金市場ニュース

ニュースレター(2020年7月31日)金価格はドル建て史上最高値を更新後底値を固めながら1980ドル超えをトライ

週間市場ウォッチ

今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1966.62ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から3.39% 上げ、再び金曜日のLBMA金PM価格としては最高値を今週日々更新し、年初からは30%高で8 週連続の上昇となっています。また銀価格は、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり24.09ドルと前週のLBMA価格(午後12時)から7.19%上昇し、年初からは33.5%高で2013年8月以来の高さ、そして8週連続の上昇となっています。しかし、プラチナは本日午後3時の弊社チャート上では908.13ドルと前週金曜日のLBMA価格から1.87%安、年初からは1.82%の下げとなっています。

今週金相場は2011年に付けたトロイオンスあたり1920ドルの史上最高値を超えて、新たな高値の1980.89ドルを火曜日に付けた後、この水準を超えるべく数回トライしていますが、超えることなく、1940ドルの底値を固めながら1971ドル前後で終えることとなりそうです。

この背景は、米中関係対立激化と2年ぶりの水準のドル安、それを招いたCovid-19の感染拡大と経済回復の長期化への懸念となりますが、日々の動きを下記で押さえてみましょう。

月曜日金相場は、主要通貨で最高値更新に至っていなかったドル建て(9年ぶり)と円建て(40年ぶり)で共に最高値を更新しました。

同日は週末に米国がサンフランシスコ領事館に隠れていたとし、また中国の軍関係者と見ている、リサーチャーが逮捕されたことで、前週米国がヒューストンの中国領事館を封鎖することを命じ、その報復で中国が四川州の成都市の米国領事館を管理下に月曜日に置くなど、米中関係が更に緊迫したものとなっていたことからでした。

この間Covid-19の感染者数は米国で日曜日に62,000人と記録を更新し中国とスペインでも第2波が確認されていました。

なお、銀も同日8%高と7年ぶりの高値を更新し、金銀比価は81を割ってほぼ2年ぶりの低さとなっていました。

火曜日金相場は、アジア時間にトロイオンスあたり1980.89ドルと史上最高値を更新していました。

この間ドルインデックスは2年ぶりの低さを維持し、また米長期金利も下げて、実質金利は引き続きマイナス幅を広げていることからも金の動きを堅固なものとしていました。

同日のニュースとしては、前夜米国共和党が発表した1兆ドル規模の追加の経済対策案は、焦点の失業給付の上乗せは減額するというもので、3兆ドル規模の経済対策と失業給付上乗せの維持を求める民主党との協議が難航しそうという観測で警戒され、また主要米企業の決算も予想を下回り、米株価が全般下げていたことも、金のサポートとなっていました。

この間銀はかなりボラティリティを上げており、同日26.20ドルと7年ぶりの高値を更新し、その後22.33ドルまで15%近く下げて24.33ドル前後へ戻していました。

水曜日金相場はロンドン時間夜のFOMCを待つ中でトロイオンスあたり1960ドル前後を推移していましたが、FOMCの発表を受けて再び1980ドルを試していました。

なお、FOMCでは政策金利は0-0.25%で据え置き、金融緩和は現状維持でしたが、中央銀行ドル供給レポとスワップ設定を3月末まで延長とし、パウエル議長の記者会見では、「私たちの生涯で」最も深刻な景気後退と戦うこと、そのためにあらゆる手段を使う準備があると誓っていたことからも、長期にわたる低金利(マイナス実質金利)観測がドルを押し下げて金をサポートしていました。

木曜日は前日1980ドルを試して押し戻された後、利益確定が進む中で底値を探る動きをしていましたが、1940ドルで押し戻されて再び上昇に転じていました。

その後同日ロンドン午後に発表された米GDPや新規失業保険申請件数は予想よりも良かったものの、GDPは過去最大の減少、新規失業保険申請件数も前回より増加と経済低迷が意識され株価が下げ、金が買われることとなりました。

本日金曜日はその基調を受け継いで、再び1980ドルを試していましたが超えることなく、しかし1970ドル前後の堅固な動きとなっています。

本日のニュースとしては、フロリダでCovid-19による死者数が4日連続で増加、アリゾナで感染者数が増加、ニュージャージーで感染率が急増するなど、コロナウイルスの感染の抑え込みが困難であることが明らかとなっていること。

この間米議会で協議を進めている1兆ドル規模の新型コロナウイルス対策を巡り与野党の対立が続いていることも伝えられ、テクノロジー株の集まるナスダックを除き米株価を押し下げています。

なお、英国政府も月曜日からのさらなるロックダウン解除を、感染者数が再び増加に転じていることから、2週間延期することを本日発表しています。

その他の市場のニュ―ス


  • 木曜日ワールドゴールドカウンシルが前半期の金需給レポートを発表し、全体で前年比6%需要は下げていたものの、宝飾品需要がコロナ禍で半減する中で、金投資需要がそれを埋める勢いで増加していたことが明らかになっていたこと。

  • コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週21日に金価格が大きく上昇を初めた際に、すべての貴金属で増加していたこと。

  • コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは前週比3.83%増の573トンと4月14日以来の高さへ増加していたこと。しかし、今年2月の最高水準より35%減であったこと。そして建玉は3週連続で100万枚を超えていたこと。

  • コメックス銀の先物・オプションのネットロングポジションは、前週比10.8%増の7,410トンと5週連続の増加で5ヶ月ぶりの高い水準であったこと。

  • コメックスのプラチナ先物・オプションのネットロングポジションは、前週比48.89%増で18.97トンと2ヶ月ぶりの高さとなっていたこと。

  • コメックスのパラジウム先物・オプションのネットロングポジションは、前週比71.11%増の9.42トンと4週間連続で増加して引き続き4ヶ月ぶりの高さとなっていたこと。

  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに週間で13.1 トン(1.1%)増で1242トンと引き続き7年ぶりの高さであること。そして、19週連続の週間の増加の傾向であること。

  • 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週は週間で8.49トン(1.75%)増で490.7トンと過去最大を更新し、19週間連続の週間の増加傾向であること。

  • 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週391トン(2.36%)増で17,771トンと史上最大で、13週連続の週間で増加傾向であること。

  • 金銀比価は今週水曜日に81台を割って2年ぶりの銀割安解消水準となり本日は81台を推移していること。

  • 今週上海黄金交易所(SGE)のディスカウント(ロコ・ロンドン価格と上海価格の差 - プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)は、今週の平均が-54.69と3月半ば以来の高さとなっていたこと。

  • コメックスの金取引量は今週金価格が史上最高値へ近づく中で週平均量で前週比30%増加し、コロナ禍で英国でロックダウンに入る直前の高さまで戻していたこと。

来週の主要イベント及び主要経済指標

今週はFOMCや米国第2四半期GDP等の重要イベントをこなしながら、引き続きCovid-19感染拡大は止まらず、経済指標もその悪影響が見えることからも金は週終値ベースで8週連続の上昇傾向で推移しています。

そのため、来週も新型コロナウィルス関連ニュースに市場は注目しますが、それに加えて米雇用統計が金曜日に発表され、水曜日にはその先行指標のADP全国雇用者数、木曜日にはイングランド銀行の政策金利発表と重要指標とイベントが続きます。

その他指標では、月曜日の日本の第2四半期GDP、中国のCaxin製造業PMI、ドイツとユーロ圏と英国の製造業PMI、米国ISM製造業景況指数、水曜日の中国のCaxinサービス部門PMI、ドイツとユーロ圏と英国と米国のサービス部門PMI、ユーロ圏小売売上高、米国貿易収支とISM非製造業景況指数、木曜日の米新規失業保険申請件数、金曜日の中国とドイツの貿易収支、ドイツの鉱工業生産等となります。

ブリオンボールトニュース

今週金価格はドル建てでも史上最高値を付けたことからも、弊社データ及びリサーチ・ダイレクターのエィドリアン・アッシュのコメントが多く取り上げられています。

日経新聞グループのQuick社の経済サイトQuick Money WorldNY金が9年ぶり最高値 ドル安と米中対立で上昇に拍車

ここで、今週NY金先物市場のドル建て金価格が2011年9月6日の1923.73ドルを更新し史上最高値を付けたこととその背景を解説し、市場著名アナリストのコメントともに、弊社データ「英ロンドンを拠点に個人向けの 金オンライン取引を手掛けるブリオンボールトによると、20年前半期の同社における新規顧客数は過去5年間の平均の3倍とな っており、7月22日は金・銀・プラチナの取引量が創業以来3番目の多さだったという。」を取り上げています。

CNBCの「金は安全資産なのか?

この番組では、金市場専門家と共に、弊社リサーチダイレクターのエィドリアン・アッシュが現在の市場の背景、ドルの基軸通貨としての位置づけに変化があるのか、今が金投資をすべきなのか、仮想通貨と金、そして金と銀の先行きといった投資家の質問に答えています。

ここで、エィドリアンはドルの基軸通貨としての位置づけはこれに変わるものが無いためにも続く、そして金と銀の先行きとしては、長期投資目的であれば金、短期であれば銀、それは銀のボラティリティからと答えています。

豪の主要日刊紙のオンラインサイトのナショナルの「新型コロナの再吸気不透明感でゴールドラッシュが世界に広がり、金価格が急騰

ここで、エィドリアンの「新型コロナによるロックダウンが解除され世界経済が再開している中、投資家は、企業倒産、債務不履行等のリスクによる他の資産への懸念をつのらせている。」というコメントを紹介した上で、弊社顧客のアンケート結果を取り上げています。

そして、弊社の85,000人の顧客において回答した1300人の顧客の78%が金価格が年末までに30%上昇すると答え、その背景として66%が企業倒産や債務不履行等の社会不安、そして他の理由としてCovid-19のワクチンが見つからないこと、地政学リスク等を上げていると紹介しています。

主要経済サイトのCityWireの金価格は次にどこへ達するのか?

