ニュースレター(2018年2月2日)1331.15ドル:良好な米雇用統計で金は8週間ぶりの週間の下げへ
週間市場ウォッチ
今週金曜日のLBMA金価格のPM価格はトロイオンスあたり1331.15ドルと、前週同価格から1.6%下げています。これは、週間ベースでは12月第1週以来の下げとなります。
週明け月曜日金相場は、ドルインデックスが0.4%上げと6週間ぶりの上げ幅になる中、トロイオンスあたり1338ドルへと下落することとなりました。
これは、米国債10年物の利回りが3年9か月ぶりの高い水準の2.72%へと上昇していることから、米株価と共に金を押し下げていたことからでした。
この背景は欧州中央銀行が早期に金融政策の正常化を始めるという思惑から欧州の主要国債が売られ、米国債も売られていたことからでした。
長期金利上昇はドルを強めることから、また同日日銀、財務省、金融庁が会合を前に円高けん制をしたことで日本円安、メイ首相の指導力への懸念から英国ポンド安、ドイツ国債の値が下げていることがユーロ安を引き起こしていたとのことです。
また、今週は水曜日にFOMC、金曜日には米雇用統計が発表されるなど重要指標も多いことから、これまでのドル安等の調整が入っていた模様です。
火曜日金相場は、米長期金利がほぼ4年ぶりの2.73%と高い水準を維持する中、ドルインデックスの動きに相反し一時トロイオンスあたり1348ドルへ上げた後、1337ドルあたりを推移することとなりました。
同日は、年初から上昇が続いていた米株式が利益確定を目的とした売りなどからも全般下落していました。
水曜日金相場は、FOMCの結果を待つ中緩やかにトロイオンスあたり1339ドルまで下落していました。その後、イエレンFRB議長の議長として最後のFOMCでは、予想通り金利は全会一致で据え置かれたものの、「インフレ率は今年上昇、中期的に2%前後で安定へ」と先行きに自信を深めていると市場が判断し、今年の利上げ回数が3回から4回という観測が広がり、一時金はトロイオンスあたり1335ドルまで下げものの、その後再び上昇することとなりました。
なお、英国早朝にはトランプ大統領の一般教書演説が行われましたが、懸念されていた保護主義的コメントがなかったことから、ドルを多少弱める以外は、市場への影響は限定的となっていました。
また、同日発表された雇用統計の先行指標ともみられているADP全国雇用者数は予想の28.5万人を上回り23.4万人で、シカゴ購買部協会景気指数もまた、予想の64.1を上回る65.7であったこと、また米長期金利が同日も2.7%を超えるほぼ4年ぶりの高い水準で推移していたこと、米株価が2日連続の下げから一転して上昇していたこと等がロンドン時間金相場を抑えていたようでした。
木曜日の金相場は、前夜のFOMCの声明文などで、3月のFOMCでの市場の利上げ観測が広がる中、トロイオンスあたり1340ドル前後を推移する動きとなっていましたが、長期金利が2.75%へと2014年4月ぶりの高い水準へと上昇する中、ドルインデックスも89を割る低い水準で推移し、緩やかに上昇することとなりました。
同日は注目のISM製造業景気指数は予想を上回る結果となっていましたが、前回数値が下方修正され、雇用が低下していたことでドルを押し下げたこと、オーストリア中銀ノボトニー総裁のタカ派的コメントでユーロが上昇したこともドルを更に押し下げることとなりました。
本日は、市場注目の米雇用統計で非農業部門雇用者数が予想の18万人を上回り20万人で、前回数値も16万人へと14.8万人から上方修正され、平均時給は予想の2.6%から2.9%へと上昇していたことからドルが10週間ぶりの高さへと強含み、金相場は大きく下げることとなりました。
なお、失業率は前回と予想と同じ4.1%となっていました。
また、米長期金利は2.85%と2014年1月以来の高さへと一時上昇していました。
その他の市場のニュ―ス
- 金ETFの最大銘柄のSPDRゴールドシェアの残高は今週木曜日まで8トン減少していたこと。
