金価格ディリーレポート(2023年11月6日)金価格は原油が地政学リスクの上げ幅を失う中で「疲れ」を見せる
ガザ地区におけるイスラエルとハマスの紛争が悪化しているにもかかわらず、米FRBの利上げ終了観測が広がる中でリスクオン基調となり世界の株式市場が上昇したため、金価格は月曜日に下落していました。
欧州株式市場は、先週3月以来の大幅な上昇を記録した後に堅調に推移しており、米国株式先物は、金曜日に発表された軟調な米雇用統計が、FRBが22年来の高さの政策金利へと急激に引き上げた政策を終了する可能性があるとの観測を広げることとなったことから、前週米株価指数が全て年初来の週間の最高の上げ幅を更新した後に、本日小幅上昇しています。
「金相場は、最近の200ドルの急騰によるトロイオンスあたり2000ドルを超える上昇の後、FOMCへの反応は鈍かった。」とドイツの精錬会社のへレウスのためにSFAオックスフォード社のアナリストが作成したマーケットノートの中で述べていました。
「(これは)中東の紛争に対する安全資産需要に支えられてきた金市場に疲れが出てきていることを示唆している。」と続けていました。
ドル建て金相場は、前週中東紛争が始まって以来初めて週間の下落を記録し、本日0.4%安のトロイオンスあたり1985ドルへと下げていました。
一方、原油価格は本日上昇し、ブレント原油とウェスト・テキサス・インターミディエート原油先物は、主要供給国であるサウジアラビアとロシアが年内まで継続的な減産を維持すると発表したことで、金曜日の2%の下落の半分を取り戻していました。
週末にはオーストラリアの銀行ANZのシニア・コモディティ・ストラテジストであるダニエル・ハイネス氏は、「地政学的背景に関連した(原油の)リスクプレミアムは、2週間の不安定な価格の後、完全に消えてしまった。」と、前週金曜日にレバノンのイスラム教シーア派武装組織ヒズボラの指導者であるハッサン・ナスララ師がイスラエルに対する全面戦争の発表をしなかったことを受けて、価格急落していたことに注目していました。
スイスの地金精錬・金融グループMKSパンプの金属戦略責任者ニッキー・シールズ氏は、「ゴールドと主要なマクロ投資資産との日々の相関関係を見ると、ゴールドと(地政学的な姉妹である)原油との相関関係は強まっている一方、米国の実質金利および米ドルとの相関関係は低下している」と述べていました。
物価連動債である10年物米国TIPS債が示唆する実質金利は本日、前セッションで記録した6週間ぶりの低水準となる2.2%から若干上昇していました。
一方、主要通貨に対する米国の通貨価値の指標であるドル指数は、月曜日にさらに下落し、9月中旬以来の低水準となっていました。
近年金と物価連動債(TIPS)の利回りは、一方が上昇すると他方が下げるというより負の相関関係を強めているものの、先月この相関関係は正に転換していました。金利を生まない金は通常高金利はネガティブ要因となります。
また、中東紛争が始まって以来、金と米ドル指数との間の負の相関関係も弱まり、11月には22日間ベースの相関関係は一時的に正に転じていました。ドル建てコモディティである金は、ドル高は平常時にはやはりネガティブ要因となる傾向があります。
金利トレーダーは現在、米中央銀行が12月のFRB理事会で主要政策金利を据え置く確率を90%としており、利下げに関しては早ければ来年6月に起きるだろうと80%が予想し、これは金曜日からほとんど変化していないことが、CMEのFEDWatchツールで確認されています。
ユーロ建てと英ポンド建てで取引される金は本日ロンドン時間昼過ぎに0.5%下落して2週間ぶりの安値で、トロイオンスあたり1848ユーロと1600ポンドを割り込み、共に1ヶ月ぶりの週間下落を記録していました。
また、銀相場は0.3%安の23.15ドルとなっていました。
アメリカ合衆国国務長官アントニー・ブリンケンは金曜日にイスラエルを訪れ、土曜日にヨルダン、日曜日にイラクとトルコを訪れ、ガザのハマスとイスラエルの紛争について議論する中で、中東を管轄するアメリカ中央軍(CENTCOM)は、アメリカ海軍の核ミサイル潜水艦がその地域に到着したと発表し、すでに2つの航空母艦打撃群がそこに存在していることを追加していました。