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金価格ディリーレポート(2025年4月14日)米中貿易戦争激化による中国の需要急増で金は過去最高値をつけた後に若干下げる

金相場は、アジア市場で史上最高値となるトロイオンスあたり3245ドルを記録した後、小幅に値を戻していました。一方、中国の金相場は3営業日連続で過去最高値を更新し、米中貿易摩擦が激化する中、中国の取引量はコロナ危機以来の高水準、ロンドンの世界指標との価格差は10ヶ月ぶりの高さに達していたことが明らかとなっていました。
 
ブルームバーグによると、中国人民銀行は、貿易戦争が激化する中、北京が機関投資家や個人投資家からの強い逃避需要に対応するため、 一部の商業銀行に対して新たな金の輸入枠を割り当てたとのことです。
 
上海黄金交易所(SGE)の金価格は、月曜日に3営業日連続でSGE基準最高値となるグラムあたり762円(1オンスあたり3247ドル相当)をつけていました。これは、ロンドンに対して16ドルのプレミアムとなり、世界最大の消費市場である金地金の卸売り価格が先週、週平均で10ヶ月ぶりの高値となるトロイオンスあたり31ドルまで上昇した後のことでした。この水準は、過去のプレミアムの4倍近くとなり、中国への新規輸入のインセンティブとなっています。
 
ある貴金属トレーダーは、「中国は先週、関税の不確実性と人民元安に煽られ、連日金の入札を行い、 金を史上最高値に押し上げていた。」と述べていました。
 
上海黄金交易所の人民元建て金価格と取引量のチャート 出典元 ブリオンボールト
 
SGEにおける4月の取引量は、先月と比較して70%近く急増し、2020年8月のコロナ危機の最盛期以来の高水準となっていました。
 
上海先物取引所(SHFE)での金デリバティブの取引量も、今月は前月から55%急増していました。
 
日本貴金属マーケット協会の池水雄一代表理事は最新レポートの中で、「中国の個人投資家は貿易戦争に反応して金を買っており、SGEとSHFEでの取引量が急増している」と述べ、最近の金価格のパターンとして、株価の下落に伴い貴金属がニューヨークで売られ3000ドルを割り込んだものの、アジアの取引時間中に3000ドルを回復していたことを指摘していました。
 
金地金現物価格は、アジア取引中に史上最高値のトロイオンスあたり3245ドルをつけた後、月曜日のロンドン時間昼過ぎに0.4%下落し3223ドルとなっていました。金は先週、ロンドン午後のベンチマークオークションで、今年23番目の史上最高値となる3230ドルを記録し、週間では5.8%の上昇を記録し、地政学リスクが新記録を6日間更新した2024年3月初旬以来の5日間のパフォーマンスとなっていました。
 
ANZのシニア・コモディティ・ストラテジストであるダニエル・ハインズ氏は、「金は強い逃避先買いの中、記録的な高値を更新し続けている」と述べ、トランプ大統領が中国からのほとんどの輸入品に対する中国への145%の関税を除き、相互関税の90日間の一時停止を発表したにもかかわらず、リスクと不確実性は依然として高いと指摘していました。先週末にトランプ氏は、半導体とエレクトロニクスのサプライチェーンに対する課税の一部を一時停止していましたが、具体的な関税は追って発表されるとの見方を示していました。
 
ロイター通信によると、トランプ大統領の関税政策に対応するため、中国は先週、米国製品に対する関税を125%に引き上げ、北京の文民政府関係者を 「戦時態勢」に置いたとのことです。
 
月曜日昼過ぎに欧州のStoxx600指数は2%以上上昇し、S&P500とナスダック100の先物は上昇し、アップル株は市場前取引で6.4%も上昇していました。
 
ユーロ建て金相場は、今週欧州中央銀行が金利を引き下げると予想されているにもかかわらず、27カ国の単一通貨であるユーロがFX市場で米ドルに対して強含み、0.7%下落し、トロイオンスあたり2828ユーロとなっていました。一方、ポンド建て英国金価格は1.4%下落してトロイオンスあたり2439ポンドをつけていました。
 
ドル指数(主要通貨に対する米国通貨の価値を示す指標)は月曜日、5日続落し、3年ぶりの低水準となっていました。一方、10年物米国債利回りは、政府機関や多くの金融機関、商業機関の借入コストの基準金利であり、先週半ポイント上昇し、過去20年以上で最大の週間急上昇を記録した後、下落に転じていました。債券価格が下落すると、債券利回りは上昇することとなります。
 
カナダのグローバル資産運用会社スプロットのシニア・マネージング・パートナーであるライアン・マッキンタイア氏は、「金の新高値は、 米国資産への投資意欲の変化を示している。」と述べていました。
 
「米国に対する信頼が明らかに揺らいでいるため、人々は分散投資しようとしている。」
 
ゴールドマン・サックスは、全体の価格予測を400ドル引き上げ、年末までにトロイオンスあたり3700ドルにするとし、UBSとバンク・オブ・アメリカは、金価格が2025年に3500ドルに達すると予測していました。
 
銀の価格は、主に工業用金属であり、年間需要の60%近くが工業用であることから、ロンドン午前中の1.5%の下落から回復し、昼過ぎにトロイオンスあたり31.30ドルを推移していました。

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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