金市場ニュース

ニュースレター(2021年1月8日)米上院決選投票で民主が制し、雇用統計悪化もあり、大型経済対策と国債増発観測の長期金利高が金を3週ぶりの低さへ

新年あけましておめでとうございます。

今週から通常通りニュースレターを発信させていただきます。

それでは、本年もよろしくお願いいたします。

週間市場ウォッチ

今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1865.10ドルと、前年最終日31日のLBMA価格のAM価格(午後10時半)から1.37%安と2週ぶりの低さへ下げています。また銀価格は、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり26.71ドルと、前週のLBMA価格(午後12時)から0.85%安と下げています。そして、プラチナは本日午後2時の弊社チャート上では1114.23ドルと前年最終日31日のLBMA価格から3.65%高と上昇していました。

今週の金・銀・プラチナ相場の動きの概要

今週金相場は水曜日にトロイオンスあたり1959ドルと2ヶ月ぶりの高さで前週末比3.2%上昇していましたが、その後、米国の上院決選投票で上院も民主が抑える「ブルーウェーブ」観測、そして実際に確定し、また米雇用統計の悪化からも大型経済対策による大規模な国債発行観測で米国長期金利が昨年3月の水準へと上昇し、ドルが強含んだことから押し下げられ、本日金曜日ロンドン時間午後5時半には3週ぶりの低さの1843ドルまで今週高値から5.9%押し戻されています。

この間銀は、金と同様の動きながら更に大きな上下運動で、水曜日に前日終値比5.7%高の27.92ドルを付けた後に、本日はその高値から8.9%下げて25.35ドルまで落としています。

プラチナは金と銀とは異なる動きをしており、年明け4日に前週終値比5.8%高の1132ドルと2016年9月以来の高値を付けた後に、利益確定の売りでほぼその上げ幅を失い、その後前週比を上回る水準の1079ドルで推移しています。

なお、昨年の年間のそれぞれの貴金属価格の動きは下記のようになっていました。

金:前年末比24.1%高(2010年以来の上げ幅)

銀:前年末比47%高(2013年以来の高さ)

プラチナ:10.5%高

ドルインデックス:7.5%低(2年半ぶりの低さ)

米長期金利(10年物):100ベーシスポイント下げ

世界株式指標:18.3%高

日々の金相場の動きと背景について

週明け月曜日は、世界各国で承認及び接種が進んでいる新型コロナウィルスワクチンのニュースが好感されて、ドル安と実質金利の下げからもトロイオンスあたり1941ドルと、ワクチンの良好な臨床試験結果で11月初旬以来失った分を取り戻し、2ヶ月ぶりの高さへと上昇し堅調に推移していました。

翌火曜日金相場は、米株価が前日の下げから反発して上昇し、ドルが弱含む中で、トロイオンスあたり1950ドルを超えて緩やかに上昇していました。

しかし、翌日発表される上院決選投票の結果を待つ様子見ムードも強く、ジョージア州の2議席を民主党が抑えた場合、下院とともに上院も民主党が制する事となり、バイデン次期大統領が押す、大企業や富裕層への増税や大型財政出動が見込まれて金融相場全般が先行きを読みづらいところのようでした。

水曜日金相場は、株価が全般上昇し、ドルが多少ながら強含み、米長期金利が昨年3月以来初めて1%を超えて上昇する中で、一時トロイオンスあたり1901ドルへと前日比2.6%安と大きく下げていました。

同日の動きは前日行われたジョージア州の上院決選投票で民主党候補が2議席とも勝利して同党が過半数を制する可能性が高まり、大型経済対策観測が広がり長期金利が上昇したことが要因となりました。また同日発表された米ADP雇用者数が予想に反して減少していたこともこの観測を広めていました。

木曜日金相場は、ドルが強含み米国長期金利が上昇する中で、前日終値の水準から緩やかに下げていました。

この背景は前日同様に米国上院決選投票で民主党が2議席を抑えて上下両院と大統領が民主という「ブルーウェーブ」となり、追加経済対策の期待から、国債増発観測で金利が上昇し、ドルが強含んだことからでした。なお、金は金利を生み出さないために金利の上昇は金の頭を押さえることとなります。なお、この間株価は全般上昇していました。

ちなみに、前日の米国議会占拠などの異例の事態の市場への影響は限定的となっていました。

本日金相場は、長期金利が引き続き昨年3月の高さに上昇しドルがほぼ2週ぶりの高さへ強含むことで前日終値比3.7%安の3週間半ぶりの安値のトロイオンスあたり1843ドルまで大きく下げています。

これは、本日発表の米雇用統計が昨年4月以来初めて14万人減少していたことで、バイデン次期大統領による大型経済対策の観測が広がったことが背景の模様です。

この間株価は大型経済対策期待で全般上昇しており、欧州株は11月以来最も大きな週間の上げ幅を記録していました。

その他の市場のニュ―ス


  • ビットコインが今週市場最高値の3万6000ドルを6日に超えたこと。この間4日に17%上昇し、その後一旦10%下げるなどボラティリティの高い動きをしていたこと。

  • コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週火曜日29 日に、クリスマス後と新年前で取引高が減少していた際に、パラジウムを除きネットロングポジションが減少していたこと。

  • コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、0.24%減の426トンと4週連続で増加して昨年9月以来の高さに増加後減少していたこと。昨年の平均ネットロングポジションは前年比9.6%上回っていたこと。

  • コメックス銀の先物・オプションのネットロングポジションは、前週比2.5%減の7380トンで、4週連続で増加後初の減少。昨年の平均ネットロングポジションは前年比27.5%上回っていたこと。

  • コメックスのプラチナ先物・オプションのネットロングポジションは、前週比5.41%減の20.6トンと3週間連続で減少していたこと。昨年のネットロングポジションの平均は前年比67.7%上回っていたこと。

  • コメックスのパラジウム先物・オプションのネットロングポジションは、前週比4.9%増で10.2トンと6週連続で減少後初めて増加。昨年のネットロングポジションは前年比28%下回っていたこと。

  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに週間で11.4トン(1%)増で1182トンと2週連続で週間の上昇傾向であること。

  • 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週は週間で3.39トン(0.64%)増で528トンと、11月28日以来の高さで、週間で2週連続の上昇傾向であること。

  • 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週117.68トン(0.68%)増で17,496トンと2週連続の増加傾向であること。

  • 金銀比価は、今週71台前後を推移し、一時4ヶ月ぶりに71も割って銀割安解消傾向となっていたこと。

  • 上海黄金交易所(SGE)のディスカウント(ロンドン価格と上海価格の差 - プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)の週平均は-8.7と3月末以来の低さへ減少していたこと。この間人民元は対ドル2018年6月以来の高さへ上昇。

  • コメックス及びNYMEXの金、銀、プラチナの週間平均取引量は、年明け年末取引薄から急増し、前週比それぞれ96%、68%、30%と増加していたこと。

来週の主要イベント及び主要経済指標

本日米雇用統計が発表され、昨年4月以来初めて減少していたことが明らかとなりましたが、今後のFRB及び米政権の金融政策や景気刺激策観測に絡み、来週の指標では水曜日の米消費者物価指標、米地区連銀経済報告、木曜日の米新規失業保険申請件数やパウエルFRB議長の議会証言等の指標やイベントは重要となります。

その他、新型コロナウィルスの感染者数及びワクチン接種関連ニュースも注目となります。

また、今週の米議会占拠後の関連ニュース及び1月20日のバイデン次期大統領の就任式までの米政局の動きも重要となる可能性があります。

それでは、主要経済指標の日程及び詳細は主要経済指標(2021年1月11日~15日)をご覧ください。

ブリオンボールトニュース

今週弊社がまとめる金投資家の傾向を指数で表示する金投資家インデックスの12月の数値がまとまり、2020年通年の投資家の傾向をまとめたプレスリリースが、日本語で金の情報を網羅するゴールドニュースサイトで「【金投資家インデックス】金投資需要が 新年に更に50%急増」と取り上げられています。

また、英国主要経済サイトのThis is Moneyサイトの「ビットコイン?この動きは市場に資金が溢れていることを示唆していることで、金が引き続き安全資産としての役割を保持」の記事で、弊社リサーチ取締役のエィドリアン・アッシュのコメントが取り上げられています。

この記事では、まさに見出しのコメントがエィドリアンのコメントで年初からのビットコインの価格上昇については、(金融緩和や景気刺激策で市場に流れ込んだ)大量の資金が短期利益を狙って入っているものの、過去の3度の価格の急落のように今回も急落する。」と予想していました。

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。

ロンドン便り

新年最初の週は、英国は新型コロナウィルスの感染拡大関連ニュースがほぼトップニュースを占めています。

本日はロンドン市長がこの感染が「制御不能」状況に陥り、病院が対応できない可能性があると「重大インシデント宣言」を行っていました。

本日の英国のCovid-19による死者数はパンデミックが始まって以来最高の1325人を記録し、日々の感染者数が6万人を超えるなど厳しい状況となっています。

英国のそれぞれの地方政府は多少異なるながらもロックダウン(都市封鎖)を今週開始しており、イングランドでは外出は一日一回のエクササイズと、食料品購入や病院へ行かざるを得ない場合、もしくは自宅では働くことができない仕事のためのみ認められており、その他の外出は法律上できなくなっています。

重大インシデントは通常、攻撃や重大事故の発生時に指定され、特に「重大な被害、損害、混乱、または人間の生命や福祉、不可欠なサービス、環境や国家安全保障に対するリスク」などがある事態に適用され、病院や救急病棟等の緊急サービスが通常通り行われない可能性があるということを意味します。

近年では2017年の70名の犠牲者を出したグレンフィルタワーの火災事故の時に宣言されていました。

そのような中、本日英国はモデルナ社の新型コロナワクチンの承認をファイザー社とビオンテック社、オックスフォード大学とアストラゼネカ社のワクチンに次いで行いました。

英国政府は、ワクチン接種を2月半ばまでに、最も優先されるべき医療関係者や70歳以上の高齢者1300万人へ行うことを目標としています。

ロックダウンはそのために2月半ばまで決まっており、その状況次第で見直しが入るとのこと。今はただ、このワクチン接種が順調に行われ、最もリスクの高い人々を守ることを最優先に、そして、今年いずれかの段階で人々が平常の生活に戻れることを祈るばかりです。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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