ニュースレター(2020年1月17日)米中貿易協議第一段階合意で史上最高値を更新する株高の中、金は堅固に推移
今週月曜日にロンドンに戻ってまいりました。今週から通常通りのニュースレターをお届けします。
週間市場ウォッチ
今週金曜日午後3時の弊社チャート上の金価格はトロイオンスあたり1557.84ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から0.3%上昇し、銀価格は、本日12時のチャート上の価格はトロイオンスあたり18.06ドルと、前週のLBMA価格(午後12時)から0.8 %上げています。また、プラチナも本日午後3時の弊社チャート上では1026.58ドルと前週金曜日のLBMA価格のPM価格(午後3時)から5.9%の上昇、これはLBMA価格では3年4か月ぶりの高さとなっています。
今週金相場は、米中貿易協議の第一段階合意や好調な経済指標や決算結果で株価が市場最高値を更新する中でもFRBの金融政策に変更は無しという観測もあり、堅固な動きをすることとなりました。それでは、一週間の動きを日々追ってみましょう。
月曜日金相場は米国株が軒並み上昇する中で、先週末から0.9%下げてトロイオンスあたり1543ドルで終えていました。
これは、米中貿易協議の第一段階合意を今週水曜日に控えて楽観的観測が広がっていたことが背景となりました。同日はまた米中は貿易問題の解決に向け第一段階合意後に半年ごとに協議することで一致したとも報じられていました。また、米政府が中国を「為替操作国リスト」から外す方向で検討していると報じられていることも、投資家心理の改善につながっていました。
火曜日金相場は、米株価が市場最高値を更新する中、トロイオンスあたり1549ドルへと昨日の終値からは上げていました。
この株高の背景は、前日の要因となった米中貿易交渉「第1段階」の合意、前夜米国が中国の「為替操作国」認定を解除したこと、そして同日発表されたJPモルガ・チェース銀行等の米大手企業の決算結果が良好であったことからでした。
なお、同日発表された米消費物価指数は、予想を下回ったことから、米金融政策が今後も緩和的であるという観測も広がり、金にとってはサポートとなっていました。
水曜日金相場は、米株価が再び史上最高値を更新する中で、トロイオンスあたり1558ドルへと一時上昇していました。
この株価の上昇は、同日米中貿易協議の「第1段階」の合意文書への署名をニューヨーク時間11時半に控え、公表される合意内容が米経済を後押しするとの期待が買いを誘っていたことでした。
また、同日米国家経済会議のクドロー委員長が「今夏にも中間層を支えるために減税第2弾を打ち出す」と述べたことが好感されていました。
しかし、前夜「現行の関税引き下げについては、中国側による合意決定事項の履行状況をみて決める。米大統領選後にずれ込むことも」と伝えられていたことから、また予想を下回る主要経済指標の結果もあり、同日アジア株は下げ、欧州株も上げ渋って推移していました。
この主要経済指標とは、まず英国の消費者物価指数は3年ぶりの低い水準で、ドイツの実質国内総生産成長が6年ぶりの低さであったこと等でした。
なお、同日はプラチナ相場が2年ぶりの高さのトロイオンスあたり1000ドルを超えて上昇していました。
この背景はパラジウムが史上最高値のトロイオンスあたり2235ドルを付けたことの上昇、また米中貿易協議の進展で中国での需要の伸び観測が背景と見られていました。
木曜日金相場は、米株価が再び史上最高値を付ける中で、トロイオンスあたり1552ドルへ下げて終えていました。
この株高は、米中貿易協議第1段階の合意文書に署名したこと、良好な決算を発表したモルガン・スタンレーを中心に金融株が軒並み上昇していたことが背景となりました。
そして、同日発表された米国小売売上高、新規失業保険申請件数とフィラデルフィア連銀製造業景気指数が良好であったことも、ドルを強含め、金を押し下げる要因となっていました。
なお、前日3.6%上昇したプラチナ価格は、同日一時トロイオンスあたり1041ドルとほぼ3年ぶりの高さへと急騰しましたが、その後1000ドルまで押し下げられていました。
本日金曜日金相場は、本日も米主要株価指標が市場最高値を更新する中で、一時1560ドルまで上昇後にトロイオンスあたり1555ドル前後を推移しています。
本日は中国で発表されたGDPは過去30年でも最も低い6.1%という水準であったものの、鉱工業生産や小売売上高などの経済指標が市場予想を上回り、中国関連株が上昇していました。
しかし本日午後に発表された米鉱工業生産とロイター・ミシガン大学消費者信頼感指数は予想を下回るものであったことから、金のサポートになっている模様です。
その他の市場のニュ―ス
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田中貴金属の2019年の金買取量が6年ぶりの高水準で33.7トンと前年比ほぼ2倍となっていたこと。販売量は前年比17.7%減の20トン。プラチナは買取量が59.2%増の5.4トンであったものの、販売量は6.7トン。しかし前年比では21.6%減。価格が上昇する中で販売量が伸びていたのは通常のパターンではないとのこと。また、金とプラチナの販売量の増加は消費税が引き上げ直前の9月に見られていたとのこと。 -
