金価格ディリーレポート(2025年2月17日)ロンドン金現物価格はコメックスとの価格差が縮小する中で反発し、中国の金価格はプレミアムに転換 2025年2月17日 月曜日 15:20 金地金は、ドナルド・トランプ米大統領の輸入関税の脅威にもかかわらず、ロンドン金地金現物価格とニューヨーク・コメックス先物の価格差が縮小し、2025年の記録的な価格にもかかわらず、世界最大の消費市場である中国の金地金の需要が強まったことから、金曜の急落から上昇し、一時2900ドル台を回復していました。 米ドル建て金地金は、今年に入ってから11.9%急騰し、S&P500種の4.0%、ドルインデックスのマイナス1.5%、10年物米国債利回りのマイナス1.2%と他の主要な資産クラスを上回っています。 今朝のロンドンの金地金市場のスポット価格は、木曜日午後3時のロンドンのベンチマークオークションで、金がトロイオンスあたり2921ドルと史上最高値を記録した後、金曜日の1.8%の急落の半分を取り戻しました。 米国の株式と債券市場が大統領の日(ワシントン大統領の誕生日)で休場となる中、ニューヨークの金のプレミアムは、CMEデリバティブ取引所の最も活発なコメックス金先物相場とロンドンの現物相場との差を意味し、それは、トロイオンスあたり12ドルと、フィナンシャルタイムズ紙が金の関税を懸念した裁定取引について報道する前以来の下げ幅となり、さらに多くの金が大西洋を越えて移送されることとなりました。 ニューヨークとロンドンの金地金は、金曜日のコメックス先物価格とロンドンのスポット地金価格の下落を前に、再びトロイオンスあたり40ドル以上に拡大していました。 このプレミアムは、ドナルド・トランプがホワイトハウスに戻る前に見られた典型的な5ドル以下の水準を大幅に上回り、今年これまで平均27ドルとなっています。 先週木曜日までの一週間で、コメックス承認の金倉庫在庫は99.4トン増加し、2025年新年からの増加量は471トンとなり、これは世界の金エンドユーザー需要の10%近く相当となっていました。 コメックスのトレーダーのポジションに関する最新のデータによると、ヘッジファンドやその他のレバレッジを効かせた投機筋は、先週火曜日までの7日間で3週連続で米国金先物・オプションの弱気ポジションを増やし、過去10ヶ月で最も高い水準となった一方で、7週連続で強気ポジションを増やし、過去2ヶ月で最も高い水準となっていました。 この結果、マネージド・マネー・トレーダーのネット・ロング・ポジションは6.4%減少し、1ヵ月ぶりの低水準となっっていましたが、5年平均を82.4%上回る水準は維持していました。 カナダの証券会社TDSのコモディティ・ストラテジスト、ダニエル・ガリ氏は、「コモディティ・トレーディング・アドバイザー(別名CTA)は、金に対して事実上 最大限のロングを維持しているが、価格がどのような合理的なシナリオであっても、清算することはないだろう。」と述べていました。 日本貴金属マーケット市場協会の池水雄一代表理事は、「この(ニューヨークとロンドンの価格差)状況は、金のディスロケーションと呼ばれ、最終的には市場そのものを上昇させる要因となっている。」と述べ、金地金がロンドンやその他の地域から、決済期間が日本の金デリバティブ契約よりも短く、リターンが早い米国に流出していると説明していました。 「これが年初からの金の上昇の主な理由であり、重要なことは、簡単には反転しないということだ...金にはまだ上昇の余地がある」と続けていました。 トランプ大統領は先週、複数の貿易相手国に対する相互関税の計画を策定するよう指示し、その後、早ければ4月2日にも自動車に対する輸入関税を課す可能性があると金曜日に発表していました。 この措置は、3月12日に発動される米国の鉄鋼とアルミニウムの輸入に対する25%の関税に追加されることになります。 「貿易が縮小すると、金は急騰します」と、地金銀行HSBCのアナリスト、ジェームス・スティールは、コロナ危機や世界金融危機の時の過去の例を挙げて説明していました。 「関税が増えれば増えるほど、世界貿易は混乱し、金にとっては有利になる。」と述べていました。 ニューヨークと同様に、上海黄金交易所の金価格は月曜日もロンドン価格よりプレミアムを示し続け、トロイあたり7ドルまで上昇していました。 これは、先週平均の12ドルのディスカウントを覆し、上海のプレミアムは最近の歴史的な平均値に戻り、世界最大の金消費市場における需要の高まりを示していました。 上海黄金交易所と上海先物取引所での取引量は先週急増し、2024年4月以来の高水準となっました。これは、世界第二規模の経済を持つ中国における投資家の経済への懸念からも、金価格が急騰していたにもかかわらず、 中国の金投資需要が急増していた時期以来となります。 ドイツの精錬グループであるヘレウスは、「これは、中国の投資家や旧正月の休暇から戻ってきた市場参加者が、米ドルベースと人民元ベースの両方で過去最高値を更新しても、まだ落胆していないことを示唆している 」と述べていました。 英国首相を含む欧州首脳が、米国がロシアのプーチン大統領と交渉することのみで、戦争終結に合意するというドナルド・トランプ大統領の動きを受け、ウクライナについて協議する緊急首脳会議をパリで開催する準備を進める中で、ユーロ建て金相場は月曜日に0.7%上昇して2767ユーロとなり、ポンド建て英国金相場は0.5%上昇して2302ポンドとなっっていました。 銀価格は、月曜日トロイオンスあたり32.48ドルと1.1%上昇していました。 この結果、金曜の午後に3.8%下落した銀価格は、今年に入ってから12.4%まで上昇していました。