金市場ニュース

ニュースレター(2020年6月19日)新型コロナウイルスの感染拡大懸念がリスクオンを抑え込み金は1週間ぶりの高さへ

週間市場ウォッチ

今週金曜日LBMA価格のPM価格(午後3時)の金価格はトロイオンスあたり1734.75ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から0.07% 上げていました。また銀価格は、金曜日のLBMA価格(午後12時)はトロイオンスあたり17.525ドルと前週のLBMA価格(午後12時)から0.52%下落しています。そして、プラチナは金曜日のLBMA価格は820ドルと前週金曜日のLBMA価格から0.24%下落となっています。

今週は、経済活動早期回復期待と新型コロナウイルス感染拡大及び第2波懸念で、リスクオンとオフのせめぎあいの中で、月曜日から水曜日までほぼトロイオンスあたり1704ドル~1736ドルのレンジ内で推移した後に、金曜日に感染拡大懸念がリスクオン基調も抑え込み、レンジを抜けて1週間ぶりの高さで終えることとなりました。それでは、日々の細かな動きについては下記をご覧ください。

週明け月曜日、米国と中国における新型コロナウイルスの感染第2波の拡大懸念から、株価が下げる中で金も下げ、徐々にその下げ幅を取り戻していました。

これは、早朝ドルが強含み、同様に株価の急激な下げもあり、流動性確保の現金化の可能性などが指摘されていました。

火曜日金相場はトロイオンスあたり1732ドルまで一時上昇した後に1726ドルへ戻して終えていました。

この間株価は全般上昇し、米長期金利は新型コロナの第2波と経済活動停滞長期化が懸念されて下げていた先週木曜日から4営業日連続で上昇していました。

これは、同日発表された米小売売上高が予想の8%を大きく上回る17.7%であったこと、また米政権が大型インフラ投資を計画していると伝えられたこと、また前日にFRBが個別企業の社債の購入を開始すると伝えられたことで、リスクオン基調が高まっていました。

なお、同日行われたパウエルFRB議長の議会証言では、早期の景気回復に関して慎重な姿勢をにじませたものの、「経済指標の中に緩やかな持ち直しを示すものがある」と述べたこともサポートとなっていました。

しかし、同日北京の学校が感染の広がりで封鎖されたことや、フロリダとテキサスの感染数や入院数の急増も伝えられていたことから、安全資産の金を手放すことも難しいというところもあったようです。

水曜日も世界株価が神経質な動きをしながらもほぼ全般上昇する中で、金相場はトロイオンスあたり1713ドルから1729ドルのレンジ内の動きと堅固さを見せていました。

この背景は中国北京、米国、イランにおける新型コロナウイルスの第2波への懸念に加え、同日ファウチ米国立アレルギー感染症研究所長が感染拡大に警笛を鳴らしたと伝えられたことも要因となっていたようです。

しかし、米国の景気拡大や大型経済対策はリスクオン基調を高めていることから、金の頭を押さえていました。

木曜日金相場は、ロンドン時間午前中にトロイオンスあたり1736ドルまで一時上昇したものの、その後1723ドルと前日の終値から下げていました。この間ドルインデックスは上昇し、世界株価は全般下げていました。

この背景は、同日も新型コロナウイルスの感染拡大が伝えられていること、また同日発表の米国新規失業保険申請件数が150.8万件と前回修正値156.6万件より改善たものの予想の130万件を上回っていたことも雇用回復の懸念を高めていたことで、安全資産としてドルが強含む中で、その強さに金は頭を抑えられていました。

なお、同日イングランド銀行は金融政策を発表し、政策金利は0.1%で据え置いたものの、資産買い入れ枠を1000億ポンド拡大し、総額7450億ポンドに引き上げたことから、ポンドが為替市場で弱含み、ポンド建て金相場はトロイオンスあたり1386ポンドと、先週金曜日以来の高値を付けていました。

また、同日ロイターが、年末の移行期間終了後の英国の合意なき離脱に備えることをドイツ政府がEU諸国に呼びかけていることが内部書類から明らかになったと伝えており、合意なき離脱への懸念もポンドを弱含まさせていました。

金曜日金相場は、ロンドン午後にリスクオフ基調が高まり、トロイオンスあたり1743ドルで終え、一週間ぶりの高さへ上昇することとなりました。

これは、米国カリフォルニア州とフロリダ州で新型コロナウイルス感染者数の一日あたりの増加数が過去最高になり、メキシコでも同様に新規感染者数が過去最多を記録、そして、韓国と中国でも第2波らしき感染数増加が見られ、北京の2つの空港で800便あまりの運行が取りやめられたことが次々と伝えられ、リスクオフ基調が高まり米株価が下げ、ドルが強まる中でとなりました。

同日は、今週行われた米中協議の結果「米中貿易協議の第1段階の合意に沿うべく、中国が米農産物の購入を加速する」と伝えられたことで、上昇していた株価は上げ幅を失い下げることとなりました。

なお、ポンド建て金価格はポンドが対ドル下げる中でトロイオンスあたり1411ポンドと3週間ぶりの高さまで上昇していました。

これは、ドルがリスクオフ基調で対主要通貨上昇してポンドが下げる中、同日英国の債務残高が1963年以来GDP比100%上回ったことが伝えられたことも要因であったようです。

 

その他の市場のニュ―ス


  • コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週9日、金価格が前週金曜日の予想を上回る米雇用統計で下げた水準から戻す中で、パラジウム以外の全ての貴金属で減少していたこと。

  • コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは前週比6.8%減の396トンと昨年6月4日以来の低さへ減少し、3週連続の下げ。建玉も3週連続で100万枚を割って、引き続き一年ぶりの低さとなっていたこと。

