ニュースレター(2021年1月15日)バイデン次期大統領の追加経済対策で長期金利とドルが上昇し、金は2週連続の下げへ
週間市場ウォッチ
今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1841.41ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から1.15%安と2週連続の下げでLBMAの金曜日価格ベースで11月末以来の低さとなっています。また銀価格は、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり25.25ドルと、前週のLBMA価格(午後12時)から5.24%安2週連続で下げて、LBMA金曜日価格のベースで12月11日以来の低さとなっています。そして、プラチナは本日午後2時の弊社チャート上では1085.62ドルと前週LBMA価格から2.37%安と3週ぶりの下げとなっています。
今週の金・銀・プラチナ相場の動きの概要
今週の金と銀は、バイデン次期大統領の大規模な追加経済対策による国債増発観測で長期金利が上昇し、ドルインデックスも3週ぶりの高さに上昇したことからも、ともに2週間連続の週間の下げとなり、銀の下げ幅は金を上回っていることからも金銀比価が多少ながら上昇しています。
金と米長期金利(10年物国債利回り)のチャートも参考までに下記に添付します。
このような中、プラチナは木曜日まで上昇し、前週終値から4.8%上昇していました。この背景は南アフリカで新型コロナウイルスの変異種の感染が拡大し、供給への影響が懸念されていたこと。また、米大統領選でのバイデン氏の勝利以降、環境銘柄の一つとしてプラチナに投資家の注目が集まっている事が要因とされていましたが、本日は金と銀が大きく下げる中で、その上げ幅を削っています。
日々の金相場の動きと背景について
週明け月曜日金相場はロンドン早朝に大きく下げた後、その下げ幅を戻して横ばいで推移していました。
この早朝の下げの背景はドル高、長期金利高となりますが、そのような中で、上海黄金交易所の金価格とロンドン価格との差がディスカウント(割安)からプレミアム(割高)へ昨年3月のコロナ危機以来初めて転換し、中国での需要が旧正月を前に増加していることを示唆していました。
火曜日金相場は、前日の終値から多少ながら上昇し、トロオンスあたり1855ドル前後を10ドル以内の狭いレンジで推移していました。
これは、バイデン次期大統領が今週追加経済対策を発表する予定であったこと、また、また翌日のパウエルFRB議長のスピーチを見守る動きとなっていました。
水曜日金相場は、トロイオンスあたり1848ドルへと前日終値から多少下げて終えていました。
この背景は6日連続で上昇している米長期金利が金利を産まない金の頭を抑えていたこと、しかし前日まで4日連続で上昇していたドルが同日は弱含んでいたので、下げ幅も限定的となっていました。
また、同日はFBIが20日のバイデン次期大統領就任式での武装デモの警戒を呼びかけていたこと、前日民主党は下院にトランプ大統領の罷免をペンス副大統領に求める決議案を提出し、ペンス氏が応じなければトランプ氏の弾劾決議案を週内に採決する予定で、政治リスクも警戒されていました。
木曜日金相場は、米株価が3営業日連続で上昇し、長期金利が10ヶ月ぶりの高さを維持する中で、前日同様に狭いレンジの動きで多少上昇してトロイオンスあたり1851ドルで終えていました。
同日ニューヨク時間後のバイデン次期大統領の追加経済対策発表に注目する中で、同日ロンドン昼過ぎ発表の米新規失業保険申請件数は予想を上回る3月以来の高さの96.5万件と大型追加経済対策観測を広げるものとなっていました。
しかし、ロンドン時間終了間近に行われたパウエルFRB議長のスピーチで、「利上げは必要であればするものの、それはすぐには来ない」、また「物価上昇率は2%を上回っても容認する」とコメントし、金は一時1857ドルまで上昇していましたが、影響は限定的となっていました。
本日金相場は、長期金利が多少下げているものの9ヶ月ぶりの高さで高止まりしドルが強含む中で、ロンドン午後に下落し一時トロイオンスあたり1823ドルと今週月曜日を除き12月15日以来の低さへ下げていました。
これは、本日発表された米小売売上高が予想を下回り、3ヶ月連続の減少であったことが嫌気されて株が下げる中でドルが強含んだことが背景となっている模様です。
また、前夜バイデン次期大統領はほぼ予想通りの1.9兆ドル(約200兆円)の新型コロナ対策を提示していたことは、今後下院の審議でその規模が縮小される可能性はあるものの、長期金利を高止まりさせる要因とはなっている模様です。
その他の市場のニュ―ス
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コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週火曜日5日に米ジョージア週の上院決選投票結果を待つ中で長期金利とドルが下げていた際に、プラチナを除きネットロングポジションが増加していたこと。 -
コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、11%増の473トンと昨年9月15日以来の高さに増加していたこと。建玉は100万枚を15週連続で割っているものの、80万枚を超えて11月17日以来の高さであったこと。 -
