金市場ニュース

ニュースレター(2021年11月26日)早期利上げ観測の広がりで急落した金は、新型コロナ変異種の懸念の現金化で更に下落

週間市場ウォッチ

今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1798ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から3.4%安と3週ぶりの下げで、3週ぶりの低値となっています。この間銀価格は、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり23.61ドルと、前週のLBMA価格(午後12時)から4.7%安とLBMA価格ベースで2週連続の下落で、やはり3週ぶりの低値となっています。そして、プラチナは本日午後2時の弊社チャート上では976ドルと5.8%安と2週連続の下げで7週ぶりの低値となっています。

今週の金・銀・プラチナ相場の動きの概要

今週は月曜日に前週金曜日のFRB高官発言で早期利上げ観測、サポートラインのトロイオンスあたり1835ドルを割ったこと、そしてバイデン米大統領が、パウエルFRB議長の再任したニュースで、貴金属は大きく下げて始まることとなりました。

これは、もう一人のFRB総裁候補者のラエル・ブレイナードFRB理事(新副議長)よりもタカ派という認識、バイデン大統領がインフレ上昇からも下げている支持率のために、インフレ対応をFRBに望み、パウエル議長、ブレイナード副議長共にインフレ対応に会見で言及したことが、早期利上げ観測を一気に広げたことからでした。

また、コメックスの先物・オプションの資金運用業者のロングポジションが昨年の金の最高値以来の水準へ積み増していたことで、急激にこの調整も入ったようでした。本日のチャートは、先週火曜日の段階の先物・オプションの資金運用業者のロングとショートポジションの推移のチャートを下記に添付します。ここで、先週火曜日に昨年金が最高値を付けた際のロングポジションの規模へと急激に増加していたことが見られます。

コメックス金先物・オプションのロングとショートポジションの推移 出典元 CFTCとLBMAデータからブリオンボールトが作成

なお、本日はアフリカ南部で発見された新型コロナ変異種のニュースで、株が売られ、国債が買われるリスクオフ基調で、金は多少上昇していましたが、その後株価が大きく下げる中で、恐怖指数のVIXも8ヶ月ぶりの高さへ上昇し、金も現金化で売られている模様で、工業用途が6割の銀とプラチナは、経済への悪影響懸念からも更に下げています。

日々の金相場の動きと背景について

週明け月曜日、金相場はロンドン昼過ぎにサポートラインの1835ドルを割り、その後下げ幅を広げて前週終値比2%安の1809ドルで終えることとなりました。

これは、金曜日にFRB高官数人が経済回復とインフレ高まりで早期の利上げが好ましいと述べたことがきっかけで、すでに欧州のCovid-19感染拡大懸念で強含んでいたドルが更に16ヶ月ぶりの高さへ強含み、金が下げ幅を広げている中で、1835ドルを割ったことでさらなる売りを呼び、更にロンドン昼過ぎにバイデン大統領がパウエルFRB議長の再任を発表し、候補とされていたラエル・ブレイナードFRB理事よりもタカ派という認識も要因と分析されていました。

その後、バイデン大統領とともに記者会見に臨んだパウエルFRB議長と、ブレイナード新副議長が、共にインフレに対応すると言及したことも、早期利上げ観測を急速に進めることとなりました。

火曜日金相場は、トロイオンスあたり1800ドルも割ったことでさらなる売却が進み、1791ドルと前週終値から2.9%安と下げ幅を広げていました。

同日はイエレン財務長官もパウエル氏のインフレ対策に期待するといったコメントを出したことで、早期の利上げ観測が広がることとなりました。

水曜日金価格はトロイオンスあたり1791ドルと前日の終値とほぼ同水準で終えていました。

同日は、米新規失業保険申請件数が19.9万件と52年ぶりの低さとなり、FRBがインフレに関して参考とする米個人消費(PCE)が前年比5%と前回及び予想を上回り30年ぶりの高さとなっていた事から、発表直後はドルと長期金利の上昇で1778ドルまで押し下げられていましたが、すでに3週ぶりの低さへ下げていたことからも、低値購入の動きもあり多少戻して終えていました。

