ニュースレター(2021年1月22日)金価格はバイデン相場の株高ドル安で2週ぶりの高さへ上昇
週間市場ウォッチ
今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1852ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から0.1%高と2週ぶり上昇となっています。また銀価格は、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり25.35ドルと、前週のLBMA価格(午後12時)から0.4%高でやはり2週ぶりの上げとなっています。そして、プラチナは本日午後2時の弊社チャート上では1101ドルと前週LBMA価格から1.5%高となっています。そのような中、金と銀は今週それぞれ1875ドルと26.05ドルと2週間ぶりの高値を付け、プラチナは昨日は1156ドルと2016年8月以来の高さまで一時上昇していました。
今週の金・銀・プラチナ相場の動きの概要
金、銀、プラチナは、1月初旬に高値を付けて以来、バイデン新政権の追加経済対策による国債増発観測が長期金利を上昇させ、ドルを強含めて下げ幅を広げていました。
しかし、今週市場ではバイデン政権の追加経済対策に加えコロナ対策による経済回復期待が高まり、世界株価が全般上昇する中で、ドルが弱含み、長期金利も多少ながら下げていた事から、貴金属、特に工業用途とグリーンエネルギー需要増加観測で銀とプラチナが、金を上回る上昇をしていました。しかし本日はこれまでの楽観的観測から、現実的に未だCovid-19感染者数が高止まりし、さらなる都市封鎖の可能性、経済回復の遅れなどへの懸念、更にはバイデン政権の追加経済対策が議会で共和党の反対で縮小せざるを得ない観測などからも、株価が下げドルと長期金利が再び上昇しつつあることからも貴金属は下げている模様です。
日々の金相場の動きと背景について
月曜日金相場はロンドン時間午前中にトロイオンスあたり1810ドルと6週ぶりの低さへ一時下げた後に、1839ドルで終えていました。このロンドン午前中の下げは米長期金利の上昇へ反応したものでした。
火曜日金相場は、市場がイエレン次期財務長官の米議会上院での指名承認の公聴会を待つ中で、トロイオンスあたり1845ドルを一時超えたものの10ドルほどの狭い範囲で推移していました。そして、イエレン次期財務長官は予想通り、ドルの価値は市場によって決定されるべきと述べ、「Act big(大きな行動を)」とインフラ投資を含む米経済強化パッケージの必要性を訴えていましたが、同日の相場への影響は限定的となっていました。
水曜日金相場は、バイデン米大統領就任式を見守る中で、世界株価が全般上昇し、ドルが下げる中で、トロイオンスあたり1870ドルと前週終値から1.4%高でほぼ2週間ぶりの高さで終えていました。
この背景は、前日のイエレン次期財務長官の公聴会で積極財政を行うという「Act Big」への反応や、バイデン新政権の追加経済対策への期待などで、株価が全般上げる中で、ドルがほぼ一週間ぶりの低い水準へ弱含んでいたことからでした。
そのような中で、金とともに銀とプラチナも上昇し、銀は前日比1.8%高のトロイオンスあたり25.79ドル、プラチナも1.3%高のトロイオンスあたり1106ドルと上昇して終えていました。
また、前日銀ETFの最大銘柄のiShareシルバーの残高は、3.6%増と7年ぶりの大幅な増加量で、1月5日以来初めての増加で、11月のワクチンニュースで失った残高をほぼ取り戻していました。
木曜日金相場は、ほぼ2週間ぶりの高さのトロイオンスあたり1875ドルまで上昇したものの、上げ幅を失って前日の終値からも下げて1866ドルで終えていました。
この背景はドル安にもかかわらず、米長期金利が同日も高水準で、午後には3ベーシスポイント上昇をしていたことや、金が2週ぶりの高値を付けたことからも利益確定の売却等も入っていました。
同日プラチナは、トロイオンスあたり1156ドルと4年ぶりの高さへ上昇していました。
本日日金相場は、世界株が全般下げて、ドルと長期金利が上昇する中で、トロイオンスあたり1856ドルと、前日と前々日の上げ幅を一時失ったものの多少戻して推移しています。
この背景は昨日バイデン大統領がコロナ禍は改善する前に悪化し、来月にCovid-19による死亡者数が50万人を超えると述べたこと、また昨日のECB金融政策でラガルド総裁がコロナ禍による経済の二番底の公算を示唆したこと、そして、本日バイデン政権の1.9兆ドルの追加経済対策が野党共和党の反対で大幅に縮小されるとの見方も出ていることからのようです。
その他の市場のニュ―ス
- 水曜日にバイデン氏が大統領に就任した際に、バイデン政権が目指す追加経済対策やコロナ対策が好感されて、米主要株価指数が軒並み過去最高値を付けていたこと。
- コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週火曜日12日に、週後半にバイデン次期大統領の追加経済政策の発表とパウエルFRB議長のスピーチを待つ中で狭いレンジで取引が行われる中で、全ての貴金属でネットロングポジションが減少していたこと。
- コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、30.8%減の327トンと11月24日以来の低さへ下げていたこと。当時金価格はワクチンニュースでトロイオンスあたり1800ドルを割って4.5ヶ月ぶりの低さとなっていたこと。
- コメックス銀の先物・オプションのネットロングポジションは、前週比8.9%減の6,749トンと7週ぶりの低さとなっていたこと。
- コメックスのプラチナ先物・オプションのネットロングポジションは、前週比6.6%減の18トンと5週間連続で減少し、11月24日の週以来の低さとなっていたこと。
