金価格ディリーレポート(2021年4月12日)インフレデータと国債入札を待つ中で金は下落 2021年4月12日 月曜日 18:44 金価格は先週の上げ基調を維持できませんでした。 これは、今週行われる大規模な新規国債の入札を前に、ジェローム・パウエルFRB議長が米国の短期金利に関するコメントをする中で、世界株価と国債価格が下げて長期金利が上昇していがことが背景となりました。 米国中央銀行の公式声明では、ゼロ金利からの引き上げは早くても2024年までないと繰り返し述べられています。 しかし、最近の債券市場の金利上昇について聞かれたパウエルFRB議長は、日曜日の米主要番組「60 Minutes」で「今年中に利上げする可能性は非常に低いと思う」と語っていました。 CMEのFedWatchツールによると、本日今年中に米国の金利が上昇する可能性は5.5%しかないと見ており、先週の金曜日に見られた確率の半分となっていました。 しかし、アジア時間に金価格は0.6%下落し一時トロイオンスあたり1735ドルまで下げた後、その下げ幅を取り戻したものの、ロンドン時間では更に下げることとなりました。これは、金曜日のLBMA金価格で2週ぶりに週間の上昇をした後のことでした。 世界の株式市場も、先週、MSCI World Indexで史上最高値を更新した後、反落していました。 債券市場では、米国の今後10年間のインフレ率の予想が2.35%と、先月の8年ぶりの高値付近で維持されました。 パウエル議長は「実際のインフレが現れるのを待ってから利上げを行う余裕がある」と述べていました。 金曜日に発表された米国と中国の卸売物価指数と消費者物価指数の 急上昇のニュースに続き、今週は火曜日に米国、木曜日と金曜日に19カ国のユーロ圏から消費者物価率のデータが発表される予定となっています。 オーストラリアの銀行ANZのシニアコモディティストラテジスト、ダニエル・ハインズ氏は「FRBのハト派的なコメントを受けて債券利回りが後退したため、金は何とか(先週の)上昇分を取り戻そうとした」と語っていました。 「パウエルFRB議長は、インフレは一時的なものだが、FRBはそれに対処する手段を持っていると述べ、インフレへの懸念を一蹴した。」と続けていました。 ドルインデックス(主要通貨に対する米国通貨の価値を示す指標)は、月曜日の朝に0.1%上昇した後、反落しましたが、米国債は市場開始時の値下がりを維持し、10年債利回りは一時1.68%まで上昇し、3月中旬に達した14カ月ぶりの高水準となっていました。 今日は、米国3年債と10年債で960億ドルの入札が行われる予定となっています。 ドイツの金融グループ、コメルツ銀行の金利ストラテジスト、ライナー・グンターマン氏は、「米国債の大量供給と、今週発表されるであろう米国の経済活動とインフレに関する一連のデータを考慮すると、 米国債は依然として脆弱であり、ドイツ国債へも波及するリスクがある」と述べています。 財務省が3月に実施した7年債の入札では、2ヶ月連続で低迷に終わったことからも、1.75%近くの15ヶ月ぶりの高値を記録したため、米国の買い入れコストは急上昇しました。 一方、英国の投資家向けの金価格は、FX市場で英国ポンドが強含み、イングランドとウェールズではCovidによるロックダウンの段階解除が本日から行われ、パブでは屋外での飲酒が許可されて、生活必需品以外の店の営業も開始されたため、月曜日昼過ぎに0.4%下落してトロイオンスあたり1266ポンドとなっていました。 欧州の金価格は、欧州連合(EU)が第4次Covid-19感染が深刻化する中、同地域のワクチン接種プログラムの加速を推し進めている中で、トロイオンスあたり1463ユーロまで下落していました。 インドの株式市場は、本日1日で16万8,000人以上が新たに感染したことからも下落し、アジア太平洋地域の株式市場の下げを牽引していました。 第2の金消費国であるインドの金価格は、10グラムあたり46,580ルピーと小幅に下落したものの、 4月上旬の1年ぶりの安値である44,000ルピーを上回っていました。 貴金属専門コンサルティング会社のMetals Focusによると、価格の低下と政府による金地金輸入関税の引き下げにより、インドの金輸入量は3月に前年同月比471%増の160トンに急増し、2015年8月以来の月間流入量となっていたことが明らかとなっていました。 一方、中国の上海金取引所の金価格は、月曜日もロンドン受け渡し価格に比べてプレミアムがついており、金の第1消費国である中国では、新規輸入者に1オンスあたり10ドル近いインセンティブを与えています。