木曜日金相場は米国が感謝祭の休日で薄商いの中で、トロイオンスあたり5ドル以内の狭いレンジでの取引で1789ドル前後を推移していました。

前夜は市場注目の前月のFOMC議事録が発表され、内容は9月よりもタカ派的で、インフレがより根強く続く可能性、また量的緩和のペースを上げ、早期利上げすることの可能性も言及されていたことで、ドルが引き続き16ヶ月ぶりの高さ、そして長期金利も5週ぶりの高さへ上昇し、すでに3週間ぶりの低さへ下げている金の頭を押さえることとなりました。

本日金曜日は、ブラックフライデーと呼ばれる、祝日ではないものの金融市場は早く終える日で薄商いの中、アフリカ南部で発見された新型コロナ変異種がより感染力が強い可能性があることが伝えられ、経済への悪影響からもリスクオフ基調で株価が全般下げて、恐怖指数が8ヶ月ぶりの高さへ上昇する中で、金はトロイオンスあたり一時1800ドルを超えて上昇していました。

しかし、安全資産として長期国債が買われて利回りが下げる中でも、危機時に起こる金の現金化の動きもあるようでロンドン時間午後に1786ドルへと押し下げられて推移しています。

 

コメックス金先物・オプションの資金運用業者のロング及びショートポジション 出典元 CFTCとLBMAデータを元にブリオンボールトが作成

その他の市場のニュ―ス


  • コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のポジションは、前週の米消費者物価指数データ後で英国消費者物価指数の発表までに多少調整で下げていた際に、全ての貴金属で強気ポジションを増加させていたこと。

  • コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、12%増で2週連続で増加して、昨年9月15日の週以来の高さの510トンへと上昇していたこと。ロングポジションのみでは昨年最高値2075ドルを付けた週以来の高さとなっていたこと。また、建玉は前週から8%増で昨年11月17日の週以来の高さへと上昇していたこと。

  • コメックス銀の先物・オプションのネットロングポジションは、前週比30%増と2週連続の増加で5,578トンと6月15日の週以来の高さへ増加していたこと。

  • コメックスのプラチナ先物・オプションのネットロングポジションは、38%増で24トンと、10週連続でネットショート後6週連続でネットロングを増加させて、5月18日の週以来の大きさとなっていたこと。

  • コメックスのパラジウム先物・オプションのネットポジションは10週連続のネットショートであったものの、38%減の4.6トンとなっていたこと。

  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに週間で6.1トン(0.62%)増の991トンで9月24日以来の高さで、週間としては3週連続の増加傾向となっていること。

  • 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は497トンで、週間で全く変化がなく、先週金曜日に達した10月1日以来の高さを維持していること。

  • 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までに週間で30トン(0.18%)減少して17,022トンと、11月11日以来の低さで、2週ぶりに週間で減少傾向となっていること。

  • 金銀比価は、今週74台から76台後半へと上昇して、本日は10月14日以来の高さとなっていること。(数値が高いと銀の割安傾向で、低いと銀割安傾向が解消:過去5年の平均は80、過去10年は72。)

  • プラチナの金とのディスカウント(金との差)は、今週800前後を推移した後に、本日820と広がり、再び9月21日以来の高さとなっていること。

  • 上海黄金交易所(SGE)の価格はロンドン価格に対し、先週後半から月曜日までディスカウントであったものの、その後プレミアムに転換し、本日はほぼ8ドルまで上昇して、週間の平均はプレミアムは先週の0.55ドルから3.90ドルへと上昇していたこと。(ロンドン価格と上海価格の差 - プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)

