2012年上半期の世界金需要
初心者にも分りやすい金のブログとして、経済アナリスト、そして金市場の第一人者の豊島逸夫氏にも推薦されている「はじめての金読本」で、今年上半期の金需要の動向を過去2年間と比較し、解説しています。

日米欧が足並みを揃えて金融緩和を進めている傍らで、新興国も金融緩和へ舵を切りつつあります。それが金投資需要の追い風になりつつあるわけですが、一方では不安要素も浮かび上がりつつあります。
なかでもしっかり注目しておく必要があるのが、金需要大国として知られるインドと中国の動向です。リーマンショック以降、この両国の旺盛な金需要が結果として金価格を下支えしてきたわけですが、このところ雲行きが怪しくなりつつあるからです。
インドは、通貨安という問題を抱えている上に、電力インフラの脆弱さを露呈しています。また、格差拡大にともなう労働問題が深刻になっています。
そして中国経済も、重要な輸出先である欧州経済の景気後退で大きな打撃を受けつつあります。また、悪いときには悪いことが重なるもので、国内の権力闘争に絡んだ日中の領土問題の深刻化も、経済を冷え込ませる要因として懸念され始めました。
新興国の格差問題、労働問題は、要注目です。
さて、こうした状況を踏まえた上で、本年度上半期の金需要を見てみましょう。
需要全体では前年度上半期が2236.4トンだったのに対し、本年度上半期は5.27%減少して2118.5トンでした。需要減少の要因は、価格が急騰した昨年からの反動、そして世界景気後退の影響と見ることができるでしょう。
項目別に見てみましょう。
需要の最大項目である宝飾品は、1069.4トンから12.65%減少して、934.1トンへ。世界の景気後退をもろに被った印象があります。宝飾品の需要は景気に敏感に反応しますね。
金現物(地金と金貨)の需要は、736.3トンから10.77%減少して、657.0%へ。宝飾品ほどではありませんが、こちらも減少しています。
ETF等の需要は、-6.7トンから+52.4トンへ、この項目については増加しています。ちなみにETFの増加は現在も続いています。
そして中央銀行の購入についてですが、203.2トンから25.09%増加して、254.2トンへ。この項目は景気とは関係なく増加しています。欧州の債務危機、そしてその対策としての世界的な金融緩和が背景にあることは明らかです。
では、インド、中国はどうなっているか。2010年第3四半期~2011年第2四半期と、2011年第3四半期~2012年第2四半期、この二つの期間の比較を見てみましょう。
(インド)
宝飾品は、728.3トンから30.91%減少して、503.2トンへ。金現物は、426.6トンから36.63%激減して、270.3トンへ。インドの場合、先にもお話したように、通貨ルピー安で国内の金価格水準が急騰していること、金に関する税制改正(取引税率アップ)問題が尾を引いて、買い控えが発生したことが大く響いたようです。ただし、取引税率については引き下げられたことから、下半期の盛り返しが期待されているところです。
(中国)
宝飾品は、493.7トンから3.14%増加して、515.5トンへ。金現物は、250.6トンから7.94%増加して、270.5トンへ。さすが金好きの国民性を持つ中国というべきか、世界景気そして国内景気後退のなかでも、ここまでは中国の金需要だけは拡大を続けています。中国の金需要、恐るべし、です。しかし、さすがの中国といえども欧州の景気後退でジワジワ影響が出ていることは間違いなく、鉄鋼や石炭など国内在庫のダブつきが目立ち始めています。不動産バブル再燃を抑えつつ、景気刺激のための金融緩和をどのように進めていくのか、政権交代後の政策の舵取りに注目が集まるところです。
世界的な金融緩和が金投資需要の追い風になる一方、インドと中国の需要がどうなっていくか、今後とも、ますます目が離せなくなりました。
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