金市場ニュース

ニュースレター(2020年9月25日)株価急落の現金化とドル高で金は過去5年間で3番めの週間の下げ幅を見せる

週間市場ウォッチ

今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1862.55ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から4.53%下げています。また銀価格は、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり22.70ドルと前週のLBMA価格(午後12時)から16.11%下げています。そして、プラチナは本日午後2時の弊社チャート上では840.37ドルと前週金曜日のLBMA価格から10.50%下げています。

なお、金の週間の下げ幅は過去5年間で3番目に大きい下げ幅となります。最も大きな下げは3月の新型コロナウィルスによる株価急落時で、次に大きな下げは8月に史上最高値の2075ドルを付けた後の下げです。

ちなみに株価は今週EuroStoxx600指標が9%下げるなどさらなる下げをしており、そして金同様に米ドルベースの原油もまた2.9%安のバレルあたり40ドルを割る下げを見せています。それに対しドルインデックスは今週1.9%上昇し、2ヶ月ぶりの高さとなっています。

そこで、今週の金相場の下げは株価の急落によるCash outと呼ばれる資産の現金化とドル高によるものですが、その金の動きと背景を日々まとめてみましょう。

まず月曜日に金相場は株価とともに前日比3.4%まで大きく一時下げることとなりました。これは、株価の大幅な下げで金を含む多くの資産の現金化が進み、そのような中でドルが安全資産として買われて、ドル建て資産の金は更に押し下げられたことからでした。

その背景は、①週末に発表された世界の大手金融機関による不正資金のマネーロンダリングのニュースで銀行株が大きく下げたこと、②先週金曜日に亡くなったギンズバーグ米最高裁判事の購入人事をめぐる議会対立で、米国議会における追加経済対策合意に不透明感が広がったこと、③欧州での新型コロナウイルスの感染第2波によるさらなるロックダウン懸念が広がっていたことからでした。

その後火曜日にエバンズ・シカゴ連銀総裁が「利上げはインフレ目標に達する前に行われる可能性がある」と述べたことが伝えられ、ドルが更に強含み金は押し下げられることとなりました。

なお、今週注目のパウエル米連銀総裁の議会証言では、さらなる政府によるさらなる経済刺激策なく経済回復は難しいということ以外には目新しいものは無く、市場への影響は限定的となっていました。

水曜日金相場は前日の流れを受け継いで下げ幅を広げていました。同日のニュースとしては、米議会下院は2021年の暫定予算案の関連法案を可決し、上院の通過も近いということから、政府機関一部閉鎖は当面回避できることが伝えられ、ジョンソン・エンド・ジョンソンが新型コロナウィルスのワクチン臨床試験の最終段階に入ったことが発表されて株価を上昇させていました。しかし、ドルは引き続き上昇をしていたことからも金の下げ基調を変えることとはなりませんでした。

木曜日は、ドルが上げ幅を緩め米株価が反発する中で、3営業日ぶりに1871ドルと前日終値から0.9%ほど少ないながら上昇していました。

この背景は、①同日の議会証言でムニューシン米財務長官がペロシ下院議長と追加経済対策について協議が始まると述べたこと、②米セントルイス連銀のブラード総裁が、米経済が年末までに完全回復に近い水準となると述べたこと等から株価が反発し、ドルの上昇が一服したことからでした。

本日金相場は、昨日終値の水準からは下げているものの、トロイオンスあたり1860ドル前後の狭いレンジで推移しています。

今週金相場にも影響を強く与えた株価は、欧州株が下げて、その基調を受け継いで米国ダウ工業株30種平均は反落で始まっています。これは米下院民主党が従来の3兆ドルを超える規模から、トランプ政権と共和党との交渉再開を促すために2兆4000億ドル程度の追加経済対策の策定を開始したと伝えられていますが、これも共和党が容認する規模を超えていることから、早期の成立困難という見方が広がっていることが要因のようです。ちなみに、ハイテク株の多いナスダック総合指数とS&P500種は上昇していますが、週間では下げを記録する方向です。

