金市場ニュース

ニュースレター(2020年11月6日)バイデン氏当選、ねじれ議会観測のリスクオンで金価格は7週ぶりの高さへ

週間市場ウォッチ

今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1942.05ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から3.20%高と7週ぶりの高さとなっています。また銀価格は、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり25.80ドルと、やはり7週ぶりの高さで、前週のLBMA価格(午後12時)から9.21%上げています。そして、プラチナは本日午後2時の弊社チャート上では912.38ドルと2週ぶりの高さで前週金曜日のLBMA価格から7.09%上げています。

今週金相場は、大統領選の結果を待つ中レンジ内の取引で押さえられていましたが、結果が発表される中で当初接戦であることでリスクオフのドル高で多少下げたもの、その後はリスクオンでドル安、株高の中、7週ぶりの高さへ上昇することとなりました。

この後半の動きは、バイデン氏勝利、しかし上院共和党、下院民主党のねじれ議会で、大きな政策変更はできない観測、つまりは政府による追加刺激策とFRBの緩和的金融政策継続、バイデン氏公約の増税とテクノロジー企業への規制は無しというシナリオが広がったことからでした。

それでは、日々の動きを他のイベントも含めてお伝えしましょう。

週明け月曜日は、ドルが上昇する中で、選挙結果後の混乱懸念から金の需要も高まり、トロイオンスあたり1893ドルと前週末終値から0.8%ほど上昇して終えていました。

翌火曜日は、米国選挙の投票が行われる中で、事前世論調査でバイデン氏の優勢が伝えられていたことからも、選挙結果が混戦ではなく早期決着となるという楽観的な観測も入り、リスクオンでドルが弱含み、金相場は心理的節目の1900ドルを超えて上昇していました。

水曜日は、開票が進む中で一時トランプ大統領が予想以上に健闘していたことで一時リスクオフのドル高で、金相場はトロイオンスあたり1883ドルまで下げたものの、その後株式市場が恐れていたブルーウェイブ(バイデン氏当選と民主党が上院を抑える)ではなく、上院は共和党が維持する方向であることから、ねじれ議会が好感されてリスクオンが入り株価が上げる中で、ドルが下げて金相場は再び1900ドルを超えて上昇していました。

また、同日今週金曜日の雇用統計の先行指標であるADP全国雇用者数は36.5万人と予想の65万人を下回っていましたが、この市場への影響は限定的となっていました。

木曜日は、前日のリスクオン基調が継続し、日経平均が年初来高値で2年1ヶ月ぶりの高値を付けるなど、世界株価が4日間で4月以来のペースで上昇する中で、ドルインデックスが一週間ぶりの低さへ下げ、金相場はトロイオンスあたり1952ドルと7週ぶりの高さまで一時上昇していました。

また、同日はイングランド銀行の政策金融発表が行われ、予想通り政策金利は据え置かれましたが、資産購入プログラムが1500億ポンド追加され8950億ポンドとなったことで、さらなる資金が市場に流入するという観測はリスクオンを更に高めた模様です。

なお、同日はFOMCが行われロンドン時間夕方に予想通り金融政策は据え置かれたことが発表され、パウエル議長の記者会見も行われましたが、大統領選結果と追加経済政策合意を前に様子見ムードが強く、この市場への影響は限定的となっていました。

本日金曜日は、世界株価が前日の4月以来の上げペースを落とす中で、金相場もトロイオンスあたり1960ドルまで上昇したものの、1950ドルを超えるあたりで推移しています。

本日はロンドン昼過ぎに米雇用統計が発表され、63.8万人と予想の60万人を上回り長期金利が上昇したことで、多少金相場は頭を抑えられることとなった模様です。

なお、本日大統領選の激戦州5州中4州でバイデン氏がリードしていることが伝えられていますが、その一つのジョージア州は僅差であることから再集計が行われると伝えられており、長期戦となる観測がリスクオン基調を多少弱めているようです。

その他の市場のニュ―ス


  • 本日ワールドゴールドカウンシル発表の金ETFの10月の数値は、先月も全体で20.3トン(0.6%)増加し、11ヶ月連続の残高増加で2006年4月以来の長期のものとなったこと。年初からの増加量は1022トンで、総計3899トンと史上最大。

  • コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週27日に米国選挙前で様子見モードで狭いレンジでの取り引きとなっている際に、金とパラジウムは減少し、銀とプラチナは増加していたこと。

  • コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは前週比2.74%減の409トンへ減少していたこと。また、建玉は5週連続で100万枚を割っていたこと。

  • コメックス銀の先物・オプションのネットロングポジションは、前週比4.3%増の6496トンと2週連続の増加で、7月21日以来の高さとなっていたこと。

  • コメックスのプラチナ先物・オプションのネットロングへと4週間ぶりにネットショートポジションから切り替わり、前週比131%増で1.06トン。

  • コメックスのパラジウム先物・オプションのネットロングポジションは、前週比1.06%減で12.79トンと、2月25日以来の高い水準から2週ぶりの減少。

  • 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに週間で5.3トン(0.4%)減で1252トンと週間の減少傾向であること。そこで、3週連続で減少、8月の史上最高値以来の14週間で9週の週間の下げとなる傾向。

