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金銀比価が26年ぶりの高さへ

米国の貿易政策は銀価格を押し下げ、金を押し上げています。

金銀比価が、90を超えて上昇しています。これは、銀が金と比較して、26年ぶりの割安であることを示します。

金価格を銀価格で割って算出する金銀比価は、単純にこの二つの貴金属がそれぞれに対してどのような状況(割高、もしくは割安)かといったことを表します。

中世の欧州ではほぼ12対1を保ち、19世紀のフランスの金銀複本位制の際には、15.5対1と定められていました。

20世紀初頭に金本位制が導入されて、銀の公的通用が廃止され、この比価は30を超えることとなりました。そして、金本位制が終わった1971年以来この比価の平均は58.4を推移しています。

金銀比価は、その数値が記録された1968年から現在までの間に、1990年から1993年の3年間の237日のみ90(つまりは90オンスの銀と1オンスの金が同価値)という高い水準となっていました。

 

貴金属専門コンサルタントのMetals Focusは、昨今の高い金銀比価について「大部分は、銀上昇を信じる投資家が欠如していることが要因です。銀価格の低迷は、若干ながら金の安全資産需要が背景にあるのです。」と述べています。

さらに、銀の対金価格の低迷を引き起こしている要因は、銀の投資需要として主要市場の米国が低迷していることをMetals Focusは指摘しています。そして、これを裏付けるデータとして、米国造幣局のイーグル銀貨の売り上げが、史上最悪であった2018年1月から5月と比較しても今年42%と低迷していることを取り上げています。

インドへの銀の輸入の減少もこの価格を押し下げています。Metals Focusのレポートによると、2019年1月から4月までに、2018年の歴史的な高い水準から20%近く下げているとのことです。同社は、この分析をすることを困難にしているのは、インドでは購入者が輸入した銀地金を利用するまで保管することができる保税倉庫の利用が増加していることを挙げています。

世界でも主要貴金属輸送保管会社のBrinksとLoomisは、共にインドの自由貿易地域(それぞれ2016年にChennaiと2018年にKandla)で倉庫を運営しています。そのために、すでに保管されていた銀地金が、2019年のインドの需要を満たすために利用されたことから、新たな輸入を減少させて、世界の銀価格の頭を押さえていた可能性もあります。

しかし、アナリストが同意していることは、世界の経済成長の鈍化によるものです。これは、銀は工業用途が全体の需要の60%に及び、金の10%を大きく上回っていることからです。

「もし状況が金融市場の不安定性を示唆しているのであれば、投資家は銀ではなく金を好みます。」とRefinitivは4月に米国の銀産出会社や製錬会社のために発表したWorld Silver Survey 2019で分析し、次のように続けています。

「その良い例が2008年の世界金融危機でした。この際に金銀比価は80を超えて上昇しました。そして、1990年代の高い金銀比価は湾岸戦争が要因でした。」

銀の1990年代初頭の低迷後、著名投資家のウォーレン・バフェット氏の大量の銀購入が続きました。これにより、金銀レシオは歴史的なピークの100から1998年に40を下回る水準まで下げたのでした。

また、この貴金属は2008年の金融危機時にも急騰し、史上最高値の50ドルに近い水準を2011年春に付け、金銀比価を84から31まで引き下げていました。

今年のトランプ政権による「継続的な貿易摩擦は、金価格にポジティブであっても、銀にとってはネガティブなものとなっています。」とSFA Consultancyはドイツの精錬会社のHaraeusのウィークリーレポートで述べています。

「経済と政治の先行き不透明感が広がり、安全資産としての金需要が増加しています。しかし、貿易摩擦は世界経済成長を鈍化させていることから、銀にとってはネガティブ要因となっています。」

将来的には、「金銀比価は、短中期ではこの歴史的な高さを保持することでしょう。」とMetals Focusは述べ、その理由としては、この米国と中国、そしてメキシコの貿易摩擦は、機関投資家が、コメックスの派生商品市場で銀のロングポジションを減少させるか、ショートポジションを積み上げる機会としたと分析しています。

 

先週トロイオンスあたり15ドルを割り、現在は14.60ドルを上回る水準で推移しているものの、「銀は2019年の下げ傾向を破っている」とSFA ConsultancyはHaraeusのレポートで述べ、「そのために、先物・オプション市場の銀へ弱気な機関投資家によるショートカバーが起きていた」と続けています。

「もし銀がこの貿易摩擦による押し下げを撥ね退けることができるのであれば、安全資産としての購入で価格が金を上回って上昇する可能性はある。」としています。

そして、Metals Focusも同意し、金価格が大きな上昇をすることになれば、「銀価格が金に牽引されて上昇し、金市場と比べて小規模で流動性も低いことから、大きく動く可能性はある。」としています。

Metals Focusは、2019年後半に銀が金を上回る上昇を見せることを予想し、2020年に向けて「金銀比価を下げることになる」とも述べています。

エィドリアン・アッシュは、ブリオンボールトのリサーチ主任として、市場分析ページ「Gold News」を編集しています。また、Forbeなどの主要金融分析サイトへ定期的に寄稿すると共に、BBCに市場専門家として定期的に出演しています。その市場分析は、英国のファイナンシャル・タイムズ、エコノミスト、米国のCNBC、Bloomberg、ドイツのDer Stern、FT Deutshland、イタリアのIl Sole 24 Ore、日本では日経新聞などの主要メディアでも頻繁に引用されています。

弊社現職に至る前には、一般投資家へ金融投資アドバイスを提供するロンドンでも有数な出版会社「Fleet Street Publication」の編集者を務め、2003年から2008年までは、英国の主要経済雑誌「The Daily Reckoning]のシティ・コレスポンダントを務めていました。

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