金市場ニュース

金価格ディリーレポート(2025年1月27日)米AI産業への懸念から世界的な株安を受け、金相場は下げ幅を拡大

 
米国テクノロジー株は、米国の優位性が中国のより安価な人工知能(AI)モデルによって脅かされることへの懸念から下落し,世界的な株安となるの中、金価格は月曜日に下落した。
 
中国のAIスタートアップのDeepSeek社は月曜日新しいモデルを発表し、この最新モデルのパフォーマンスは第3者機関のテストでOpen AIを超え、またこのトレーニングと開発に必要なコストは、Open AIやメタ・プラットフォームズ社の最高の製品に必要なコストの数分の一に過ぎないとレポートされています。
 
AIのための先進的なチップ、システム、ソフトウェアを提供するNvidia Corp.の株価は、月曜日の米国取引開始時に8.3%下落し、チップ製造装置の大手メーカーであるASML Holding NVは9%下落していました。欧州株と米国先物も大きく下落し、その下げ幅を若干取り戻すまでに、欧州のストックス600は0.7%、ナスダック100先物は4.4%、S&P500先物は2.5%下落していました。
 
スポット金は、金曜日に10月末の史上最高値2790ドルを5ドル下回るまで上昇した後、月曜日に1.0%下落し2744ドルをつけていました。前週は ドナルド・トランプ大統領の新政策(特に関税)に対する懸念が追い風となり、週間で2.3%の上昇を記録し、11月以来の週間最大の上げ幅をつけていました。
 
「ボラティリティを誘発するトランプ政権の関税関連のヘッドラインの流れが続く一方で、青天の霹靂のような別のストーリーが、重要なAI分野でグローバル市場全体に噴出し、リスク・センチメントを襲った」と、デリバティブ・プラットフォームであるサクソバンクの商品ストラテジスト、オーレ・ハンセンは最新のメモで述べていました。
 
Nvidiaとドル建て金価格のチャート 出典元 グーグルファイナンス
 
エヌビディアの株価は昨年、AIデータセンターとクラウド・コンピューティング・インフラを拡大する大手ハイテク企業の顧客からの急増する需要に牽引され、他のテクノロジー銘柄の上昇を牽引し、170%以上急騰していました。ナスダック総合株価指数は2024年に28.6%上昇し、S&P500種株価指数は23.3%上昇していました。
 
金価格は昨年26.6%上昇し、過去14年間で最強のパフォーマンスを記録していました。「金は、地政学的不確実性の高まりと市場のボラティリティに対する効果的なヘッジとして機能した。」と ワールド・ゴールド・カウンシルはこの状況を解説していました。
 
トレーダーと投資家は、水曜と木曜の米連邦準備制度理事会(FRB)と欧州中央銀行(ECB)の政策決定、金曜のFRBがインフレデータとして重要視する指標の発表を含む、重要な週の市場イベントの準備をしています。
 
CMEデリバティブ取引所の FedWatchツールによると、今週の米連邦準備制度理事会(FRB)の政策決定会合で「変更なし」となる確率は、1ヵ月前の89.3%から99.5%に上昇した。これは、先週スイスのダボスで開催された世界経済フォーラムで、トランプ大統領が即時利下げを求めたにもかかわらずのことでした。
 
2022年に40年ぶりの高水準に達したインフレ率は、FRBが中止するインフレ指標に基づくと、11月には2.8%まで低下していました。最新の12月の個人消費支出(PCE)価格指数のコア・デフレーターは前年同月比2.8%にとどまると予想されており、FRBが目標とする2%を依然大きく上回っています。
 
10年物米国債利回りは、政府機関や多くの金融機関、商業機関の借り入れの基準金利だが、月曜日には1ヵ月ぶりの低水準となる4.5%まで低下し、ドル指数(主要通貨に対する米国通貨の価値を示す指標)も0.3%下落し、先週トランプ大統領が対中関税に対する姿勢を軟化させたように見えたため、1ヵ月ぶりの低水準からさらに下げていました。
 
トランプ政権は、当初南米コロンビアが強制送還された移民を乗せた軍用機を受け入れることを拒否したことで、コロンビアへの25%の関税と経済制裁という警告を行い、コロンビアは日曜日に米国の要求を受け入れることで貿易戦争を回避していました。
 
トランプ大統領は先週大統領就任直後に、新たな関税を課すことを宣言し、2025年2月1日を期限に、カナダとメキシコに両国が米国への大量の移民流入や合成麻薬「ファンタニル」を放置しているために25%、中国もフェンタニルをメキシコとカナダを介して輸出されていることから10%、EUは貿易不均衡からも何らかの関税を課すことを計画していると発表していました。
 
上海金取引所の金価格は、金曜日につけた史上最高値のgあたり646円から月曜日に0.4%下落し、水曜日からの中国の旧正月の休暇を前に、ロンドン価格に対して1オンスあたり6ドルのプレミアムがついていました。世界最大の金消費国である中国の卸売地金は、先週の週平均は11.8ドルのプレミアムから0.8ドルのディスカウントに反転していました。
 
ユーロ建ての金価格は、金曜日のロンドン基準値の史上最高値の2646ユーロから月曜日に1.3%下落し、ポンド建ての英国金価格は、過去最高値の2232ポンドから1.5%下落していました。
 
金を裏付けとするETF投信の中で、最大銘柄のGLDは先週価格が史上最高値に近づく中、過去30ヶ月で最大の1週間の資金流出の2.7%減を記録し、この第2規模のiShareのIAUも0.6%下落していました。
 
一方、銀ETFの最大銘柄であるiShareのSLVは、先週、この1ヶ月で最大の週間下落率の1.4%を記録していました。
 
主に工業用金属であり、年間需要の60%近くを工業用用途である銀の価格は、月曜日に1.6%下落し、トロイオンスあたり30.34ドルをつけていました。
 
 

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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