コメックスの貴金属先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、今月7日米国とイラン情勢が緊迫化する中で、金とプラチナにおいて上昇し、銀とパラジウムで減少していました。 -
コメックス金の先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは前週比3.47%増の847トンと4週連続で増加し、9月24日以来の高さで史上2番目の高さであったこと。また、この建玉もまた百万枚を4週連続で超え、9月24日以来の高さとなっていました。 -
コメックス銀の先物・オプションのネットロングポジションは、前週比2.6%減の9143トンと3週間ぶりに減少していたこと。 -
コメックスのプラチナ先物・オプションのネットロングポジションは、前週比2.51%増の75.98トンと再び史上最高値の高さとなっていたこと。 -
コメックスのパラジウム先物・オプションのネットロングポジションは、前週比4.37%減の37.1トンとなっていたこと。 -
金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は、今週木曜日までに5トン増で879.5トンと一週間ぶりの高さとなっていたこと。 -
金ETFの第2の規模のiShare Gold Trustの残高は、昨日まで2日続けて増加していたものの、月曜日に3.9トンと大きく下げていたことから、木曜日までに1.97トン(0.54%)減で364トンとなっていたこと。 -
銀のETFとして最大銘柄のiShares Silver Trustの残高は、今週木曜日までで0.7%減少して、引き続き11月6日から増加していないこと。 -
金銀比価は今週木曜日まで86台で推移していたものの、週半ばには86.94まで上げて銀の割安となっていたこと。 -
また、今週の上海黄金交易所(SGE)のロンドン価格との差のプレミアムは、週間平均で6.87と前週の4.68から上げていたこと。 -
コメックスの取引量は今週木曜日までの週平均量で前週比40%減と下げていたこと。
来週の主要イベント及び主要経済指標
来週は月曜日がキング牧師記念日で米国が休場で、金曜日から中国は春節の休暇に入ります。
その間月曜日に中国人民銀行利率決定、火曜日に日銀金融政策決定会合の発表が行われ、木曜日にはECB政策金利発表が行われ、市場は注目することとなります。
また、主要経済指標では、月曜日はドイツの生産者物価指数、火曜日は英国の失業保険申請率と失業率、ドイツとユーロ圏のZEW景況感調査、水曜日は米国中古住宅販売件数、木曜日は米国新規失業保険申請件数、金曜日は日本の消費者物価指数と日銀金融政策決定会合の議事録、そしてドイツ、ユーロ圏、英国、米国の製造業とサービス部門PMIの発表が重要となります。
ブリオンボールトニュース
今週の市場分析及び投資ガイドページには下記の記事が掲載されました。
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主要経済指標(2020年1月13日~17日)今週の結果をまとめています。 -
主要経済指標(2020年1月20日~24日)来週の予定をまとめています。 -
【金投資家インデックス】金投資は2020年に記録的な高さで始まる
ロンドン便り
今週からロンドンへ戻ってまいりました。そこで、今週からロンドンのニュースをお送りいたします。
戻って来て英国でトップニュースで伝えられているのは、ヘンリー王子とメガーン妃の主要公務からの一部引退に関することですが、おそらく日本でも伝えられているように、エリザベス女王がチャールズ皇太子、ウィリアム王子、ヘンリー王子を13日に招集し、ヘンリー王子夫妻の考えに理解を示して移行期間を与えること、その詳細は今後の協議で数日中に最終的な結論を出すと声明を出しています。
この件は、英国人が愛するエリザベス女王、王室に関わることですのでしばらくはトップニュースで伝えられていくとは思いますが、本日は修復中のビックベンを、今月末の離脱を祝い鳴らそうという意見が出て議論されているというニュースをご紹介しましょう。
ビッグベンは1859年の完成以来1時間に1度大きな鐘を鳴らし、15分ごとに小さな鐘を鳴らしています。しかし、2017年から21年までは改修中であることから鐘は鳴っていません。
その様な中、元日や戦没者追悼記念日等の特別な機会には改修中も鐘を鳴らしていましたが、与党保守党EU離脱派を中心に1月31日のEU離脱を祝って、ビックベンを鳴らそうという意見が年末から出ていましたが、ジョンソン首相も支持していることから、EU離脱が近づく中で再び議論となっています。
しかしこのためには、一時的に改修作業を停止し、一過的な床を設置するなど費用の大きさからも、世論調査などでは鳴らすべきではないという回答が49%と半数以上を占めているようです。
1月31日のEU離脱派は、貿易協議を議論する移行期間のスタートであり、これからが正念場であることからも、英国の経済紙などもここでビックベンの鐘を鳴らすことに拘ることへ異議を唱えています。
離脱を祝いたい人々と離脱を悲観するする人々がいる中で、過半数を握った与党保守党とそれを率いるジョンソン首相が、今後国内外の案件を含めて謙虚に政局を運営することを希望したいと思います。