  • コメックスの金、銀、プラチナの先物・オプションの取引量は、今週バイデン大統領がパウエルFRB議長を再任し、早期利上げを含みより強くインフレ対策へ取り組むとの観測で貴金属価格が大きく下げる中で、木曜日までの平均は金、銀、プラチナで前週比64%、30%、59%増加し、それぞれ20ヶ月、5ヶ月、2ヶ月ぶりの高さへ増加していること。

来週の主要イベント及び主要経済指標

来週の経済指標の予定が弊社市場分析ページに掲載されました。

今週もインフレ関連経済指標とFRBメンバーのコメントで市場は動きましたが、来週は金曜日の米雇用統計、火曜日と水曜日のパウエルFRB議長の議会証言、水曜日の米地区連銀経済報告が重要イベントとなります。

その他指標については、主要経済指標(2021年11月29日~12月3日)でご覧ください。

ブリオンボールトニュース

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。

ロンドン便り

今週英国では、英仏海峡で難民船が沈没して27人が犠牲となったこと、それを受けて緊急で行われる予定であった欧州諸国の会議への英国の出席がフランスによって拒否されたこと等が、本日のアフリカ南部で発見されたコロナ変異種とそれに係る渡航制限措置とともに大きく伝えられています。

そこで、本日は英仏海峡を渡って英国へ密航する難民や不法移民が急増していることと等とともにお伝えしましょう。

まず、英国へ海路密航する人々は、昨年の約8400人から今年すでに2万5千人を超えて増加しているとのこと。ちなみに、2019年は1900人であったとのことから、その増加ペースが急激なものであることが分かります。

海路密航する人が増えた理由は、陸路密航が英仏政府が警備を強化したために困難となったことが背景であるとのことですが、英仏海峡(最も短い地点で約35キロ)を小型ゴムボートで横断するのは、今回ボートが沈没して27人が犠牲となったように、溺死、凍死など様々な危険があることからも、英仏政府は対応について話し合いを続けていました。

そして、海路密航で過去最大の犠牲者を今週出したことから、英仏政府は緊急で対応策を話し合う予定となっていました。しかし、昨日ジョンソン英首相が英仏が改善すべき点を記した意見書をツィッターを介して公開したことから、仏政府は強く反応し、週末に行われる予定の欧州諸国で対応策を話し合う会合に参加予定であった英内務大臣のプリティ・パテル氏への招待を本日取り下げたのでした。

ジョンソン首相が公開文書で提案した5つの点は①英仏合同の仏海岸のパトロール、②センサーやレーダー等のより高度な技術を利用、③お互いの海域をそれぞれ空中からも監視、④英仏間の関連情報網の構築、⑤違法密航者送還の合意を英欧に先駆けて、英仏で行うというものですが、⑤は英国がEUを離脱したことで必要となっていた英欧間の合意が時間を要していることから、英仏間でまずは合意に至ることを目指すべきということのようですが、ツイッターを介した公開文で提案したことをフランス政府は正式なものでないと強く非難しています。

それでは、なぜフランスで難民申請をせず英国へ航ることを希望するのかについて簡単にまとめると、①すでに家族や友人などの知り合いがいる、②英語を話せる、③失業率等(欧州9%、英国4.6%)を比較してもより良い生活水準を得られる可能性、④自国から逃れてきた欧州諸国での満足のいかない扱いからも新たな地として英国を選ばざるを得ない状況、⑤英国で難民申請が却下された場合も申立てができる、また先で述べたように英欧の密航者送還合意が無いため等の様々な理由で英国に留まれる可能性が高いこと等が挙げられています。

自分の家族のために、より安全で高い水準の生活ができる国へ移民することを希望する気持ちは十分に理解でき、短期的に紛争地から逃れるざるを得ない人々が実際に存在する中で、関連諸国がお互いを非難しあうのではなく一丸となって、彼らが命をかけて密航しなくても良い何らかのシステム構築へ政治的意志を持って進むことを希望するばかりです。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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