コメックス銀の先物・オプションのネットロングポジションは、前週比0.4%増の7408トンと昨年2月末以来の高い水準であったこと。
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コメックスのプラチナ先物・オプションのネットロングポジションは、前週比6.07%減の19.4トンと4週間連続で減少し、11月24日の週以来の低さとなっていたこと。 -
コメックスのパラジウム先物・オプションのネットロングポジションは、前週比24.31%増で12.7トンと2週連続で増加して11月10日の週以来の高さとなっていたこと。 -
金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに週間で21.1トン(1.8%)減で1161トンと2週連続で増加後に週間の下げの傾向であること。 -
金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週は週間で0.43トン(0.08%)増で529.5トンと、週間で3週連続の上昇傾向であること。 -
銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週247トン(1.41%)減で17,249トンと12月17日以来の低さで、2週連続の増加後減少傾向であること。 -
金銀比価は、今週73台前後を推移し、前週の71から銀割安傾向となっていたこと。 -
上海黄金交易所(SGE)の価格は今週ロンドン価格に対しプレミアム(ロンドン価格と上海価格の差 - プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)となり、週平均は4.89と昨年1月23日週以来の高さへ増加していたこと。 -
コメックスの金、銀、プラチナの週間平均取引量は、先週は価格の急騰から急増していたこともあり、前週からそれぞれ12%、30%、24%減少していたこと。
来週の主要イベント及び主要経済指標
来週は20日にバイデン時期大統領の就任式が行われ、その後のトランプ大統領の弾劾裁判関連の上院の動き、またバイデン大統領の追加経済対策の議会採決などに市場は注目することとなります。
また、日銀とECBの金融政策決定会合が木曜日にあり、この結果とその後の記者会見で、経済先行きをどのように見ているのか、またさらなる緩和が示唆されるのかなどに市場は注目することとなります。
そして、新型コロナウィルスの感染関連、及びワクチン接種の状況、変異種によるさらなる都市封鎖等のニュースも市場を動かす可能性があります。
その他主要経済指標に関しては、主要経済指標(2021年1月18日~22日)でご覧ください。
ブリオンボールトニュース
今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
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主要経済指標(2021年1月11日~15日)今週の結果をまとめています。 -
主要経済指標(2021年1月18日~22日)来週の予定をまとめています。 -
金価格ディリーレポート(2021年1月11日)ドルが強含み長期金利が上げる中で、中国の金価格がロンドン価格比で上昇 -
【金投資家インデックス】2020年のコロナ禍で倍増していた金投資需要が 新年に更に50%急増 -
【銀投資家インデックス】銀投資が2020年に3倍を記録後、2021年初頭に90%増へ
なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。よろしければ、こちらも購読ください。
ロンドン便り
今週も英国は一日のCovid-19による死亡者数がパンデミックが始まって以来最高の1500人を超えたこと、変異種が発見された南米からの渡航禁止、そのような中ワクチン接種は3百万人を超えたことなど、新型コロナウィルス関連ニュースがことごとく見出しを飾っています。
そして、これもコロナ関連ニュースですが、今週はボリス・ジョンソン首相が自宅から7マイル(11キロ強)を超えたオリンピックパークで自転車に乗っているところが見つかり、ジョンソン政権が国民に外出を控えることを呼びかけていたことからも、批判を浴びているとニュースで伝えられていました。
英国政府の規則では、一日一回の運動は認められており、地元での運動は許されています。そこで、地元という定義が明確でないとも非難されていますが、これに対しジョンソン政府は規則違反では無いという認識を伝えていました。
個人的には走ることが趣味ですので、週末は自宅から10キロを超える場所まで走ることはあり、自転車で10キロを超える距離を走るのは普通だと思いますので、この批判は厳しいと思っていました。
個人の自由(リバティー)を重んじる英国では、規則においても事細かに決めるのではなく、個人の判断に委ねることを良しとしているはずなのですが、パンデミックという非日常の中で長くいることによるストレスや変異種感染拡大への危機感などからか、このような状況が起きているように思います。
そのような中、本日はニュースで英国の感染拡大がピークを打った可能性があるとも伝えられており、ワクチンも2月半ばまでに70歳以上と何らかの疾患を持つ人々への接種という政府の目標が達成するとも伝えられており、多少ながら光が差しているように感じ、厳しい冬を超えて訪れる春を心待ちにしているところです。