金市場ニュース

2023年の金鉱生産量は過去最高を更新へ

世界最大産出国の中国は「減少を始め」、第2位のロシアは制裁で打撃を受けている。
 
2023年、世界の金鉱山生産量は過去最高を更新するだろうと、主要アナリストが述べている。
 
貴金属需給のスペシャリストである Metals Focusによると、2022年の金価格が過去最高を記録したことにより、世界の鉱山生産量は1%増加し、2018年に次いで過去2番目の高水準となったとのこと。
 
そして、同コンサルタント会社の新しいGold Focus 2023レポートでは、アジアを除く全ての地域からの生産量拡大により、今年は2%増の3,650トンを超える新たな高水準になると予測している。
 
「世界の金鉱山生産は、2022年にいくつかの混乱要因に直面した。」とMetals Focusの鉱山供給を専門とするダイレクターのAdam Webb氏は先月ロンドンのレポート発表時には述べていた。
 
2位のロシアは、ロシア政府のウクライナ侵攻をめぐる国際的な制裁措置に見舞われ、また、1900年代初頭以来初めて100トン以下の採掘量となった元1位の南アフリカは、ストライキと停電に見舞われ、7位のペルーは、社会主義者のペドロ・カスティーヨ大統領の逮捕と追放をめぐる社会不安に見舞われた。
 
Metals FocusのGold Focus 2023に掲載されている世界の金採掘量の年別推移図。出典元 Metals Focus
 
Metals Focusのデータでは、第3位のオーストラリアの金鉱生産量は、昨年2021年の4年ぶりの低水準から2%回復したものの、2023年の年初からの3ヶ月の生産量は、昨年最終四半期から8%減少したと、アナリストのSurbiton Associatesが5月に発表している。
 
一方、欧米の対ロシア制裁は、新しい設備や交換部品が不足し始める今年、ロシアの鉱山生産高をより急激に減少させ始めると予想されている。
 
ロシアの2022年の生産量は2%減少したのみであったが、世界的な業界の課題は、中国東部の山東省にある西陵金鉱山の地下埋蔵量が 先月200トン増加と、2022年の世界全体の追加埋蔵量の約1/5に相当する量が、12ヶ月前に2つの死亡事故により閉鎖された後に昨年1月にフル稼働に戻ったことにより、金生産量第1位の中国の生産量が13%回復したことにより相殺されていた。
 
しかし、世界をリードする中国の生産量は、環境基準の強化によって「長期的な減少に戻るだろう」とウェッブ氏は述べている。一方、アジアの総鉱山供給量は、洪水、鉱石品位の低下、世界最大の鉱山であるインドネシアのグラスバーグでの地下生産の終了によって、すでに2023年に向けてさらに減少することになるとされている。
 
一方、世界の小規模採掘(Artisanal Small-Scale Mining: ASM)による金供給量はほとんど変化せず、世界の総生産量の約21%を占めるとMetals Focusは予測している。これは、4年前にこのセクターを含めるために最初に行われたデータの大幅な修正によって、2018年のASMの金の見積もりの15%を劇的に上回ることとなった。
 
これらの非正規の、ほとんどが違法で、しばしば非常に危険な現場からの生産は、2022年に最も顕著にボリビアで増加したが、ブラジルとベネズエラの活動の低下によって相殺されることとなった。Metals Focusによれば、今年のASMの数字は、アフリカで5番目に大きな金採掘国であるスーダンの内戦の影響で落ち込む可能性があるとのこと。
 
正式な大規模鉱業におけるコストは、AISC(All-in-Sustaining Measure)で過去最高を記録した2022年からさらに上昇する可能性が高い。しかし、エネルギー価格がロシアとウクライナの戦争後の暴騰から反転した今、「上昇率は大幅に鈍化するだろう」とMetals Focusは予想している。つまり、地金市場価格がコンサルタント会社の年間平均予想を5%上回り、トロイオンスあたり1890ドルと過去最高を更新する中、「大半の」生産者は採算を維持するだろうとのこと。
 
Metals Focusは、「2020年から2022年にかけてのマージンは、非常に力強いものであった。」と述べている。
 
しかし、S&Pグローバルのアナリストによると、金鉱会社のM&Aの総額は、2022年には2021年から半減し、5年ぶりに他の 非鉄鉱業の合計を下回り、100億ドルを下回った。
 
S&Pのデータでは銅の鉱山会社のM&Aは倍増して140億ドルを超え、これは「グリーン・エネルギー移行における中心的役割と、埋蔵量と供給量の減少に対する懸念から、この金属への関心が高まっている」ためであるとのこと。
 
世界第1位の上場金鉱山会社ニューモント(NYSE: NEM)は先月、世界第8位の鉱山会社であるオーストラリアのニュークレスト(ASX: NCM)を190億米ドルで 買収することを決定した。
 
NEMの株価は現在、ロシアのウクライナ侵攻を受けて2022年春に金価格が急騰した際に記録した価格の半分で取引されている。
 
Metals Focusの計算では、この買収により、ニューモントは2023年に上場金鉱山株でかつて1位だったバリック(NYSE: GOLD)の2倍の金を生産することになるとのこと。

 

ブリオンボールト社のリサーチ部門は、オンライン金取引所有サービスを提供する世界有数の英国企業ブリオンボールトの、リサーチ・ダイレクターのエィドリアン・アッシュ、日本市場担当ホワイトハウス佐藤敦子を含む国際市場担当者によって構成されています。

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