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金価格ディリーレポート(2026年1月12日)トランプ政権による米司法省のFRB刑事捜査の攻撃で、金は史上最高値4600ドル、銀は85ドルに到達

 

月曜日、金価格は1トロイオンスあたり4600ドルを突破し、銀も85ドルを超えて史上最高値を更新しました。これは、米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長が、トランプ政権が利下げに応じないことを理由に、刑事捜査を通じて自身に嫌がらせをしていると非難したことを受けた動きです。

FRBの建物改修費用をめぐり、議会で虚偽の証言をしたと非難されているパウエル議長は、日曜日にFRBの公式Xアカウントで公開された動画の中で、「刑事告発の脅しは、FRBが大統領の意向ではなく、公共の利益に最も資すると判断した内容に基づいて金利を決定していることへの報復です」と述べました。

これに対し、トランプ大統領はNBCニュースに対し、司法省の召喚状について「そのようなやり方をすることなど考えもしません。私は何も知りません」と語っています。

金価格は今朝のアジア市場の取引開始直後に上昇し、その後ロンドン市場では一時2.5%高となり、月曜日の昼時にはトロイオンスあたり4620ドルに到達しました。これは、貴金属市場の価格が混乱したクリスマス期間中に記録されたスポット市場の高値を70ドル以上上回る水準です。

金はすでに2025年末から7.0%上昇しています。2025年の最初の7営業日では2.5%上昇し、同年通年では65.0%の上昇となり、1979年以来の最大の上昇率を記録しました。

ドル建て金、銀価格の過去一年のチャート 出典元 ブリオンボールト

スイスの地金精錬・金融グループであるMKS Pampのストラテジスト、ニッキー・シールズ氏は、2026年の貴金属見通しの中で「依然として“トランプの世界”です。引き続き、不可能・予想外の事態が起きると考えるべきでしょう」と述べています。

「市場は現在、米国の予測不能性、軍事的影響力、政治的意思を再評価せざるを得なくなっています。その結果、ファンダメンタルズの観点(銀、PGM、銅などの需要はそれほど強くなく、世界の在庫も潤沢)よりも、マクロの観点(リフレーション、通貨価値の希薄化、実物・戦略資産、戦争ヘッジ)が上回っています。」

年間需要の約60%が工業用途である銀価格も月曜朝に急騰し、一時7.0%高となって、ロンドンのスポット市場でトロイオンスあたり85.50ドルを超える新たな史上最高値を記録しました。これは、12月28日の高値を1.60ドル以上上回る水準です。

銀は今年すでに18.6%上昇しており、2025年最初の7営業日の上昇率である3.4%を大きく上回っています。昨年銀は、46年ぶりの大幅上昇となり、年間上昇率は143%を超えていました。

デリバティブ取引プラットフォームSaxo Bankのコモディティ戦略責任者であるオーレ・ハンセン氏は、「トランプ大統領とその政権が、司法省の召喚状を通じてFRBへの“攻撃”を強めていることで、中央銀行の独立性、インフレ、そして米国の安全性に対する懸念が高まっています」と指摘しています。

トランプ大統領は、利下げが遅すぎる、かつ不十分だとして、パウエル議長を「遅すぎる(Too Late)」「バカ」と繰り返し非難してきました。また8月には、個人的な住宅ローン詐欺の疑惑を理由に、FRB理事のリサ・クック氏を「解任」しようとしましたが、この動きは控訴裁判所および最高裁によってこれまで阻止されています。

先週、元米財務長官でFRB議長も務めたジャネット・イエレン氏は、米国で「長期的な財政支配」のリスクが高まっていると警告しました。これは、政府債務が膨らみ続ける中で、財務省が中央銀行の独立性を上書きし、借入コストを低く抑えようとする状況を指します。

米国の国家債務は昨年10月、政府機関閉鎖の最中に38兆ドルを突破しました。これは、コロナ禍を除けば、史上最速となる2か月間で1兆ドル増加というペースでした。

トランプ大統領は来月、パウエル議長の後任となるFRB議長候補を指名する予定だと、スコット・ベッセント財務長官が先週明らかにしました。大統領はすでに、顧問のケビン・ハセット氏や元FRB理事のケビン・ウォーシュ氏の名前を挙げています。

さらに、FOMC理事のうち、ミシェル・ボウマン氏、クリストファー・ウォラー氏、スティーブン・ミラン氏の3人はすでにトランプ政権による指名です。ただし、日曜日にパウエル議長が司法省の捜査を公然と非難したことで、同氏がFRBの政策決定委員会に留まる可能性は非常に高いと専門家は見ています。

主要通貨に対する米ドルの価値を示すDXYドル指数は本日0.5%近く下落しました。一方、政府債や多くの金融・商業融資の基準金利となる米10年国債利回りは、3ベーシスポイント上昇し、10か月ぶりの高水準となっています。

ユーロ、英ポンド、日本円、中国元など主要通貨建ての金・銀価格も、月曜日にそろって史上最高値を更新しました。

地政学の面では、過去2週間にわたってイランで続いていた大規模抗議デモが、週末に突然の暴力的弾圧に直面し、少なくとも544人が死亡し、1万人以上が逮捕されたと報告されています。トランプ大統領が軍事行動の可能性を示唆したことを受け、テヘランは米国とイスラエルに対し、イスラム独裁体制への干渉を警告しました。

一方、英国とドイツが主導する欧州諸国は、トランプ大統領がデンマーク領グリーンランドの併合への野心を再び表明したことを受け、米国を安心させるとともに北極圏への関与を示すため、同地域での安全保障プレゼンスについて協議しています。

市場、特に金と銀は、火曜日に発表される米消費者物価指数(CPI)、水曜日に発表される生産者物価指数(PPI)、そしてトランプ大統領の包括的な世界関税の合法性をめぐる米最高裁の判断を待っています。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者であると共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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