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記録的な投資需要が銀とプラチナの需給バランスを供給不足へ

銀のほぼ1万トンの需給量の差、そしてプラチナの排ガス浄化触媒減少分も賄う投資需要が記録されました。
 
銀とプラチナへの記録的な投資需要は、2020年にコロナ禍で第2次世界大戦以来2度めの世界的景気後退を起こす中で、これらの貴金属の需給バランスを供給過多を供給不足へと転換させていました。
 
貴金属専門コンサルタントのMetals Focusがまとめ、 シルバー・インスティテュートが先週発表した最新レポートをブリオンボールトが分析した結果、今年の銀地金需要の半分以上が銀地金への投資需要で占められていることが明らかとなっています。わかります。
 
またプラチナにおいては、同様にMetals Focusがまとめ、 ワールド・プラチナム・インベストメント・カウンシル(WPIC)が発表したレポートによると、小規模なプラチナ地金、コイン、プラチナを裏付けとしたETFへの投資、もしくは安全に保管されている地金の直接所有を含めた投資需要が、プラチナの世界需要の4分の1以上を占めているとのことも明らかとなっています。
 
一方工業用需要は、それぞれ4年と11年ぶりの低水準に落ち込んでおり、宝飾品の需要も1945年以来の世界経済活動の収縮の中で急落し、 世界銀行の推計では一人あたり6.2%減となっているとのことです。
 
プラチナの場合は、1975年まで遡って記録されてきている投資需要(投資家による売却を除く)が、ディーゼルエンジン車の有害な排出ガスを削減するための触媒需要を初めて上回ることを意味しています。
 
2020年以前は、1980年代半ばにディーゼル乗用車に初めて広く搭載されて以来、「工業用」貴金属であるプラチナの単一用途需要としては、一貫してこの触媒需要が最大となっていました。
プラチナ投資需要対排ガス浄化装置需要 出典元 ブリオンボールト
 
昨年の急増がなければ、2020年の自動車リサイクルは記録を更新していたと推測されますが、新たなデータによると、2020年の自動車業界からのプラチナ需要は1985年以来の最も低いものでした。
 
しかし、WPICは、「今年のプラチナ市場は 大幅な供給不足になると予測されている」と述べ、 Metals Focusの予測の世界の需要と供給の間に年間で37.4トンの不足分あるとレポートしています。
 
「パンデミックによる鉱山閉鎖による供給不足、南アフリカでの 精錬加工の中断、投資需要の急増という要因からも、Covid-19の影響を受けた自動車、宝飾品、 産業用需要の減少を相殺する以上のものとなると考えます。」と続けています。
 
プラチナへの投資は、2020年の白物金属の総需要の27.7%へと急増し記録を更新しましたが、銀地金への投資はさらなる増加を見せて、ブリオンボールトの分析では53.3%という最近の最大の需要に達していました。
 
この全体の需要に占める投資需要は、過去25年間でそれぞれ5.3%と13.3%でしたが、中国が1935年に銀本位制を廃止して以来、銀地金を貨幣として必要としなくなったため、中国が公的機関で保有していた銀を大量に売却し、銀地金への投資が2000年ぐらいから激減していたのでした。
 
銀投資需要の需要全体の割合(%)と銀価格 出典元 ブリオンボールト
 
「(2020年の銀投資急増)は 価格のボラティリティーの高さと、健全な価格への期待を反映しています」と、シルバーインスティテュートは先週初めにMetals Focusのデータを発表し、述べています。
 
しかし、主要な消費市場であるインドの所得の低迷により、宝飾品の需要は4分の1近く減少し、銀製品の需要は3分の1に減少し、「工業需要は9%減少し、5年間で最も低い水準となる」ことを予想しています。
 
このような状況の中で、 銀の産業用途の下落は、「サプライチェーンの混乱が激しく、エンドユーザーは在庫補充に慎重になり、工場は労働力供給の問題に直面している」とシルバー・インスティテュートは述べています。
 
銀市場の供給を見ると、2020年の採掘とスクラップによる供給量は、Metal Focusの最新の推計では、過去10年間で初めて3万トンを下回ることが予想されています。
 
そのために、投資以外の銀需要が1995年以来の低さへ下げる中で、銀貨、小規模な銀地金、銀ETFの投資需要は急増し、9,906トンの供給不足を起こしています。
 
「主要な産業需要に関しては...Metal Focusは、太陽光発電の需要が11%減少すると予測しています。」とシルバーインスティチュートは述べ、「太陽エネルギー産業は、このような減少を見せながらも歴史的に高い水準であることに変わりはありません。」と続けています。
 
いわゆる「グリーン」テクノロジーもプラチナの需要を押し上げることになるとWPICは 予測しており、共にプラチナ触媒を必要とする「定置型燃料電池システムとグリーン水素電解槽容量」は、 「2021年末に向けてある程度の勢いが出始めるだろう」と述べています。
 
先週、2030年以降のディーゼル車やガソリン車の新車販売を禁止した英国政府の「グリーン産業革命」に向けた 10項目の新計画では、「洋上風力」がトップに挙げられ、「水素」がそれに続いています。
 
あるトレーディングデスクは、今週の プラチナ価格は、コロナワクチンの臨床試験の良好なニュースが伝えられて 他の貴金属が苦戦している中、「堅固な」パフォーマンスを見せていると述べています。それは、引き続き3年ぶりの高さであった1月の高値の10%低い水準ですが、9週間ぶりの高さのトロイオンスあたり940ドルを付けています。
 
また、PGMの姉妹貴金属で、ガソリン車の浄化触媒装置の需要が80%を占めるパラジウムは、この間1週間ぶりの高さのトロイオンスあたり2355ドルを付けていました。これは、2月のコロナショック以前に記録した高値の20%下回る水準です。
 
2018年半ば以来パラジウム価格を下回っていますが、これは現代史においては2度のみしか起きていません。ちなみにプラチナのディーゼル車の排ガス浄化装置の触媒としての需要は、全体の40%にすぎません。
 
Metals FocusとWPICは2021年に プラチナの産業用途の急増を予想しています。
 

ブリオンボールト社のリサーチ部門は、オンライン金取引所有サービスを提供する世界有数の英国企業ブリオンボールトの、リサーチ・ダイレクターのエィドリアン・アッシュ、日本市場担当ホワイトハウス佐藤敦子を含む国際市場担当者によって構成されています。

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