その他の市場のニュ―ス

こちらで、毎週お伝えしているコメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションについては、今週月曜日に発信した先週のニュースレターでお伝えしていますので、他のデーターについてお伝えします。


  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに週間で20.2トン(1.6%)増で1267トンと4週間ぶりに週間の増加傾向であること。

  • 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週は週間で1.61トン(0.31%)増で518トンで、先週全く増減が無かったことで25週間連続の週間の増加で止まっていたものの、週間の上昇傾向であること。

  • 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週312トン(1.81%)減で16,956トンと、6週連続で減少傾向であること。

  • 金銀比価は、昨日83台と2ヶ月ぶりの銀割安傾向だったものの、本日は80へと戻していること。

  • 今週上海黄金交易所(SGE)のディスカウント(ロコ・ロンドン価格と上海価格の差 - プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)は、今週の平均が52と2週ぶりの高さとなっていたこと。

  • コメックスの金取引量は金価格がドル高で大きく下げる中で、平均量で前週比58%上昇していたこと。

来週の主要イベント及び主要経済指標

来週は米雇用統計が金曜日に、その先行指標のADP雇用統計が水曜日に発表され、市場は注目することとなります。

その他、昨日ムニューシン米財務長官がペロシ下院議長と追加経済対策について協議が始まると述べたことで株価が上昇していますが、米追加経済対策関連ニュースは引き続き重要となります。

そして、新型コロナウィルス感染、及びワクチン開発関連ニュースへも市場は注目します。

その他指標の予定は主要経済指標(2020年9月28日~10月2日)をご覧ください。

ブリオンボールトニュース

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。

ロンドン便り

今週英国は、スコットランド、ウェールズ、イングランド、北アイルランドの全て地域で全般感染率が増加していることから、7月初旬に段階解除されていた制限が一部戻されることが発表され、それに伴い10月末で期限切れとなる経済的支援策について、新たな経済支援策とともに昨日スナク財務相が発表したことから、これらがトップニュースで伝えられています。

そこで、簡単に新たな制限についてと経済支援策についてまとめてみましょう。

新規制では、飲食業は午後10時に閉店することが義務付けられ、パブで多くの英国人が行う立ち飲みも禁止され、小売業の従業員のマスク着用も義務化されることになります。また、職場復帰の奨励から一転して、可能な限り在宅勤務が勧告されました。これは、6ヶ月間は続くとのこと。しかし、経済への影響を考慮して店舗や学校閉鎖などのロックダウンは見送られました。

昨日発表された経済支援策は下記のとおりです。


  1. 宿泊や飲食業等を対象に実施している付加価値税の20%から5%への減税期間を1月末から3月末へ延長。この支払も無利子分割払いを認める。

  2. 雇用維持の補助金(賃金最大80%、月額2500ポンドを上限に政府が肩代わり)は10月末で予定通り打ち切るものの、新たな雇用促進制度を発表。それは、中小企業で労働時間を短縮して働く労働者に対して、勤務時間の3分の1以上働くことで、賃金の3分の1ずつを政府と企業が支払うというもので11月から6ヶ月間の導入。

  3. 政府保証100%の融資制度の返済期間を6年から10年へ延長等、「事業中断ローン」も返済期間が延長され、金利のみの支払いや返済猶予の申請を認めるというもの。

明らかに10月末までの雇用支援策のような手厚いものではありませんが、「全ての雇用を救うことは不可能」とした上で、「存続可能な雇用はできる限り保護する」というスタンスに変わったことになります。

スナク財務相の支持率は10月末で終了する雇用支援策と「Eat out Help out(外食して外食産業を助けよう)」という2つの政策でジョンソン政権の中でも最も高いと言われていますが、今回の政策に対しては賛否が分かれているようです。

財政健全化と経済支援の間で厳しい選択をせざるを得ないスナク財務相の白髪が昨日国会で政策を発表する際に増えて見えたのは、気の所為ではないかもしれません。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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