ニュースレター(2021年4月16日)長期金利が下げに転じ、金価格は7週ぶりの高さへ
週間市場ウォッチ
今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1774ドルと、前週木曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から1.86%高で2週連続の上昇で7週ぶりの高さとなっています。また銀価格は、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり26.13ドルと前週のLBMA価格(午後12時)から3.6%高と、やはり2週連続の上昇で3週ぶりの高さとなっています。そして、プラチナは本日午後2時の弊社チャート上では1209ドルと前週LBMA価格から0.5%高と3週連続の上昇で1週間ぶりの高さとなっています。
今週の金・銀・プラチナ相場の動きの概要
今週金相場は長期金利とドルが一月ぶりの低さへ下げたことで、7週ぶりの高さへ上昇しています。
これまで金を押し下げていた長期金利が下げに転じた背景は下記が要因と分析されています。
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米国とロシア、中国と台湾、米国と中国などの地政学リスクの高まり -
FRBの一貫した「インフレは一時的」、「金融緩和継続」という姿勢 -
投機筋によって売却されていた国債の買い戻し
この間、工業用途の高い銀も長期金利下げとドル安の恩恵を受けて、金より速いペースで上昇しており、金銀比価は68台へと下げて銀の割安傾向が多少解消されています。これは、下記の金と銀価格の昨年からの動きを表すチャートでも、銀がの下げ渋っていることがご覧いただけます。
なお、工業用途が6割と銀と共に多いプラチナは、先の2つの貴金属よりも上げが鈍くなっていました。これは、プラチナは他の貴金属とは異なり2月にすでに7年ぶりの高さへ上昇していたこと、またプラチナ産出会社のノリリスクの浸水被害にる生産停止が予定よりも早く解除されて、生産が開始されるというニュースが今週伝えられたことも背景とも分析されています。
日々の金相場の動きと背景について
週明け月曜日も金相場は米長期金利とドルが高止まりする中でトロイオンスあたり1730ドル割を試す等、下げ幅を広げることとなりました。
今週は大量の米国債入札が控えており、また先週金曜日に市場を動かした米卸売物価指数に続き翌日は米消費者物価指数も発表されることからも、インフレ観測による長期金上昇懸念も金の頭を抑えていました。
火曜日金相場は、米長期金利とドルが弱含む中で、トロイオンスあたり1746ドルと前日の下げ幅を取り戻して上昇して終えていました。
これは、同日市場は米消費物価指数を注目していましたが、その結果が予想を上回ったものの、FRBが金融政策を変更するほどではないとの判断で、米長期金利が下げ、ドルが弱含んだことが背景となりました。
水曜日金相場は、長期金利が再び上昇に転じてトロイオンスあたり1736ドルへと押し下げられて終えていました。
これは、ニューヨーク時間に行われたパウエルFRB議長のワシントン経済クラブのインタビューで「経済がより早い拡大時期に入る」とし、「資産買い入れ縮小する時期が利上げを検討する時期よりもかなり前になる可能性が高い」と述べたことを受けて、国債の需給バランス懸念と、同日やはり発表された米地区連銀経済報告の経済活動が緩やかなペースで加速していたこと、消費の力強さが確認されて長期金利が上昇をしたことことからでした。
なお、前日ジョンソン・エンド・ジョンソンの新型コロナウィルスワクチンの米国での接種停止を受けて、バイデン政権は米国の接種計画に大きな影響は無いとしたことで、前日多少下げていた米株価は上昇し、また同日仮想通貨取引所の米Coinbase上場が行われ時価総額約1000億ドルとCMEやICEをも上回り、ビットコインは史上最高値を付けていたことからも、リスクオン基調も金市場からの資金流出を促していた模様です。
木曜日金相場は、長期金利が一月ぶりの低さへ下げる中で、トロイオンスあたり1768ドルとほぼ7週ぶりの高値を付けていました。
これは、米国がロシア制裁を発表し、中国と台湾等の地政学リスクが高まっていることが背景とも分析されていました。そのような中で、同日発表された米経済指標がすべて予想を上回り、特に小売売上高が10ヶ月ぶりの大幅な伸びとなっていました。そこで、同日ダウ工業株30種平均とナスダック100種は史上最高値を付けていました。
本日金曜日金相場は、昨日一月ぶりの低さへ下げた長期金利がその水準を維持し、ドルが弱含む中で、ロンドン時間午後にトロイオンスあたり1779ドルと更に上昇をしています。
この間、本日発表の中国のGDPが予想を上回り、前日の米国指標も全般良好であったことからも、世界株価はほぼ全般上昇してリスクオン基調は高まっていましたが、それが米国ドルを弱含めて、金相場の上昇をサポートしているようです。
その他の市場のニュ―ス
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コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週6日に、長期金利とドルが弱含む中で、金、銀、プラチナ、パラジウムの全てで増加していたこと。
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コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、53%増で240.8と、増加率は昨年6月末以来の高さとなっていたこと。そして、建玉は昨年9月末から100万枚を下回り、70万枚を10週下回っていること。 -
