBMA価格(午後12時)から3.6%安の下げで、この水準はLBMA価格ベースで3ヶ月ぶりの低さとなっています。そして、プラチナは本日午後2時の弊社チャート上では1076ドルと、前週LBMA価格から5.1%安でLBMA価格ベースでは3週ぶりの低さへ下げています。
今週の金・銀・プラチナ相場の動きの概要
今週貴金属相場は、週初めは新型コロナウィルス感染拡大懸念で金融市場が急落することでドルが強含み、また現金化が入り下げ、その後落ち着きを取り戻す中で上昇したものの、後半はリスクオン基調で世界株価が上昇し、ドルと長期金利が上昇に転じたことで、押し下げられることとなりました。
そこで、金は安全資産需要で週半ばに上昇が見られましたが、工業用途の高い銀は、今週トロイオンスあたり25ドルを割る3ヶ月ぶりの低値を一時付け、プラチナもまた1045ドルとほぼ5週ぶりの低値を本日記録しています。
そのために、金銀比価は週前半に72と1月末のレディットの投資家による銀価格急騰以前の水準へと戻し、金とプラチナの差のディスカウントも700ドルを超える水準へ広がっています。
下記に金銀比価のと銀価格の推移のチャートを添付します。ここで、ご覧いただけるように、金銀比価は昨年3月コロナ危機で金融市場が急落した際に、銀は11年ぶりの低値を付けたことで史上最高値の123まで急騰し、今年2月にコロナ禍からの経済回復観測で7年ぶりの低さの62台まで下げていました。
日々の金相場の動きと背景について
週明け月曜日は、コロナ感染拡大懸念から株価、コモディティが急落する中で、ドルと米国債が安全資産として買われ、金はドルの強さに頭を抑えられて、また現金化からも一時トロイオンスあたり1795ドルと1週ぶりの低値を付けたものの、金利の下げにサポートされて、その下げ幅をほぼ取り戻し1811ドルで終えていました。
火曜日金相場は、一時トロイオンスあたり1825ドルまで上昇した後に、1809ドルまで下げて終えていました。
この動きは、前日Covid-19感染拡大懸念で株価が急落する中で買われたドルが弱含み、長期金利が引き続き1.2%を割る5ヶ月以来の低さへ下げた後にドルが前日比上昇に転じ、長期金利もその下げ幅を取り戻したことに反応することとなりました。
この背景は、バーゲンハンター的買いと前日の反動などからも、米株価指数はほぼ前日の下げ幅を回復したことで、安全資産のドルと米国債の需要が一服したことが要因となりました。
水曜日金相場は、長期金利が前日に続き上昇し、米国株価が続伸する中で、トロイオンスあたり1800ドルを一時割ったものの、1802ドル経戻して終えていました。
これは、月曜日に高まったCovid-19感染拡大への懸念が後退し、5ヶ月ぶりの低値を付けた長期金利の下げが一服したことが株の買い、リスクオンを促したことからでした。
木曜日金相場は、ロンドン午前中にトロイオンスあたり1800ドルを割って1792ドルをタッチしたものの、この直近のサポート水準は数回試して戻しており、同日もサポートされて1807ドルで終えていました。
また、ロンドン昼過ぎに発表された米新規失業保険申請件数が予想を上回ったことで、火曜日から続いていたリスクオン基調が緩んだことも金を押上げていました。
なお、同日行われたECBの金融政策発表では、予想通り政策金利は据え置かれ、インフレ目標もすでに伝えられていたように、2%未満から2%へ修正し、一時的な2%超えを容認するとしています。これによりユーロは対主要通貨で弱含んでユーロ建て金相場は前週終値まで戻していました。
本日金曜日金相場は、リスクオン基調で世界株価が全般上昇し、米株価指数が史上最高値を更新する傾向で推移し、米長期金利が1週間ぶりに1.3%を超える水準へ上昇する中で、金相場はトロイオンスあたり1800ドルをはさんだ攻防となっています。
これは、本日発表されたSNS関連株のツイッターやSnap社が良好な決算結果で大きく上昇していることからもリスクオン基調で金から資金が流出する中で、週前半にあったようにデルタ変異種の感染拡大や株高懸念、そしてインフレによる実質金利の低下による金需要との綱引き状態となっていることが背景であるようです。
その他の市場のニュ―ス
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ブラジルの中央銀行が前月41.8トン、5月は11.9トン金準備を積みましており、このような中央銀行の金の購入が金の価格をサポートしているとも分析されていたこと -
米国と欧州において今年上半期に金ETFからそれぞれ85億ドルと36億ドルの資金流出が見られる中で、アジアにおいては16億ドルの流入が見られていたこと。 -
コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週13日に、米消費者物価指数が2008年以来の速いペースで上昇した際に、金とパラジウムで増加し、銀とプラチナでは減少していたこと。
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コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、11%増の320トンと、2週連続で3週で最も高い規模に増加していたこと。また、建玉も2週連続で増加していたこと。 -