  • 金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、今週は週間で3.6トン(0.68%)増で530.78トンと史上最高残高で、7週連続の上昇傾向で、引き続き3月の金価格急落以来一度も週間の下げを記録していないこと。

  • 銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週50.39トン(0.29%)増で17,462トンと週間の上げの傾向で、2週ぶりの増加、8月の7年ぶりの高値以来14週間で5度めの週間の上げの傾向であること。

  • 金銀比価は、78台を推移していたものの、本日76台へと10月12日以来の低さ(銀割安が解消傾向)となっていたこと。

  • 上海黄金交易所(SGE)のディスカウント(ロコ・ロンドン価格と上海価格の差 - プレミアムは中国での需要の高さ、ディスカウントは需要の低さを示す)の週平均は24.80と7月10日以来の低さであったこと。この背景は人民元が対ドル28ヶ月ぶりの強さを維持していたことから。

  • コメックスの金取引量は、今週金価格が米選挙結果が出る中で10月の低いボラティリティーから高まったことから前週比18%増加し、9月末以来の高さであったこと。

来週の主要イベント及び主要経済指標

今週は米国の大統領及び連邦議会選挙の結果発表、FOMC、米雇用統計と重要イベント及び指標がありましたが、大統領選の結果は、トランプ大統領が法廷闘争へ、そして僅差の州の投票結果は再集計を要求するとされていますので、来週以降もこの動向へ注目が行くこととなります。

なお、欧米のCovid-19の感染および都市封鎖関係、そしてワクチン関連ニュースも引き続き重要となります。

また、経済指標では、来週中国、米国の消費者物価指数、英国とユーロ圏の第3四半期GDPが発表され、市場は注目することとなります。

その他、経済指標の詳細は主要経済指標(2020年11月9日~13日)をご覧ください。

ブリオンボールトニュース

今週金相場が大きく動く中で、弊社リサーチダイレクターのエィドリアン・アッシュのコメントが主要経済サイトMarketWatchで取り上げられています。

11月3日付「米国の選挙結果を待つ中で金が1週間ぶりの高さへ

ここで、米国選挙とFOMCの結果を待つ中で、金相場が一週間ぶりに上昇していることを紹介し、エィドリアンの「この金の上昇は、1週間前の水準へ戻したのみで、結果を待つ中のポジション整理であるようだ」というコメントを取り上げています。そして、「金現物への長期の見通しは強く、どの候補が勝とうと、中央銀行のこれまでに例のない金融政策の助けを得て、コロナ危機対応のために大幅な財政赤字を起こす経済政策は続けざるを得ないことからも、根底の需要は継続している」と続けています。

11月5日付「金が7週ぶりの高値で終える

ここで、金価格が上昇している理由として、イングランド銀行の資産購入プログラムの拡大、ドル安、米国選挙でねじれ議会から政策の大幅な変更が無い観測の広がりを上げ、エィドリアンの「トランプの開票を止めるべきというツィートでも金価格は上昇した」というコメントを紹介しています。そして、「トランプ氏は選挙に負けるかもしれないが、彼のツィートの市場への影響力は未だ残っている」と続けています。

今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。

なお、弊社のYouTubeチャンネルでは、日々の弊社の金価格ディリーレポート(英文)を音声でもお届けしています。

ロンドン便り

今週英国は第2のロックダウンに木曜日から入りその関連ニュースが、米国の大統領選とともにトップニュースで伝えられています。

そこで、英国政府が経済への悪影響と、人々のリバティー(自由)を規制することからもできる限り避けたかった今回のロックダウンの規則は、前回で学んだ事も生かされた内容となっていますので、その異なる点をリストアップしてお伝えしましょう。


  1. 屋外で1人の友人とソーシャルディスタンスをとって会える

  2. 幼稚園や大学を含む学校は継続される

  3. 公共トイレを閉めなかったこと

  4. 一人暮らしをしている方がサポートをされる、もしくはサポートしている家族と一つのバブル(大きな家族枠)を作ることが可能

  5. オンラインで購入した商品を特定の店でピックアップできる

  6. 屋外で同居していない友人や家族と会う時にベンチや芝生等に座れる

  7. エクササイズは一日一回でなく何度でもできる

  8. 歯医者と眼医者が継続利用できる

  9. 一定の年齢以上や糖尿病等の持病や癌などの治療を受けて外出禁止されていた人々の外出禁止は無し

このように、人々の自由を制限することは、感染拡大を防ぐことで必要である中で、前回の厳密なロックダウンで精神面での問題等が取り上げられたことから、それらが考慮された内容となっており、個人的には1と7は嬉しいものです。

ただ人々の反応は、ロックダウン前日までに前回は街から人がいなくなったのとは反対に、ロックダウンに入る前にクリスマスの買い物をする長蛇の列や、お気に入りのレストランやパブで食事をする多くの人々が見られるなど、人々の危機感はかなり薄いように感じます。

このロックダウンは12月2日までとは言われていますが、この一ヶ月で感染率が抑えられて無事終り、皆がクリスマスを家族と迎えることができることを祈りたいと思います。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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