金市場ニュース

金価格ディリーレポート(2025年6月23日)米軍がイランを攻撃しトランプ大統領が「政権交代」の可能性を示唆する中、金と原油価格は下げる

 

金価格は月曜日に市場開始直後の上昇分を失って小幅下落し、原油価格も朝の急騰から後退し、米国が土曜日にイランの核施設3か所を攻撃し、イスラエルの核プログラム破壊作戦に直接参加したことで、西欧の株式市場も下落していました。

現物金価格は、月曜日市場開始直後に3396ドルまで急騰した後上げ幅を削った後に、ロンドン時間昼過ぎに3360ドル前後を推移していました。この水準は、イスラエルが1週間前にイランの核施設を爆撃した際の最高値以来のレベルで、4月22日につけた史上最高値3500ドルからわずか$100下回る水準です。

一方、原油価格は月曜朝にイランが重要なホルムズ海峡の航路を閉鎖する動きを受けて急騰し、ブレント原油は市場開始後に5.7%急騰して、ほぼ6ヶ月ぶりの高さをつけた後上げ幅の8割を失っていました。

「市場は、米国がイランを攻撃しても、最終的に地政学的緊張が大幅に高まるという確信を持っていない」と、オーストラリアのANZ銀行グループの上級ストラテジスト、ダニエル・ハイネス氏は述べています。

「そのため、投資家が安全資産に殺到していないのです」

一月のドル建て金相場のチャート 出典元 ブリオンボールト

「『政権交代』という表現を使うことは政治的に正しいことではないかもしれませんが、現在のイラン政権がイランを再び偉大にすることができないのであれば、なぜ政権交代が起こらないのでしょうか?MIGA!!!」と、トランプ米大統領は、イランの主要な核研究施設に対する米国の「バンカーバスター」攻撃後に、日曜日に自身のソーシャルメディアに投稿しました。

しかし、トランプ大統領の副大統領である J.D. ヴァンス氏は、「米国はイランと戦争状態にあるわけではない」と述べ、ピート・ヘグセス国防長官も、この作戦は「政権交代を目的としたものではなく、イランの核開発プログラムを標的とした精密作戦」であると述べていました。

イランのアッバス・アラグチ外相は、米国は「非常に大きなレッドライン」を越えたと述べ、この攻撃は「永遠に続く結果」をもたらすだろうと警告していました。

イランの議員たちは日曜日、ホルムズ海峡を通る重要な海上輸送を遮断するというイランの脅威を実行に移すことを決議しましたが、この決議は神権政治の政府には拘束力はなく、最終的な決定はイランの最高安全保障当局者に委ねられています。

世界の 日々の原油供給量の約5分の1がホルムズ海峡を通過するため、「イランは海峡を閉鎖することで得るものは少なく、失うものは多すぎる」と、あるエネルギーアナリストは指摘しています。

「イランは、(ホルムズ海峡を閉鎖することによって)ペルシャ湾の石油・ガス生産国を敵に回し、主要市場である中国を怒らせるリスクを冒すことになる」と続けていました。

上海黄金交易所における金価格は本日0.4%上昇し、グラムあたり¥778となり、ロンドン価格を上回るプレミアムを維持。これにより、貴金属最大消費国への新規金地金輸入にトロイオンスあたり$11のインセンティブが提供され、先週の2倍の水準に戻り、歴史的平均の$8を上回っていました。

一方、欧州の株式市場はロンドン時間昼過ぎまでに小幅下落し、欧州主要600種指数は0.2%下落していました。一方、米国株式先物は上昇し、ニューヨーク市場が開く際に株価が上昇する可能性を示唆していました。

ドル指数(主要通貨に対する米ドルの価値を測る指標)は0.6%上昇し、先週月曜日の3年ぶり安値からさらに回復していました。

工業用途で年間需要の約60%を占める銀の価格は、0.4%上昇しトロイオンスあたり$36.16となりました。

プラチナとパラジウム(いずれも工業用金属で、自動車触媒用途が主要な需要源)はそれぞれ1.6%上昇し、1オンスあたり$1289と$1065となっていました。

 

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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