ここで、ブリオンボールトが年末までに金価格が30%高を予想していると紹介し、弊社が顧客に行ったアンケートで、Covid-19による企業倒産が世界経済への最大な脅威で、10%以下の人々がインフレが世界経済を揺るがすと見ていると紹介しています。

ニューヨーク・タイムズの金はどこで保管されているのか?

ここで、エィドリアンの「人々は株や国債や不動産等の伝統的に利益を上げる資産が価値を下げるという懸念があると、金を購入する。」が紹介されています。

英国主要ニュース番組スカイニュースの金価格がなぜ急騰しているのか?

このインタビューで、エィドリアンは、インフレ期待からも実質金利の低下で通貨の購買力が下げていること、中央銀行や主要国政府への信認が低下すると金は魅力を増し、金にとっては「Perfect Storm(完璧な嵐)」と述べています。

また、投機家筋の動きとして、金先物・オプション市場がCovid-19のロックダウンによるロジスティックス問題で3月半ばから取引量が下げていたものの、やっと戻りつつあること。

金価格が如何に高騰していても金鉱会社が新たな金鉱を見つけることが困難となっていて、供給量はほぼ横ばいであること、小規模な金鉱からの供給量が増えているものの、規制などを整える必要があると述べています。

BBCの投資家が懸念を高めて金が最高値を付ける

ここでエィドリアンのブリオンボールトの保管料が0.12%に過ぎないこと、そして400トロイオンスのラージバーの一部を売買することでスポット価格と呼ばれる、専門市場が取引に使い今回最高値を付けた価格により近い価格で売買することができることを紹介しています。

そして、大部分の顧客は投資効果からも金を購入し売却時まで保管を行うが、望まれれば現物の引き出しも小型の地金で可能と述べています。

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。

ロンドン便り

今週も英国では先でもお伝えしたように、局所的な感染の広がりで、イングランド北部の地域のロックダウン解除がステップバックしたことや、イングランド全体の次の解除ステップが2週間延期されたことなど、新型コロナウイルス関連ニュースがトップニュースで伝えられています。

そのような中、英国で育ち英国を拠点に世界で活躍をしている日本人のリナ・サワヤマさんが、英国の音楽賞に英国籍を保有していないことから申請もできないというのことがSNS等で話題となっているのでお伝えしましょう。

リナさんのお母様とは私もビジネスネットワークで知り合う機会があり、リナさんの事はデビュー前からモデル等をしながら自分の音楽を作っていたことをお聞きしていたこと、そしてお会いする機会もあったことから母親仲間として応援をしていました。

その後、彼女自身が作詞、作曲、プロデュースしたミニアルバム「Rina」が話題になり、世界各地でコンサートも開くことができるようになり、最新のアルバム「Sawayama」はエルトン・ジョン氏からも「この一年で最も有力な一枚」とまで高い評価をしてもらっていました。

しかし、リナさんが目標としていた「マーキュリー賞」や「ブリットアワード」といったイギリスを代表する音楽賞には英レコード産業協会(BPI)が国籍条項を設けていることから、英国で4歳から過ごし、英国の大学を卒業し、この地を拠点で活動をしていたにもかかわらず英国籍を持たないリナさんは対象にすらならないとのこと。

ちなみに、欧州では多国籍を持つことは一般的で認められていますが、日本は法律上で重国籍を認めていません。法務省は、「日本の国籍と外国の国籍を有する人(重国籍者)は,一定の期限までにいずれかの国籍を選択する必要があります(国籍法第14条第1項)。」とし、「期限までに選択をしない場合には,日本の国籍を失うことがありますので,注意してください。」としています。

そこで、国際結婚で生まれた子どもたち等は22歳までに国籍を選択しなければなりません。これが、父と母の両方の国を自分のルーツと感じている子どもたちにとって困難なことは想像いただけることでしょう。

多様な国籍の人々が活躍することで英国の文化や経済は反映を続け、2012年のロンドンオリンピックを契機に、英国はクリエイティブ産業を基幹産業に据えるという明快な方針転換を行っているとのこと。そこで、先の選考基準については近い将来に変わっていくことも考えられます。そして、日本もまたより国際化へと進むことを望み、重国籍に寛容となる可能性もあるでしょう。個人的にはそうであってほしいと願います。

そして、今回のことをかなり残念に感じていると聞いていいるリナさんが次のようにインタビューには答えていることを知り、心強くも思い紹介させていただきます。

「すぐに何かが変わるとは思わない。ただこのことがきっかけで、英国に貢献する多くのアーティストたちに門戸が開くきっかけになれば。」

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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