ニュースレター(2018年6月15日)1283.70ドル:FOMC利上げ、ECB量的緩和終了、日銀現状維持後、米中貿易摩擦の懸念の高まりで金下落
週間市場ウォッチ
今週金曜日のロンドン時間3時の弊社チャート上のスポット価格はトロイオンスあたり1283.70ドルと、前週金曜日のLBMA価格のPM価格から1.1%下げています。なお、銀相場においては、金同様に一月ぶりの終値を昨日付けた後16.77ドルと、先週金曜日のLBMA価格と比較すると0.2%の小幅な上げとなっています。
月曜日金相場は、翌日の米朝首脳会談を市場が見守る中、トロイオンスあたり1300ドル前後の狭いレンジで取引となっていました。
週末9日に閉会したG7首脳会談では、トランプ大統領が首脳宣言を承認しなかったことは株式相場の重荷ではあったものの、今週は水曜日にFOMC、木曜日にECB、そして金曜日に日銀の金融政策発表があるなどイベントが多いことから、市場の注目は既にこちらへ移っていました。
また、同日はイタリア新政権の経済相がユーロ圏にとどまる意向を明言したと伝わったことは株価にとっては好材料でしたが、ユーロを強め相対的にドルを弱含め、金を多少押し上げることとなりました。
火曜日金相場は、市場注目の米朝首脳会談を終えて、その影響は限定的となる中、トロイオンスあたり1297ドル前後の狭いレンジでの取引となりました。
同日ロンドン時間午前中には米朝首脳会談後に非核化に向けた共同声明文に署名がされ、必ずしもその道筋は示されなかったものの、地政学リスクはひとまず後退したとの見方で安全資産の金は多少下げていました。
その後市場は翌日のFOMCでの政策金利発表へと注目を移す中、ロンドン午後に発表された米消費者物価指数が前年比2.8%と2012年以来の速いペースとなったことから、金は更に一時下げることとなりました。
水曜日は今週の重要イベントの一つのFOMC後に、予想通り0.25%の利上げが発表されました。また、物価上昇率は目標の2%に到達していることからも、年内さらに2回の追加利上げが示唆されました。そのため、先の発表後金相場は1292ドルまで一時下げましたが、長期的に金利が2.9%と低い水準で据え置かれることが声明でも明らかとなり、予想を上回るタカ派的内容ではなかったことから、金は上昇して1299ドルで終えていました。
木曜日は市場注目のECBの政策金利発表が行われ、量的緩和を今年9月以降は月間300億ユーロから150億ユーロに縮小し、年内で終了する方針を決定しました。また、金利については「現在の水準に少なくとも2019年夏までとどまる」との見通しを示し、主要政策金利を予想通り据え置きました。
この結果を受けて、ユーロが急落し金相場は一時トロイオンスあたり1309ドルまで上昇することとなりまっした。
また、同日はトランプ政権が、約500億ドル(約5兆5300億円)相当の中国からの輸入品に対する制裁関税を承認したことから、貿易戦争への懸念も再燃し金をサポートすることとなった模様です。
本日金曜日は、日銀が金融政策を8対1で現状維持を決めたことから、日経平均株価は上昇して終えていました。しかし、ロンドン昼過ぎにトランプ米政権が中国製品への追加関税の発動を表明し、米中の貿易摩擦が深刻化するとの懸念が強まったことから、米株価が下げるとともに、金相場もトロイオンスあたり1300ドルを割って大きく下げています。
その他の市場のニュ―ス
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金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は今週は木曜日まで全く動きはなく、先週金曜日同様に828トンとなっていること。先週までで週間での減少は6週連続となっており、この残高は今年2月22日以来の低い水準。 -
先週末発表されたコメックス貴金属先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、イタリア政局懸念が後退していた先週火曜日に金とプラチナが減少し、銀とパラジウムが増加していたこと。 -
金先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは先週火曜日5.18%増で180トンと、前週のイタリア政局懸念での140%増から若干下げていたこと。 -
それに対しコメックス銀先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週火曜日に397.1%増の668トンとなっていたことこの増加率は大きいものの、2006年6月からのこのフォーマットでのネットロングポジションの平均と比較すると18%のみと低い水準。 -
コメックスプラチナ先物・オプションの資金運用業者のネットポジションは、先週火曜日も9週連続でネットショートで、そのポジションは3.26%と若干ながら増加し29.44トンとなっていたこと。 -
それに対しコメックスのパラジウムの先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは先週火曜日に13.11%増加し28.87トンとなっていたこと。
ブリオンボールトニュース
金が昨日一か月ぶりの高い終値を付けた後、本日下げて週間の下げに向かっていることを伝える、米主要経済サイトのMarketWatchで、弊社リサーチダイレクターのエィドリアン・アッシュのコメントが取り上げられています。
ここでエィドリアンは、「季節的な要因から金の需要は下げている。」とし、「夏休み以降はインドとアジアの需要が伸びる傾向にある。しかし、投資家の需要は大きく下げている。」と続けています。
今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
ロンドン便り
今週英国では、ここでもお伝えしたロンドン西部に建つ高層住宅棟「グレンフィルタワー」が火災で全焼して14日で一年を迎えたことから多くの記念行事が行われていること、またEU離脱法案の英国下院での採決関連、またワールドカップのためにロシア入りしたイングランドチームの模様などがトップニュースで伝えられています。
しかし、本日は今年3月14日に76歳で亡くなったスティーブン・ホーキング博士の追悼式がウェストミンスター寺院で行われていますので、ここでそのニュースをご紹介しましょう。
ご存知のように、ホーキング博士は英国の理論物理学者で、1960年代に筋萎縮性側索硬化症を発症しながらも、宇宙論、天文学、数学の分野で活躍し、科学書のベストセラーを執筆するなど、現代に生きる最も偉大な科学者と呼ばれていました。
本日の追悼式には、親族や王室のメンバーや政治家が参列し、BBCのドラマで博士を演じた英国俳優のベネディクト・カンバーバッチ氏や、英国宇宙飛行士のティム・ピーク氏が朗読をし、この会には、参列を希望した25000人の応募者の中から抽選で選ばれた1000人も参列したとのこと。
そして、博士の遺灰は既にこの寺院に埋葬されているニュートンやダーウィンらの墓の近くに埋葬されたとのことです。
またこの追悼式を機に、欧州宇宙機関(ESA)はスペインの巨大アンテナ「セブレロス」を使い、音楽に乗せたホーキング氏の肉声をブラックホールに向けて流すとのこと。この音楽は映画「炎のランナー」のテーマ曲を作曲したギリシャの作曲家ヴァンゲリス氏が手掛けたオリジナルの楽曲とのこと。
1964年には余命2~3年と診断されながら研究を続けて多くの理論を提唱し、1000万部を売り上げた「ホーキング、宇宙を語る」を含む数々の著書を執筆し、その興味は科学界に留まることなく米人気アニメの「ザ・シンプソンズ」や米TVドラマの「新スタートレック」等にも出演する人柄等も人々から親しまれた理由でもあるのでしょう。
博士は人々の心に残る多くの明言を残していますが、彼の子供達に残した人生についての助言をご紹介させていただきます。
「まず、星空を見上げて、自分の足元ばかりを見ないようにすること。次に仕事をあきらめないこと。それは仕事はあなた達に意義と目的を与えてくれ、それが無くては人生は空虚なものになるからです。3番目に、もし運よく愛を見つけられたなら、それは稀であることを覚えておいてください。そして決してそれを投げ捨てたりしないことを。」