コメックス銀の先物・オプションのネットロングポジションは、前週比17.2%増の3,870トンと6週ぶりに増加していたこと。 -
コメックスのプラチナ先物・オプションのネットロングポジションは、前週比1.24%増の13.8トンと4週連続の増加で7週ぶりの高さとなっていたこと。 -
コメックスのパラジウム先物・オプションのネットロングポジションは、前週比5%増で10.6トンと4週連続の増加でほぼ3ヶ月ぶりの高さとなっていたこと。 -
金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに週間で3.2トン(0.31%)減で1023トンと14週連続の下げ傾向。 -
金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週木曜日までで週間で3.1トン(0.62%)減で498.8トンで、4週連続の減少の傾向。 -
銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までで週間で34.6トン(0.19%)減で17,845トンと10週連続の減少傾向であること。 -
金銀比価は、今週69台から週後半に68台へ銀割安傾向が多少解消されていたこと。 -
上海黄金交易所(SGE)の価格は、ロンドン価格に対しプレミアム(ロンドン価格と上海価格の差 - プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)で、今週の平均は8.15と先週の7.77から上昇していたこと。 -
コメックスの金、銀、プラチナの週間平均取引量は、木曜日までに金、銀、プラチナ全てで前週を上回っていたものの、銀を除き金とプラチナの平均は未だ前月平均を大きく下回っていること。
来週の主要イベント及び主要経済指標
来週は木曜日にECBが政策金利を発表し、記者会見も行われるので、ここにおける今後の金融政策の見通しなどに市場は注目することになります。
また、来週も米長期金利とドルの動きが引き続き金市場に影響を与えると考えられますので、そのために経済回復状況やインフレを示唆する指標の、火曜日の英国消費者物価指数、木曜日の米新規失業保険申請件数、金曜日の日本の消費者物価指数、欧米の製造業とサービス部門のPMI等が重要となります。
それとともに、今週はほぼ問題なく終えた米国債入札状況へも市場は注目することとなり、来週は19日、20日、21日と22日に30年物、20年物、2年物が予定されています。
詳細は主要経済指標(2021年4月19日~23日)でご覧ください。
ブリオンボールトニュース
米主要経済サイトのMarketWatchの「金が長期金利の上げで下げ、ベージュブックで更に下げる」の記事で、弊社リサーチダイレクターのエイドリアン・アッシュのコメントが取り上げられてました。
ここで、エイドリアンは、「金相場はトロイオンスあたり1675ドル割りを2度守ったことで、1750ドルを下回るサポートラインの値固めをしている。」とし、「現在はインフレヘッジの役割よりも、インフレ観測による長期金利上昇に影響を受けている。」と続けています。
今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
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主要経済指標(2021年4月12日~16日)今週の結果をまとめています。 -
主要経済指標(2021年4月19日~23日)来週の予定をまとめています。 -
金価格ディリーレポート(2021年4月12日)インフレデータと国債入札を待つ中で金は下落
なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。
ロンドン便り
今週も英国は9日のフィリップ殿下死去を受けて、殿下の子ども達や孫達からのコメント、殿下の葬儀の詳細等と関連ニュースが大きく伝えられています。
そのような中、今週月曜日からイングランドはロックダウン解除の第2段として、生活必需品以外店が再開し、パブやレストランも屋外では飲食が可能となっています。そこで、ロンドンのロックダウン解除の様子を少しお伝えしましょう。
英国人のパブ好きは知られていますが、一部のパブは月曜日未明から営業を始め、多くの人々がパブならではのエール(Ale)やビター(Bitter)を4ヶ月ぶりに楽しんだようです。
私も早速火曜日に近所のパブに出かけましたが、下記の写真①のように、本来パブの庭である部分はテントのようなもので覆われて電灯とヒーターがその屋根の部分に設置されて、4月でも夜間は気温が10度以下へ下がる屋外でも比較的快適に過ごすことができるように準備されていました。
ただ、今週は多くの人々がパブへ行くことを望んでいるようで、大部分のパブは来週まで予約はほぼ一杯で、気軽に予約無しでちょっと寄ってみるというのは難しいようです。
また、英国の気候や気温からも南欧のようにアル・フレスコ・ダイニング(屋外での食事)は一般的ではないのですが、パンデミック以来、屋外での飲食のみが許される規制があったことからも、写真②のようにパンデミックのソーシャルディスタンス規制で通行止めとなった道路の上にテーブルを出すレストランも一気に増えています。
週末は未だ最高気温は14度と低いようですが、降水確率は0%とのことですので、しっかり防寒対策をして多くの人々がアル・フレスコ・ダイニングを楽しむことでしょう。
①雨よけにもなる大きなテントの屋根にヒーターも付けられているパブの庭
②路上に出されたテーブルでアルフレスコダイニングを楽しむ人々