- 先週末に発表されたコメックス先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週火曜日3.85%増加して658トンとなっていたこと。これは、昨年12月半ばから6週連続の増加で、その量は昨年9月半ば以来の高い水準。
- コメックス銀先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週火曜日前週比28.5%下げ3,673トンと、2週連続で下げていたこと。
- コメックスのプラチナ先物・オプションの資金運用業者のネットロングポジションは、先週火曜日に前週比45.95%増加し44トンと、2週続けての増加となっていたこと。
ブリオンボールトニュース
今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
また、弊社の投資ガイドのセクションに、新たに金地金と金貨との比較ページ「オンラインで金地金を購入」が加わりました。
ロンドン便り
今週英国では、メイ首相の訪中関連ニュースと与党保守党内のメイ首相へ退陣を求める動きが日々主要メディアの見出しを飾っていました。
そこで本日メイ首相はメディアに対し「私は物事を途中で放り出さない」と党首続投の意思を表明していましたが、与党内の求心力が低下しており、党内運営への懸念を消すことは難しそうです。
本日のロンドン便りでは、先のニュースの他に今週見出しを飾っていた、英国内の企業による男女賃金格差関連のニュースをお届けしましょう。
ここ英国では、昨年のハリウッドのワインスタインのスキャンダル以来、仕事場でのセクハラ、男女同権、賃金の男女格差へ抗議の声が注目されています。そのようなことからも、今週は英格安航空大手のイージージェットのラングレン最高経営責任者(CEO)が自らの報酬を年34,000ポンド(約520万円)減額し、前CEO(女性)と同額にすることを発表していました。
そして、今週水曜日に英国下院デジタル・文化・メディア・スポーツ委員会で公聴会が行われ、BBCの男女賃金格差が取り上げられ、賃金格差に抗議してBBC中国編集長を辞任したキャリー・グレイシー氏が出席して証言をしていました。
BBCは昨年7月に年収15万ポンド(2,300万円)以上の高額報酬出演者を公表し、ここで男性は62名、女性は34名、その平均は男性が29万5,000ポンド(約4,500万円)だったのに対し、女性は21万ポンド(約3,200万円)と大きな開きが出ていたことも明らかになっていました。
グレイシー氏は中国語を堪能に話し、2013年に中国編集長へ就任していました。しかし、中国、欧州、北米、中東の国際編集長4人のうち、自分と欧州の女性編集長より、他の男性の編集長が5割多い給与を得ていたことを知って、今年1月7日に編集長を辞任していました。
今回の証言で、BBCがグレイシー氏に10万ポンド(約1500万円)を未払い分として支払うと提示し、グレイシー氏は受け取りを拒否していたことも明らかになりましたが、彼女自身は、今後も現在BBCの編集局に残り、BBCの女性スタッフ190人からなる組織「BBC Women」と共にBBCの変革に協力をすると話しています。
今月半ばにはBBCの著名男性キャスター6人が給料の減額に同意し、BBCのニュースキャスターの給料に対して、32万ポンド(約4900万円)の上限設定を持つことも提案されています。
BBCは国営放送であるためにその男女の賃金格差は注目を集めていますが、実際の英国全体の男女の賃金格差は18%で、BBCの9.3%と比べると約倍となっているとのことです。
グレイシー氏は「BBCは真実を扱っている。」メディア企業であるからこそ、男女同権、賃金格差を正す必要があるとこの証言で訴えています。
BBCはここまで注目を浴びた以上、変革を行って行かざるを得ないと考えますが、昨年大きく取り上げられた「#MeToo(ハッシュタグ・ミー・トゥー)」の動きは、セクハラにとどまらず、男女同権、賃金格差を正す動きへと広がりを見せることになるのではと、希望を感じさせるニュースとなりました。