金市場ニュース

金価格急落の背景を読む

初心者にも分りやすい金のブログとして、経済アナリスト、そして金市場の第一人者の豊島逸夫氏にも推薦されている「はじめての金読本」で、先週下げた金価格の背景を昨今の米国経済を分析した上で解説しています。なお、この記事は先週金曜日に同サイトに掲載されたものです。

「生きることか?そんなもの家来どもに任せておけ!」19世紀フランスの高踏派詩人の言葉です。そのひそみに習って、こう言ってみましょうか。

「金先物?そんなもの短期投機家どもに任せておけ!」

このマクラは、ちょっとしたお遊びです。

ニューヨーク先物価格が激しく下落しています。誰にも欲はありますから、金価格が急騰、急落すれば、かならずしも心穏やかという訳には行かないでしょう。でも、金先物に手を出している人は慌てるでしょうが、金読本の読者は現物派でしょうから、大丈夫ですよね?

とはいえ急落の背景くらいは整理しておきましょう。もちろん、ささやかな想像力を駆使して、です。

米国では、史上空前ともいえる巨大な量的緩和が一方で株価を史上最高値レベルまで持ち上げ、一方で住宅市場を下支えしてきました。その結果、家計のバランスシートが改善し、周辺産業への影響が大きい自動車販売が回復し、住宅販売も回復途上といった好循環が生まれています。

米国は、日本と異なり、家計に占める株式などのリスク資産の割合がとても高いのが特徴的です。直近のデータは知りませんが、おそらく50%以上。したがって、金融当局による量的緩和がもたらす株価上昇が家計におよぼす効果は絶大です。どちらが良いのかというような議論はさておき、量的緩和が米国で効きやすく、日本で効きにくい、その理由の一端をここにも垣間見ることができます。

その上、昨今話題のシェールガス開発の進展で、産業全体の生産コスト低減効果が見込まれ、将来的に経済を下支えすると期待されています。いまや米国企業の代表格ともなったアップルマックの米国内生産再開を発表したように、製造業の本国回帰が本格化する気配もあります。

これが昨年秋から金価格が下げ始めた背景でしょう。

ところが、ここで懸念となるのは、株価上昇が量的緩和の目標のひとつであるとはいえ、失業率改善前に行き過ぎてしまうことです。債券から株式へのマネーシフトが本格化すれば、金利が上昇するというリスクに見舞われ、回復途上の経済の腰が折れかねないからです。

そう考えれば、量的緩和のゆるやかな解除論が、FOMC連邦公開市場委員会)の定例会議において勢いを持ち始めても不思議ではありません。解除論はまだ議論され始めた段階と思いますが、短期投機筋は量的緩和の出口近しと見て、リスク資産を手仕舞い始めたということでしょう。

ただ、「財政の崖」問題の再燃も迫っていますし、FRBが買い込んだ膨大な資産も毀損しますから、量的緩和がすんなり解除されるとは思えませんが、かくして株価は売られ、金価格も売られています。量的緩和という高下駄をはいて急騰した分が、剥がれ落ちている段階ということでしょう、今は。

ただし、株のことはさておき、金ついていえば、1600ドル割れでアジアの引き合いが旺盛となり、すでに現物の手配が困窮する状態にあるとのこと。旺盛な需要に供給が追いつかないということです。

価格が売られる一方で、現物は買われる、ですね。

先物市場の売買にはレバレッジがかかっているため、価格への短期的な影響には大きいものがありますが、しかし、太いトレンドは現物の動きが作るものです。

ということで来週から数回にわけて、世界金需給の2012年最新データを紹介します。

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経済アナリスト、そして金市場の第一人者の豊島逸夫氏にも推薦されている金のブログ「はじめての金読本」より。

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