金価格ディリーレポート(2024年6月10日)ドル建て金価格は2%急落後2300ドルまで反発し、ユーロ相場は「極右」勝利で急上昇 2024年6月10日 月曜日 16:50 ドル建て金相場は月曜日、先週金曜日に1年間で最大の1日の下げを記録した後上昇し、市場の専門家は、中国の中央銀行が5月に金を購入しなかったというニュースを受け、2%の急落は「行き過ぎ」であり、「テクニカルな売り越し」であったと述べていました。 一方、ユーロ金相場は、週末に行われた2024年の欧州議会選挙で、移民削減やグリーンエネルギー規制の撤回を訴える「極右」政党が大きく躍進したことによる懸念からも上昇し、6月初旬の水準で、前週終値から1.0%高のトロイオンスあたり2143ユーロまで戻していました。 この間、欧州連合(EU)加盟27カ国のうち20カ国の公式通貨であるユーロは対ドルで0.6%下落し、1カ月以上ぶりの安値水準となっていました。 EU議会拠点のブリュッセルとストラスブールでは「中道」政党が全体の主導権を維持する一方、ドイツでは極右政党であるAfD(ドイツのための選択肢)が2位となり、イタリアの同胞党はジョルジア・メローニ首相の下で支配を固め、フランスではマリーヌ・ルペンの国民集会が1/3の票を獲得し、中道派のエマニュエル・マクロン大統領が自国での解散総選挙を発表していました。 この結果を受けて欧州株式は大きく下落し、銀行のBNPパリバとソシエテ・ジェネラルは8%以上下落していました。また、格付け会社スタンダード・アンド・プアーズが 6月初めにすでに格下げしたフランスの10年国債の利回りは年率3.2%と今年最高水準を記録していました。 ドル建て金地金スポット価格は、金曜日に1ヶ月ぶりの安値をつけた後、ロンドン時間昼過ぎに、0.5%上昇し、2300ドルの大台を回復していました。 金曜日の下げは、予想より良好な米国の雇用統計に続き、中国人民銀行が5月に公的金準備として1年半ぶりに金地金を購入しなかったことが明らかとなり、2023年5月中旬以降で最大の下げを記録していました。 ブローカーであるStoneXグループの地金専門家であるアナリストのローナ・オコネル氏は、「(中国人民銀行の)準備水準の据え置きをめぐる見出しは、 行き過ぎたものであった。」と、中国の中央銀行による金の購入と保有は、過去にしばしば公表されていなかったことから、市場衝撃的な反応は「時期尚早の推測」に基づくものだとも追記していました。 日本貴金属マーケット協会の池水雄一代表理事は、金曜日の下げのチャートを分析し、「アルゴリズムが極端に動いて売りがまた売りを呼ぶという動きになったのでしょう。」と述べていました。 そして、「やり過ぎの感がある。」と続けていました。 先週の値下がりに先立ち、コメックス金先物・オプションのヘッジファンドやレバレッジを効かせた投機筋は、金に対するネットの強気ポジションを0.9%増加し、過去4年間で最も高い水準としていました。 その一方で、米国の規制当局である商品先物取引委員会(CFTC)が発表したデータによると、投機筋は銀に対するネットの強気ポジションを2年ぶりの高水準から9%減らしていました。 また、「資金運用業者」のトレーダーは、プラチナのネット・ロングポジションを29%減らし、パラジウム相場に対しては過去最高のネット・ショートポジションを構築していました。 最終需要の5分の4超がガソリンエンジンから排出される炭素を削減するための自動車触媒であるパラジウムは、本日ロンドン時間昼過ぎに0.8%上昇してトロイオンスあたり922ドルとなり、先週の下落幅の4分の1ほどを回復していました。 プラチナは、その需要の3分の2がディーゼルエンジン用の自動車触媒を中心とする工業用途に由来していますが、先週6.4%急落した後、0.3%上昇してトロイオンスあたり975ドルとなっていました。 また、工業用需要の6割近くを占める 銀価格は、先週の3.2%の下落から反発して2.1%高のトロイオンスあたり29.77ドルへと上昇していました。 来月2024年にオリンピックが開催されるパリの社会党主要党首であるアンヌ・イダルゴ氏は、EU議会の結果を受けてマクロン大統領が招集した6月30日と7月7日の決選投票について「多くの人々のように、私は大統領が オリンピック開催直前に議会を解散することを決めたことに対して驚いている。」と語っていました。 「本当に非常に不安なことだ。」とも続けていました。 英国はすでに7月4日に総選挙が予定されており、14年間の保守党支配の後、世論調査ではキーア・スターマー労働党が常に優勢となっています。 英国ポンド建て金相場は、金曜日に60ポンド急落し2ヶ月ぶりの安値となった後、本日0.6%高の1813ポンドへと上昇していました。 米連邦準備制度理事会(FRB)の6月政策会合が水曜日に終了しますが、同日に最新の米消費者物価指数が発表されます。 FRB政策担当者は、3月の会合で借入コストを過去20年以上で最も高い水準に維持しながらも、 2024年末までに3回の利下げを行うというコンセンサス予測を繰り返していましたが、今回のFOMCは、金利に変更はないと予想されていますが、「ドット・プロット」予測が更新され、市場は注目することとなります。 CMEのFEDWatchツールによると、9月の利下げの確率は、一週間前の60%から本日は50%に下げています。