ニュースレター(11月6日)1088.90ドル 良好な米雇用統計で利上げ観測が更に広がり、過去6年間で再低値を記録
週間市場ウォッチ
今週金曜日のLBMA金価格のPM価格は1088.90ドルと、前週同価格から4.7%の下げとなっています。これは、ほぼ6年前の2010年1月以来の低い水準で、この週間の下げ幅は今年最大で、昨年10月末以来の下げ幅となります。
週明け月曜日は、前週のFOMC後の声明で12月の利上げが示唆されたことから、週後半の米雇用統計を待つ中、金相場は下げ基調を受け継いで緩やかに下げることとなりました。
翌火曜日は、12月の利上げ観測が広がる中、ドルが主要通貨で上昇し、金相場はトロイオンスあたり20ドル以上下げることとなりました。これにより、前月の米雇用統計が予想を下回る数値であったために利上げ観測が後退し、上昇する前の金相場へと戻ったこととなりました。
水曜日は、米ADP民間雇用者数が発表され、18万2千人と、18万人の予想を上回りましたが、前回20万人と修正値19万人を下回り、発表直後は、相場は狭いレンジで動いていましたが、イエレンFRB議長の議会証言で、12月利上げが「十分にありうる(Live possibility)」と再び示唆されたこと、また、ADP全国雇用者数以降発表された、米国貿易収支も−408億ドルと2012年以来の狭い貿易赤字幅であったことから、ドルが強含み、金はさらに押し下げられることとなりました。
同日は、フィッシャーFRB副議長、ダドリーNY連銀総裁の講演も行われ、ダドリーNY連銀総裁も12月の利上げは「十分にありうる(Live possibility)」と答えたことが伝えられていました。
木曜日は、10月の低値1105ドルを割った後、9月の1100ドルを試したものの、この水準は守られることとなりました。この間、ドルは主要通貨で強含み、ドルインデックスは3ヶ月ぶりの高水準となりました。
本日金曜日は、市場注目の米雇用統計では、非農業部門雇用者数が、予想の18万人と前回の14.2万人を上回り、27.1万人となりました。また、失業率も前回と予想の5.1%からさげ、5.0%となりました。なお、前回数値は13.7万人と下方修正されていました。
これを受けて、ドル建て金相場は1.5%急落し、LBMAのPM金価格においては、前週から4.7%下げ、FOMCが金融緩和を終了した週の2014年10月31日以来の下げ幅となりました。
なお、先の米雇用統計のニュースを受けて、市場における12月利上げ予想は72%に上昇し、米国10年物国債利回りは2.33%と過去5年間で最も高い水準へと上昇することとなりました。
その他の市場のニュース
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アメリカ合衆国の造幣局で鋳造されている銀貨が、在庫が無くなるほどの需要で、記録的な量売れていると伝えられていること。 -
先週のFOMC後の急落前に、コメックス金先物・オプションの投機筋のネットロングポジションが、過去156週で10回のみの高い水準ととなっていたこと。また、銀もショートポジションが7月の記録的な量から68%減となっていたこと。 -
上海黄金交易所(SGE)からの引き出しが、株価の下落、人民元引き下げなどで金現物需要を高めて、7月から10月に900トン(約4兆円)と増加していたこと。また、今年9月までの中国の金の消費量が前年同時期と比較し、7.83%増となっていたこと。この詳細は、「中国の金消費量が今年9月までに7・83%増」でまとめています。 -
木曜日に、金ETFの最大銘柄SPDRゴールドシェアが、6トン減少し680トンと、9月後半以来の低い水準へと下げたこと。銀のETFの最大銘柄のiShareシルバートラストは、9757トンと、過去3年間で最も低い水準へと近づいたこと。
ブリオンボールトニュース
今週ブリオンボールトが発表した金・銀投資家インデックスについて、下記のメディアで取り上げられています。
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金情報を日本語で網羅したゴールドニュースサイト「金・銀相場上昇が利益確定売りを進め、銀投資センチメントは急落」 -
ブルムバーグ「銀上場投信の残高が下げる中、銀が過去2ヶ月で最も長期の下落を記録」
ここで、ブリオンボールトの金・銀投資家インデックスの最新数値とエィドリアンのコメントが取り上げられています。エィドリアンは、「銀の相場はボラティリティが高く、リスクも大きい」とし、「(先物・オプション)市場で残っているロングポジションが解消機会を待っているようだ」とコメントしています。
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米国主要日刊紙シカゴ・トリビューン「銀が過去2ヶ月で最も長期の下落を続ける」 -
英国経済サイトのポートフォリオ・アドバイザー「金価格上昇が利益確定を進める」
今週の市場分析ページには下記の記事が掲載されました。
ロンドン便り
今週は、クリスマス商戦が始まっている英国の、毎年恒例となっている、クリスマスビデオについてお届けしましょう。
昨年もお伝えしましたが、英国のデパートのジョン・ルイスは、2007年から当時一般的であった商品を前面に出すコマーシャルではなく、物語性の高いクリスマスビデオをこの時期に発表し注目を集めるようになっていますが、ここ数年は、そのコマーシャルが発表される日は、英国主要メディアののトップストーリーとなっています。
本日は、そのジョン・ルイスのコマーシャルが発表され、まるで著名な映画の初日でもあるかのように、カウントダウンがBBCの朝のニュースでも行われていました。
今年のクリスマスビデオは、月で1人暮らしている老人を思う少女の物語です。ここでは、リリィという天体観測が好きな少女が、望遠鏡で見つけた、1人寂しそうに月で暮らす老人を心配し、苦労の末に老人へヘリウムガスの風船でクリスマスプレゼントの望遠鏡を届け、その老人は、彼を心配してプレゼントを贈った地球で暮らすリリィを望遠鏡で見つけ、涙するというものです。
このように、ジョン・ルイスは、毎年クリスマスシーズンに必ずしも商業主義に走るのではなく、クリスマスの原点に帰り、他の人々や生きている全ての物を思いやることを思い出し、プレゼントの意味をもう一度考えさせられる、心暖まるビデオを発表しています。
そして、ジョン・ルイスの成功からも、多くのブランドがこの時期、かなりの予算をかけて工夫に凝らしたコマーシャルを発表していることからも、主要日刊紙は、これらのブランドのコマーシャルを比較して伝え、主要経済紙は、その経済効果について語っています。
今回ジョン・ルイスのビデオは100万ポンド(1億8500万円)をかけてワーナースタジオで作られ、600万ポンド(11億1000万円)を放映に費やすとのこと。
また、このようなビデオを作成する背景として、かつては、クリスマスプレゼントを購入するために人々は決まった店や商店街へくり出していましたが、昨今はワンクリックでオンラインで買い物を済ませてしまう人々も多いため、ブランドの良いイメージをこのようなビデオで覚えてもらい、そのデパートやブランドで買うことを好む、忠誠心の高いロイヤルカスタマーを多く創りだすことがより必要となっていると分析しています。
今年の有名ブランドのクリスマス用コマーシャルもほぼ並び揃ったようですので、これらを見比べて、どのブランドがクリスマス商戦で健闘するのかを予想してみるのも面白いかもしれません。
それでは、一足早いクリスマスムードをジョン・ルイスのビデオでお楽しみください。