金価格ディリーレポート(2024年2月12日)S&P500がドットコムバブルの様相を見せる中、米消費者物価指数が強い場合、金価格は2000ドルを試すリスクも 2024年2月12日 月曜日 17:51 金相場は、S&P500種が前週の史上最高値の水準を維持して始まり、今週中国市場が春節の休暇で休場である中、今週の重要な米国のインフレと小売売上高のデータを前に、ロンドン時間午前中の狭いレンジの取引から一週間ぶりの低値へ下げていました。 火曜日に発表される1月の米消費者物価指数(CPI)は、変動の激しい食品とエネルギー価格を除いたコア・インフレ率が年率3.9%から3.7%に鈍化すると予想されています。 スイスの地金精錬・金融グループMKSパンプのメタル戦略責任者ニッキー・シールズ氏は、「CPIが高水準となれば、止まりを知らない株高へ圧力がかかるだろう」と述べ、米連邦準備制度理事会(FRB)が今春、ドル金利を現在の20年来の高水準である5.50%からこの春に引き下げを開始するという、すでに後退している期待への影響を指摘していました。 もしそうでない場合、中国の地金購入が今週の連休で行われない中で、強いインフレデータである場合は「金を2000ドルを試すところまで押し上げ、これまでより脆弱さを見せていた白金により新たな打撃を与える可能性がある」とシールズ氏は述べていました。 今朝のドル建て金相場は、金曜日のLBMAのPM価格の2023.50ドルからトロイオンスあたり3ドル弱の狭いレンジの値動きの後の米国の取引開始時には2018ドルまで一時下落していました。 銀と白金族と呼ばれるプラチナとパラジウムも反落しましたが、それぞれ前週の下げ幅をほぼ半分ほど削っていた後のことでした。また、工業用需要が年間需要の60%近くを占める 銀価格はロンドン昼過ぎに1.5%まで上昇して、一時6営業ぶりにトロイオンスあたり23ドルを上回っていました。 金利トレーダーが先月、FRBが3月に 最初の利下げを行う確率を5分の4から5分の1に引き下げたにもかかわらず、S&P500指数は金曜の終値で史上初めて5,000の大台を上回り、週間で1.4%、2024年に入ってから5.4%上昇していました。 そして、S&Pは2023年10月の安値から20%以上上昇し、2020年3月のコロナ危機下の暴落時以来125%上昇しています。 それに対し、金価格はこの3年間の間に33%上昇しています。 米金融大手バンク・オブ・アメリカのストラテジスト、マイケル・ハートネット氏は、「米株式市場は ドットコム・バブルとの類似性をますます強めている」と述べ、ハイテク株の強気相場を1990年代後半のインターネット関連株のバブルと比較している。 1995年から2000年3月までのドットコムバブルの間、ナスダック総合指数は8倍に上昇しましたが、2002年10月にはピークから78%下落していました。これとは対照的に、ドル建ての金はこの19ヶ月の間に11%上昇していました。 現在、いわゆる『マグニフィセント・セブン』と呼ばれるアルファベット、アマゾン、アップル、メタ、マイクロソフト、エヌビディア、テスラのハイテク株は、2023年の米国株式市場の上昇を牽引した後、1月のS&P500のリターンの45%を占めていました、とハートネット氏は述べています。 米国の金融グループJ.P.モルガンの分析によれば、「ごく限られた銘柄が上昇の大部分を占めたように、 上位10銘柄の下落は株式市場を引き下げる可能性がある」と警告しています。 白金族では、プラチナ価格が本日0.9%上昇し、トロイオンスあたり888ドルとなり、前週記録した1990年3月にロンドンの基準価格が設定されて以来のプラチナの金価格に対する 記録的なディスカウントを縮小していました。 一方、パラジウム相場は、PGMの需要減退と供給減退に対する懸念の高まりから、先週10%近くまで急落してプラチナ価格を6年ぶりに下回った後に、本日2.8%上昇して900ドルを突破していました。 ユーロ建てと英ポンド建ての金価格は、それぞれトロイオンスあたり1887ユーロと1602ポンドと、金曜の終値近辺で安定して推移していました。 今週は、米国の消費者物価指数、小売売上高、卸売物価指数、日欧の鉱工業生産のほか、月曜日にFOMCで投票権を持つミシェル・ボーマン氏とトーマス・バーキン氏、さらに投票権を持たないニール・カシュカリ氏など、米FRB高官の講演が予定されています。