- コメックスのパラジウム先物・オプションのネットロングポジションは、前週比17%減で10.5トンと2週ぶりの下げとなっていたこと。
- 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに週間で3.5トン(0.3%)減で1174トンと2週連続の下げの傾向であること。
- 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週は週間で1.06トン(0.2%)減で528トンと、4週ぶりの減少傾向であること。
- 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週643トン(4%)増で17,862トンで、その週間の増加率は6ヶ月ぶり大きなものであること。
- 金銀比価は、今週73台前後を先週同様に推移していること。
- 上海黄金交易所(SGE)の価格は今週ロンドン価格に対しプレミアム(ロンドン価格と上海価格の差 - プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)となり、週平均は5.13ドルと一年ぶりの高さへ増加していたこと。
- コメックスの金、銀、プラチナの週間平均取引量は、金とプラチナがそれぞれ9%と3%増加し、銀が3%減少と先週から大きな変化はなかったこと。しかし、昨日プラチナは価格が4年ぶりの高さへ上昇する中で、他の貴金属とは異なり取引量が大きく増加していたこと。
来週の主要イベント及び主要経済指標
来週はFOMCの結果が水曜日に発表され、その後のパウエルFRB議長の記者会見で、今後の金融政策への示唆や経済状況の認識等を市場が注目することとなります。
また、バイデン大統領の追加経済対策関連ニュースも重要となります。 そして、引き続きCovid-19関連、感染者数、都市封鎖、ワクチン接種等のニュースも市場を動かす可能性があります。
その他、経済指標に関しては主要経済指標(2021年1月25日~29日)をご覧ください。
ブリオンボールトニュース
今週弊社リサーチ取締役のエィドリアン・アッシュは、ロンドン貴金属市場協会(LBMA)のウェビナー「パンデミック間のOTC取引」でホスト役として、昨年に続きパンデミック下でのロンドン専門市場とコメックス先物・オプション市場の取引量の推移をデータを基に振り返り、その背景や特筆すべき点などを解説しました。
この取引量データを見ると、3月末にロンドンがロックダウンに入り、他の地金専門市場への輸送への懸念から、先物市場とロンドン雨受け渡し金価格に乖離ができて以来、先物市場の取引量が減少し、ロンドン現物市場が急激に増加し、それがいまだ続いていることが確認できます。
今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
- 主要経済指標(2021年1月18日~22日)今週の結果をまとめています。
- 主要経済指標(2021年1月25日~29日)来週の予定をまとめています。
- 金価格ディリーレポート(2021年1月18日)バイデン大統領就任前にコメックスのネットロングが大幅に減少し、金ETFが増加する中で金価格が6週ぶりの低さから上昇
なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。
ロンドン便り
今週も英国におけるニュースは、新型コロナウィルス関連ニュースが見出しを飾っていますが、20日のバイデン大統領就任式はニュース番組はほぼ生中継をし、多くのニュース番組はトップニュースとして伝えていました。
そのような中、本日は英国で発見された新型コロナウィルスの変異種は当初のものより致死率が高い可能性があると伝えられ、またそのようなことからもロックダウンの長期化の可能性が示唆されています。
そこで、いくつかの英国の主要イベントが今年開催に関して異なる結論を発表していましたので、お伝えしましょう。
まず、英国では最も著名な野外音楽フェスティバルで通常6月に開催されているグラストンベリーフェスティバルが、昨年に続き2年連続で延期されることが発表されています。
このイベントは3日間で20万人の人々が参加する英国でも最大の音楽フェスティバルであることからも、準備のためにはこの時点で決断をする必要があるとのことです。
それに対し、通常4月に行われているロンドンマラソンはすでに10月への延期が決まっていましたが、本日は通常通り5万人の参加者で開催予定であることが発表され、更に昨年私が参加したようにバーチャル(レースコースではなく、それぞれが希望の場所で同日24時間以内に走る方法)での参加も応募が来月早々に行われるとも伝えられていました。
奇しくも、昨日英タイムズ紙は、日本のある与党関係者の話として政府が非公式に新型コロナウィルスの影響で東京オリンピックの開催中止を必要があると結論づけたと伝えていました。
これに関して、本日は日本政府と国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長がそれを否定し、大会の中止や延期は無いとも伝えられ、ロンドンオリンピックの最高責任者でIOC委員でもあるセバスチャン・コー氏は、ワクチン接種が始まっていることからも状況は昨年に比べて大きく改善し、開催は可能だとも本日インタビューで語っていました。
この英国では、今月に入り昨年パンデミックが始まって以来最多の一日の感染者数や死亡者数が日々伝えられ、未だ厳しい移動制限が行われています。そのために、世界各国でその状況は異なるにしても、今年の夏までに状況が大きく改善して、世界から1万人を超える選手やその関係者と2千万人近い観客が集うスポーツの祭典が行えることになるとは想像をすることはかなり難しいところもあります。今はただ、開催国と参加者の安全を最優先にIOCと日本政府がより良い結論を出すことを希望したいと思います。