金価格ディリーレポート(2020年11月23日)コロナワクチンの来月からの実用化の期待と良好な経済データで金は4ヶ月来の低さへ
金価格は、月曜日のニューヨーク取引開始時にトロイオンスあたり40ドル近く下落しました。
これは、本日コロナワクチンの良好な臨床試験結果と予想を上回る経済指標の発表を受けて、金地金現物価格がトロイオンスあたり1850ドルサポートラインを割ったことから下げが下げを呼んだことが背景となりました。
シカゴ連銀は、10月の国内経済指標がさらに上昇したことを 報告していましたが、民間の経済データをまとめるMarkit社は、製造業が上昇傾向である中、サービス業の購買担当者を対象とした 調査でも、今月は5年以上ぶりの最も速いペースで上昇したと発表していました。
また、本日オックスフォード大学の研究者によるワクチンの臨床試験結果で「米連銀が究極な緩和政策を長期間続ける中では特にリスク基調が高まった」という通貨アナリストのコメントをブルームバーグが 引用しています。
これらのニュースを受けて、欧州株の指標であるStoxx600指数は3週連続の上昇で2月下旬以来の高値に上昇していました。また、米国株式先物は、政権内の当局者が米国の 集団予防接種が間もなく開始される可能性があると述べた後、ファイザー(NYSE: PFE)とモデナ(Nasdaq: MRNA)の株価がロンドンで上場されているアストラゼネカ(Astrazeneca)(LON: AZN)同様に上昇していました。
しかし、これとは対照的に金価格は1836ドルと4ヶ月ぶりの安値を記録し、8月初旬の史上最高値を240ドル下回る低い水準へと下げていました。
米国国債価格も下落し、10年物国債利回りを3ベーシスポイント上昇させて0.85%に押し上げていました。これは、 2週間前にファイザー社がコロナワクチンの良好な結果を最初に発表した際に上昇した1.00%に近い水準からは大幅に下回っています。
金地金現物価格はその発表以来、6.5%下落しています。工業用とが半数以上である銀地金の価格は、70セント下げてトロイオンスあたり23.55ポンドと3週間ぶりの低さとなっていました。
それに対し、 プラチナ価格は直近の上昇幅の大半を維持し、先週6.6%上昇した後、月曜日には1.7%下落して1オンスあたり934ドルとなっていました。
最新のデータによると、Nymex先物とオプションのヘッジファンドやその他のレバレッジ投機家の間では、需要の3分の1がディーゼル車の有害な排出ガスを削減するための触媒コンバーターに使用されているプラチナに対する強気のポジションが先週さらに増加していました。
このグループの弱気ポジションを除くと、マネージド・マネーのトレーダーのネット・ロングポジションは9週間で最大となり、先月から今月初旬に一時ネット・ショートポジションへと弱気傾向が強まっていた基調からさらに回復していました。
金と銀も先週、投機筋のネットロングポジションが増加していましたが、プラチナ同様PGMグループである、ガソリンエンジン車の触媒コンバーター用に需要の75%を占めるパラジウムは、規制当局である商品先物取引委員会(CFTC)がまとめた 最新のデータによると、マネージドマネーのトレーダーは全体的に弱気傾向を強めていたことが明らかとなっていました。
シルバー・インスティテュートとワールド・プラチナム・インベストメント・カウンシル(WPIC)が先週発表したレポートによると、銀とプラチナへの記録的な投資需要の増加からも、2020年にこれまでの供給過剰状況から両貴金属を脱却させて、コロナ危機が第二次世界大戦以来2番目の世界的不況を引き起こしたことで、両貴金属は急峻な供給不足へと転換していることが明らかとなっていました。
「ICBCスタンダード銀行の元東京支店長で、現在は新たに設立された日本貴金属マーケット協会(JBMA)の代表理事を務める池水雄一氏は、先週行われたプラチナ・フォーカスの ウェビナーで、「最近のプラチナ相場の上昇は、プラチナ市場の供給不足を示したレポートと南アフリカランドの強さが背景にある」と語っています。
南アフリカランドは、4月に格付け会社ムーディーズが南アフリカランドの投資適格格付けを投資適格から投資不適格「ジャンク債」に 格下げしたことで史上最安値を記録して以来、米ドルに対して18%上昇しています。
また、ブリオンボールトのユーザーは、今年10月末までに 記録的な量のプラチナを購入し、Metal FocusがWPICのために準備した2020年の世界プラチナ投資需要予測と比較すると金地金需要の5%近くを占めていたことが明らかとなっています。
なお、英国ポンド建て金価格は、英国政府が本日12月2日に国家的なロックダウンを停止すると発表したことを受けて、そして、既に1億回分の供給分を確保しているオックスフォード大学とアストラゼネカのワクチンはファイザー社やモデナ社の医薬品よりもはるかに安価で保管が容易である一方であることからも、英国ポンドが強含み、トロイオンスあたり1378ポンドへと2.3%下落させ、6月中旬以来の安値を記録していました。
ユーロ建て金価格もまた、MarkitのPMIのサービス部門の最新データが、19カ国の通貨圏全体の企業活動は、主要諸国がCovid-19 の感染を遅らせるために新たなロックダウン行ったことから、今月収縮していることを示し、トロイオンスあたり1554ユーロへと1.6%下げて5ヶ月ぶりの安値に下落していました。