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金価格ディリーレポート(2023年9月18日)FOMCと原油価格高騰によるインフレ高懸念でドル建て金価格は2週ぶりの高値から下げる

米国、英国、日本の中央銀行の一連の政策決定を前に、米国の長期金利が16年ぶりの高水準に上昇し、原油が2023年の最高値を更新する中で、ロンドンの金価格は2週間ぶりの高値のトロイオンスあたり1930ドルから下落していました。
 
中国の中央銀行は、フィナンシャルタイムズ紙が「 一時的な金地金輸入規制」と呼ぶ規制を解除し、ブリオンボールトや他のコメンテーターが、 中国における金相場が史上最高値を更新し続け、世界の金価格が上昇した背景の分析を裏付けることとなりました。
 
ドル建て金価格は、月曜日昼過ぎにトロイオンスあたり1923ドルと午前中の上げ幅を失って先週終値から下げていました。これは前週金曜日に、中国の輸入規制の緩和が行われ、金利市場においては連邦準備制度理事会(FRB)が今週水曜日の会合で利上げを一時停止するとの観測が広がる中で、金相場が1%上昇した後のことでした。
 
しかし、この間米国債の価格は月曜日に値を戻して10年債利回りは4.35%まで上昇し、世界金融危機が始まった2007年8月以来の高水準をつけて、原油価格は今年一番の高値をつけていました。
 
ドル建て金価格と原油価格 出典元 ブリオンボールト
 
原油産出国のロシアとサウジアラビアが継続的な減産を確認し、輸入データが中国のエネルギー需要の増加を示したことから、WTI原油価格は6月の安値からすでに約30%急騰した後に、月曜日に0.4%を超えてバレルあたり90ドルを超えて上昇していました。
 
欧州の原油価格の指標であるブレント原油も10ヶ月ぶりの高値となる1バレルあたり94ドルをつけ、先週の4%の上昇幅を拡大していました。
 
国際エネルギー機関(IEA)は先週、OPECプラスの主要二か国が続けている供給削減によって 「大幅な供給不足」が生じると警告していました。
 
一方、国際通貨基金(IMF)の研究論文は金曜日に、過去2年間に40年ぶりの高水準まで急上昇したインフレが下げ始めたことを 「早合点」しないよう警告していました。ここでは、1970年以来の56を超える国々の100の高インフレの6割のみが5年以内にインフレを下げることができると分析していました。
 
米国の消費者物価指数は8月に前月比0.6%上昇し、2022年6月以来の高さを記録して今井sた。これは、ガソリン価格がこの間10.6%上昇し、消費者物価指数の上昇率の半分以上を占めていました。
 
しかし、先週金曜日に発表された ミシガン大学消費者態度のデータでは、消費者は今後1年間のインフレ率は3.1%に鈍化すると予想しており、前月の3.5%から低下し、「2021年3月以来の低水準」となったと発表されていました。
 
さらに長期においては、今後5年から10年のインフレ率は年率2.7%まで低下し、"過去26ヶ月で2度目となる2.9~3.1%の狭いレンジを下回る"とも予想されていました。
 
あるマクロ経済学者は「 正常化への大きな一歩だ」と述べていました。
 
デリバティブ取引所CMEのFedwatchツールによると、トレーダーは、FRBが水曜日に米ドル金利の目標を5.25-5.50%に据え置く可能性は99%と見ていますが、パウエルFRB議長は「 さらなる利上げへの扉を開いたままにしておくだろう」とコメルツ銀行はレポートでは述べていました。
 
「これは短期的には金価格を抑制するだろう」とし、しかし「景気後退に向かう経済環境で利回りが低下するのは非常に合理的だ。」と続けていました。 
 
米大手資産運用会社バンガードの金利担当グローバル・ヘッドであるロジャー・ハラム氏は、「エネルギー価格の上昇が最近のディスインフレの流れを止めるようなことがあれば、米連邦準備理事会にとっては利下げをするのが難しくなるだろう。」とし、「 債券購入者にとって状況は複雑になる」と語っていました。
 
ドルが為替市場で弱含んでいるために、ロンドン昼過ぎにユーロ建てとポンド建て金価格はそれぞれ0.1%高のトロイオンスあたり1806ユーロと1556ポンド上昇していました。これは、先週欧州中央銀行がドイツの弱い経済指標に反してユーロ金利を再引き上げた後、イングランド銀行が木曜日に英国金利を再引き上げることにトレーダーが見ていることが背景となっています。
 
ブルームバーグがトレーダーとアナリストを対象に行った調査によると、日本銀行は、植田和男日銀総裁が前々週末に 円安抑制のために「タカ派的」な発言をしたにもかかわらず、超低金利政策とマイナス金利を金曜日に据え置くと予想されています。
 
日本円建ての金相場は、金曜日に為替市場で日本円が1ドルあたり148円に一時迫り、2022年11月以来の円安水準まで円安が進む中、史上最高値となるgあたり9172円をつけた後、月曜日に9147円で安定していました。
 
一方、貴金属の世界最大の消費国であり、中央銀行の最大の買い手でもある中国の人民元価格は、中央銀行が新たな輸入許可の発行を開始し、通貨が2010年にオフショア人民元市場が創設されて以来、対米ドルで最安値に近い水準から回復したことから、gあたり468元と先週の史上最高値から0.6%下落していました。
 
複数の情報筋が、人民銀行が新たな金地金輸入許可証を発行し始めたことを伝えていることからも、ブリオンボールトの計算によると、金地金の国際指標価格であるロンドン相場に対する中国のプレミアムは、月曜日上海黄金交易所でトロイオンスあたり69ドルとなり、木曜日午後に記録した 史上最高値の121ドルからほぼ半値となっていました。
 
このプレミアムは、新規輸入のために地金銀行に提供されるインセンティブを表すもので、中国の国内需要が厳格なロックダウン規制により急落していた2020年を除けば、過去5年間の平均は約9ドルとなっています。
 

ホワイトハウス佐藤敦子は、オンライン金地金取引・所有サービスを一般投資家へ提供する、世界でも有数の英国企業ブリオンボールトの日本市場の責任者として、セールス、マーケティング及び顧客サポート全般を行うと共に、市場分析ページの記事執筆および編集を担当。 現職以前には、英国大手金融ソフトウェア会社の日本支社で、マーケティングマネージャーとして、金融派生商品取引のためのフロント及びバックオフィスソフトウェアのセールス及びマーケティングを統括。

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