  • コメックス銀の先物・オプションのネットロングポジションは、前週比13%減の3,672トンと5週ぶりの減少で、3週で最も低い水準となっていたこと。

  • コメックスのプラチナ先物・オプションのネットロングポジションは、前週比13%減で15.9トンと5週連続で増加後に2週連続の減少となっていたこと。

  • コメックスのパラジウム先物・オプションのネットロングポジションは、前週比37%増の2.6トンとなっていたこと。

  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日まで4営業日連続で変化がなかったものの、金曜日に23.1トン(2%)増加し1159トンと、2013年4月11日以来の規模で、13週連続の週間の増加となったこと。

  • 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週は週間で2.91トン(0.65%)増で450トンと過去最大となり、13週間連続の週間の上昇となったこと

  • 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週139トン(0.93%)増で15,130トンと史上最大で、7週連続の週間で増加であること。

  • 金銀比価は今週月曜日に3週間ぶりに100を付けた後98と多少ながら銀割安傾向が緩和されていたこと。

  • 今週上海黄金交易所(SGE)のディスカウント(ロコ・ロンドン価格と上海価格の差 - プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)は、今週の平均が12.33と先週の8.12から再び上昇していたこと。

  • コメックスの取引量は今週は週平均量で前週比4%減少し、引き続きロックダウン後の低い取引量となっていること。

来週の主要イベント及び主要経済指標

今週は結果的に新型コロナウイルスの感染拡大関連ニュースが市場を動かすことになりました。そこで、この関連ニュースに市場は注目しますが、主要経済指標においては、月曜日に米国中古住宅販売件数、火曜日にドイツとユーロ圏と米国の製造業とサービス部門のPMI、米国の新宿住宅販売件数、水曜日のドイツIFO企業景況感指数、木曜日の米国第1四半期のGDP、GDP個人消費、コア個人消費PCE、耐久財受注、新規失業保険申請件数、金曜日の米国個人所得、個人消費支出PCE、ミシガン大学消費者態度指数等となります。

ブリオンボールトニュース

今週も多くのでメディアで弊社が取り上げられています。


  • CNBCのTV18 のインドの金市場に関する番組

この番組で弊社リサーチダイレクターのエィドリアン・アッシュが、インドの著名貴金属専門家とともにインタビューされています。

まず金価格の見通しに関しては、新型コロナウイルスの経済へのダメージ、主要国の金融政策、高止まりしている株価のリスク等と、金価格へのプラス要因はあるものの、ドル高はドル建て金価格にとってはマイナス要因と述べています。

また、インドの「ゴールドローン(金を銀行に預けて、裏付けにローンを受ける)」の増加に関しては、インド政府が金を正規の金融システムに組み込むという政策が実行され、タイでコロナ危機下で現金を得るために人々による金売却が急増しタイ政府がペースを落とすことを勧告した例からすると、人々にとっても金を売却しなくて良いことは有効なものだろうと述べた上で、しかし中国同様に余剰金を国外へ輸出できないという規制は国内の金のディスカウント(国外価格より割安)を進め、何らかの是正が必要なのではないかと問いかけています。

この記事では、ブリオンボールトにおける新たな金購入者数が、過去3ヶ月で昨年の5倍を記録していたことが紹介いただきました。

この記事ではウイスキー投資が取り上げられ、弊社のグループ会社のウイスキー・インベスト・ダイレクト(WID)が取り上げられ、WIDが5年前に弊社ブリオンボールトの経営陣によって設立され、オンラインで、ウイスキーを作っている蒸溜所の樽で熟成されている間にオンラインでウイスキーを売買することができると紹介いただいています。

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

 

なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。

ロンドン便り

今週英国はロックダウン解除へむけて、新型コロナウイルスの感染数が指数感染的に広がっていないことから警戒レベルが1段階下げられ「3」となり、それに先駆け今週月曜日から、必需品以外のブティックやショッピングモールがオープンして、今週水曜日からプレミアリーグも観客抜きで試合が開始されました。

残るは7月初めに予定されているレストランやパブの再開となりますが、より平常の日々に近づきあります。

そのような中、プレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッドに所属する、22歳のイングランド代表選手でもあるマーカス・ラッシュフォード氏が、新型コロナウイルスのロックダウン下で、経済的に打撃を受けている低所得者層の子どもたちへの学校給食無料提供を、夏休み中も継続するように政府に要望していた活動が英国政府を動かしたことが伝えられています。

これにより、130万人の子どもたちが、これまで学校が閉鎖中は行われていなかった給食の無料提供を受けられるようになるとのこと。ラッシュフォード氏自身も、子供の頃に母子家庭で無料給食に頼った経験があり、「空腹のまま眠る子供がいてはいけない」と要望書をツィッターで下院議員に向けて投稿していました。

政府は当初その要望を受けるのは難しいと言っていたものの、ラッシュフォード氏のメディアのインタビュー等を通した効果的な活動で、ジョンソン首相も数日後にはUターンをすることになったようです。

彼自身も様々なファンドレイジングの活動や彼自身の寄付を通じて、今年4月には2000万ポンド(26億円)程をすでに、このような低所得者層の子供たちの無料給食支給のためのチャリティーに寄付を集めており、その姿は心を打つものがあります。

このように、今回のコロナ危機が経済へ大きなダメージを残し、今後も有効なワクチンや治療薬が開発されるまでは、人々の行動制限が続くことになるかと思いますが、先の一例のように今後の社会のあり方を再度考えさせる機会になり、人々にとってより良い社会づくりを進めるきっかけになるのであればと、すでに世界で45万人以上の尊い命が失われたことで学ぶべきことはあるはずと、願わずにはいれません。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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