金市場ニュース

金価格ディリーレポート(2020年12月21日)英コロナ変異種で株が下げ、米追加経済対策合意でドル高となる中金が急騰

月曜日のアジア時間に金価格はトロイオンス1900ドルを超え、6週間ぶりの高値へと急騰しました。
 
これは、米議会の与野党指導部が、数ヶ月の協議の末に9000億ドル規模の新型コロナウィルス追加経済対策で合意に達したことが伝えられたことからでした。
 
ドル建て以外の通貨建て金価格も同様に急激に上昇し、その上げ幅を維持する中で、ドル建て金価格はその後トロイオンスあたり50ドル以上下落していました。これは、世界の株式市場が、英国の新型コロナウィルスの変異種の感染拡大からヨーロッパ諸国が世界第5位の経済大国である英国への旅行や交通を遮断したこと、そして英国が国内の広範囲へクリスマス期間も含む移動制限を行ったことへの警戒感から大きく下げていたことが背景となっていました。
 
金の現物価格は先週ドル建てで2.3%上昇した後、月曜日午前中に一時トロイオンスあたり1907ドルと1.4%上昇した後、ロンドンの昼過ぎまでに1880ドル前後へと戻して推移していました。
 
銀価格は先週の7.8%の上昇に加え、6.1%上昇してトロイオンスあたり27.39ドルを付けた後に25.80ドルまで下げていました。
 
これにより、 金銀比価(金と銀の相対的な価値を示す指標)は、70弱まで下落していました。これは、9月初めの1日を除けば2018年4月以来の最低値であり、3月のコロナ危機の際の金1トロイオンスあたり銀125オンスという史上最高値からは大きく下げたこととなります。
 
金銀比価 出典元 LBMA価格を基にブリオンボールト作成
 
香港はアジアの中では最初に英国からの 航空全便を禁止し、日本と韓国はこの変異種について「注意深く監視」していると伝えられていました。
 
欧州では本日、コロナ危機悪化のニュースを受けて主要国債の価格が上昇し、株式市場が下落して、長期金利が低下していました。
 
追加経済対策合意を受けた米政府の債務増加にもかかわらず、米国10年物国債利回りは0.89%と1週間ぶりの安値に下げていました。
 
想定インフレ率は2019年4月の高値まで上昇し、10年物TIPS(物価連動債)では年率2.00%に達する水準へと上昇していました。
 
これにより、実質10年物金利は年率マイナス1.09%で2003年1月に現在のデータが開始されて以来の最低水準となっていました。
 
「米追加経済対策は、米国の財政赤字を拡大させ続けるだろう。ワクチンはCovid-19には効くかもしれないが、 財政赤字には効かないだろう。」と日本地金市場協会の代表理事の池水雄一郎氏は述べていました。
 
米国のGDP比の債務規模と金価格の推移 出典元 セントルイス連銀
 
米国の公的債務局によると、米国の政府債務は、2020年第2四半期に経済規模No.1の年間GDPの136%に相当する額に達した。
 
その後第3四半期には127%まで低下したが、先進国では日本、イタリアに次いで3番目に大きな債務規模となっています。
 
「安全資産として、金は引き続き買われる可能性が高く、2021年中に8月の高値2089ドルを試すのを見ても驚クことはないだろう」と池水氏は続けています。
 
民主党のナンシー・ペロシ下院議長と民主党のチャック・シューマー上院議長の間で合意された米国の景気刺激策は、今年3月の2.2兆ドルのCare Actに次ぐ、米国史上最大級の経済救済法案となります。米国下院と上院は本日この採決を行い、ホワイトハウスはドナルド・トランプ大統領が署名すると発表しています。
 
「私たちは長い間国民が聞くことを望んでいたことを ついに報告することができます。より多くの人々へのサポートがこれで届けられることとなります。」と、共和党上院のリーダーであるミッチ・マコーネル氏は、日曜日の夜に語っていました。
 
中国の株式市場だけが本日下落を回避しましたが、MSCIアジア太平洋指数は0.7%下落し、ユーロストックス600指数は3.3%と大幅に下落していました。
 
ドルインデックスは、金曜日に2.5年ぶりの最安値を記録した後、1週間ぶりの高値に跳ね上がっていました。
 
ユーロ建て金価格は、トロイオンスあたり1545ユーロまで下げる前に1565ユーロと2%以上上昇して1ヶ月ぶりの高値を更新し、ポンド建て金価格は、英国で新型コロナウィルスの変異種が見つかったことから今年3月のコロナ危機以来の速いペースで上昇し、トロイオンスあたり1400ポンドを超えていました。
 
英国が最終的に欧州連合(EU)とその関税同盟圏を離れるまで10日を切った本日、重要な英国の港のドーバで 混乱が起きていました。それは、フランス政府が昨夜貨物トラックを含む英国からのすべての交通網を遮断したことからでした。そのために、品薄となることを懸念した人々による「パニック買い」は英国のスーパーマーケットで起き、「強固な検査システム」は、英国とフランスの間の商品の流れが再開できるように、今後数時間の間に設置されると、フランスの運輸大臣ジャン-バティスト・ジェバリ氏は月曜日の朝述べていました。
 
貴金属の輸送に大きな混乱はないと予想されますと、世界の現物地金取引の中心地であるイギリス・ロンドンの卸売金・銀市場を監督する専門組織であるロンドン貴金属市場協会(LBMA)は本日声明を発表していました。
 
「貴金属のための強固な輸送インフラは、第1四半期の最初のロックダウン以来強化されており、それは例えば現在の制限の影響を受けていないチャーター便の利用などです。」とLBMAは説明していました。
 
3月にボリス・ジョンソン英国首相が新型コロナウイルス感染拡大を防ぐために、最初に移動制限として都市封鎖をした際に、金価格は世界の市場への流通が妨げられ、取引のスプレッドが急拡大した一方で、米国の派生商品市場は世界の現物市場の基準価格であるロンドンを トロイオンスあたり100ドル上回るほど急騰していました
 
本日ニューヨークの金派生商品価格のプレミアムは、ロンドンの現物金地金相場をトロイオンスあたり1ドル未満と安定して推移しています。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

注意事項: ここで発信される全ての記事は、読者の投資判断に役立てるための情報です。しかし、実際の投資にあたっては、読者自身にてリスクを判断ください。ここで取り扱われる情報及びデータは、すでに他の諸事情により、過去のものとなっている場合があり、この情報を利用する際には、必ず他でも確証する必要があることを理解ください。Gold Newsの利用については、利用規約をご覧ください。

SNSで最新情報を入手

Facebook   TwitterYoutube

 

貴金属市場のファンダメンタルズ