コメックス銀の先物・オプションのネットロングポジションは、前週比2.5%減の5,393トンと2週ぶりで減少していたこと。 -
コメックスのプラチナ先物・オプションのネットロングポジションは、前週比1.9%減で13.3トンと2020年11月17日以来の低さへ減少していたこと。 -
コメックスのパラジウム先物・オプションのネットロングポジションは、前週比0.84%増で11.1トンへと3週連続で増加していたこと。 -
金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、4週連続で週間の減少後に、今週木曜日までに週間で全く増減無く1028トンと昨年5月14日以来の低さであること。 -
金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高も、前週週間の減少をした後に、今週木曜日までに全く増減が無く496.7トンと5月12日以来の低さとなっていたこと。 -
銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までで週間で49トン(0.28%)増加し17,267トンと、6週ぶりの週間の増加となっていること。 -
金銀比価は、今週金融市場が大きく下げた火曜日に72と6ヶ月ぶりの銀割安傾向となった後で週後半に71へと下げて推移していること。 -
上海黄金交易所(SGE)の価格は、ロンドン価格に対し、プレミアム(ロンドン価格と上海価格の差 - プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)で、週間平均は2.12と前週の1.76ドルから増加していたこと。 -
コメックスの金、銀、プラチナの先物の取引量は、プラチナ以外は週間で増加し、金は8週ぶり、銀は3週ぶりの高さで、プラチナは15週ぶりの低さへ下げていたこと。
来週の主要イベント及び主要経済指標
来週は火曜日と水曜日にFOMCが行われ、終了後の発表内容とパウエル議長の記者会見に市場は注目することとなります。
その他主要指標としては、火曜日の米耐久財受注とリッチモンド連銀製造業指数、木曜日の米国新規失業保険申請件数と第2四半期GDP、金曜日のユーロ圏の消費者物価指数、米国個人消費支出、シカゴ購買部協会景気指数、ミシガン大学消費者態度指数等となります。
詳細については主要経済指標(2021年7月26日~30日)でご覧ください。
ブリオンボールトニュース
今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
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主要経済指標(2021年7月19日~23日)今週の結果をまとめています。 -
主要経済指標(2021年7月26日~30日)来週の予定をまとめています。 -
金価格ディリーレポート(2021年7月19日)コロナ感染拡大で実質金利がマイナス幅を広げドルが強含む中で金価格は下げ幅を取り戻す
なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。
ロンドン便り
本日英国では東京オリンピックの開会式について、大坂なおみ選手が聖火リレーの最終ランナーであったこと、シンプルでありながら心を打つものであったとトップニュースで伝えられています。
そのような中で、新型コロナウィルス感染拡大で、感染もしくは濃厚接触により自己隔離をする人々が急増することで、医療関係や生活必需品関連業界を含む多くのビジネスで人員不足、物資不足となり、昨夜英国政府は一部業界に対し法的規制を緩めたことが伝えられていますので紹介しましょう。
英国では、先週ここでもお伝えしたように7月19日から、新型コロナウィルス関連のほぼすべての法的規制をマスク着用の義務付けも含めて解除しています。
そこで、感染者数は若干先週から減ってはいるものの、昨年12月に行ったロックダウンと同水準の一日あたり4万人ほどとなっています。そして、感染を防ぐために導入されている感染者と濃厚接触した際に連絡が入る国民健康サービス(NHS)のスマートフォンアプリによって、日々60万人近くが連絡を受けて自己隔離をせざるを得なくなっているとのこと。
そのために、スーパーマーケットで働く人々及び物資が不足し、一部スーパーでは店舗を閉店せざるを得なくなったことから、政府に規制の緩和を求めて働きかけていました。
イングランドにおいて、濃厚接触による10日間の自己隔離が義務付けされているのは8月半ばまでで、その後は2回のワクチン接種を済ませた人の隔離免除を認める計画であったことから、昨夜食品関連業界においては前倒しで2回のワクチン接種を終えている人々は検査を日々行うことで隔離免除する方針が発表されていました。
ワクチン接種普及が進んでいることからも、この感染者数の水準でも重症化する人々の数は増えていないことから規制を緩和することができるとのこと。ちなみに、英国の2回のワクチン摂取を終えている人々の人口の割合は、7月21日の段階で53.9%と世界でもカナダに次いで高いものとなっています。そして、1回のみ終えている割合も含めると68.40%とのこと。
規制の全面解除に加えて、先の一部規制緩和も一気に進めざるを得なくなった英国政府の方針が、データや科学に裏付けられた一歩であることを祈りたいと思います。