英貴金属コンサルタント会社が2018年末の銀価格20ドルを予想
先週発表された貴金属コンサルタント会社として有数な英Metals Focus社の2017年の需給と2018年先行きをまとめたレポートのSilver Focusで、年末までの銀価格を最高でトロイオンスあたり20ドルとしていたことが明らかとなった。
先週メキシコとロンドンで同時に発表されたこのレポートでMetals Focusは「世界の金融市場は、年末に連れてより貴金属にとっては良い環境となるだろう。」とし、「その結果2018年の後半数か月は銀価格の上昇が見込まれ、短期間であっても第4四半期に20ドルに達するであろう。」としている。その年末の価格予想を17.40ドルから20.00ドルとし、スポット価格の平均を18.50ドルとしている。
銀の供給は2017年に9億9830万トロイオンスと前年比5%減。これは、鉱山からの産出量が中央アメリカと南アメリカからのものが、前年比6%減となったことから。
リサイクルは2%増と、工業用からのものと銀貨のリサイクルが主として要因となった。
それに対し銀の需要においては、現物投資が大きく減少していたことから全体としては9億5320万トロイオンスと前年比3%減となっていた。
現物投資については前年比26%減と過去10年間で最大の下げとなっていた。これは、米国の銀貨と小規模な地金の需要が43%減が要因となった。この背景は、米国の銀貨と小規模な銀地金の2010年から2016年までの年間平均は、1億1130トロイオンス(3461トン)と急激なものであったことから、市場が飽和状態であること。また、市場のボラティリティの低さ(取引機会が明確でない)、堅調な株式市場、そしてオバマ政権に懐疑的であった人々による購入が減少したため。
しかし、インドの需要は前年比二けたの増加を見せていた。しかし、これは2016年にインド政府が高額紙幣を廃止するなど、紙幣偽造や脱税や不正蓄財対策を行ったことから、急減していた数値との比較ではある。
その他の需要としては、中国と日本と米国の需要からも工業用が5%増と記録的なものとなっていた。この需要増は太陽光発電業界からのもの。それに対し、写真用途向け需要は、継続減少傾向となっていた。そして、宝飾用途に関しては、インドからの需要の伸びで3%増となっていた。
その結果、需給バランスは2017年は前年比その幅は狭まったものの2014年から連続の供給過多となっていた。ちなみに、やはり著名貴金属コンサルタント会社のトムソン・ロイターGFMS社の銀需給レポートにおいては、昨年も引き続き供給不足とされている。
2018年1月から4月までの需給については、2017年の傾向を踏襲しており、米国の現物投資需要を表すとされるアメリカンイーグル銀貨の需要は32%減となっている。
2018年の見通しについては、中央および南アメリカの鉱山の産出量が戻ってくることから供給は1%増とし、需要は米国は引き続き弱いものの、インドの銀貨と銀地金需要が6%増加することで2%増となることを予想している。そして、需給バランスも供給過多は続くものの、その差はより狭まるであろうとのこと。
2018年の銀市場の重要な要因をネガティブ要因とポジティブ要因を下記のようにまとめている。
ネガティブ要因
- 3%を超える米長期金利
内容によってネガティブ
- FOMCによる利上げ(ペースが早まれば)
- インフレーションがマイナス数値であること
ポジティブ要因
- ドル安
- トランプ政権の減税やインフラ投資による米国の財政赤字悪化
- イタリア政局
- 地政学リスク(北朝鮮、シリア、イラン等)
- 中国の債務問題と米中貿易戦争